遺伝性乳がん卵巣がん症候群の遺伝学的検査および診療について

遺伝性乳がん卵巣がん症候群の遺伝学的検査および診療について

 20204月から遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)の検査および診療の一部が保険適用になりました。

「遺伝性乳がん卵巣がん症候群(hereditary breast and ovarian cancer syndrome :HBOC)」とは

  乳がんや卵巣がんの多くは、遺伝する病気ではありませんが、遺伝的な要因がはっきりしていて親から子に遺伝することのある「遺伝性のがん」があります。そのような遺伝性のがんは、乳がんや卵巣がん全体のうち約10%を占めると言われています。
 遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)とは、BRCA1、BRCA2という遺伝子の病的な変化によって起こる乳がんや卵巣がんをはじめとしたがんにかかりやすい体質の症候群のことです。
 この2つの遺伝子は男女関係なく誰でも持っている遺伝子ですが、生まれつきこの遺伝子のどちらかに乳がんや卵巣がんの発症に関与する変化(病的変異)があると、乳がんや卵巣がん(男性の場合は前立腺がん)などになりやすいことが分かっています。
 HBOCは遺伝性のがんの中でも頻度が高く、また研究が進んでいる病気です。遺伝学的検査でBRCA1遺伝子あるいはBRCA2遺伝子に変化が見つかった場合に、HBOCと診断されます。

保険適用となるもの

● 遺伝性乳がん卵巣がん症候群を診断するための遺伝学的検査(BRCA1/2遺伝学的検査)
~保険で遺伝学的検査を受けることができるのは、以下のいずれかに該当する方です~
  乳がんを発症しており、以下のいずれかに当てはまる方
  ・45歳以下で乳がんを発症された方
  ・60歳以下でトリプルネガティブ乳がんを発症された方
    ・原発が2個以上の乳がんを発症(転移ではなく、新たに2個以上の乳がんを発症)
    ・第3度近親者内に乳がん、または卵巣がんを発症された方が1名以上いる方
    *第1度近親者:親、子ども、兄弟、姉妹 
       第2度近親者:祖父母、孫、おじ、おば、おい、めい 
       第3度近親者:祖祖父母、ひ孫、いとこ など
 卵巣がん、卵管がん、および腹膜がんを発症された方
 男性で乳がんを発症された方
 がんを発症され、PARP阻害薬に対するコンパニオン診断の適格基準を満たした方
 腫瘍組織プロファイリング検査でHBOCの体質が疑われる方

すでに乳がん、卵巣・卵管がん、および腹膜がんを発症されたことがあり(または発症されており)、BRCA1/2遺伝学的検査の結果からHBOCと診断された方は、以下が保険適用になります。
● 未発症部位を含む定期検査
● 乳房再建術
● リスク低減乳房切除術(準備中)
● リスク低減卵管卵巣摘出術


以下については保険適用とはなりません。
● 上記の条件を満たさない方が遺伝学的検査を希望される場合
● ご家族がHBOCと診断された方で、がんを発症していないが遺伝学的検査を希望される場合
● がんを発症されていない方のリスク低減手術

遺伝性乳がん卵巣がん症候群に係るBRCA1/2遺伝子の遺伝学的検査を受けられる、または受けられた方へ、研究協力をお願いしています

  当院では、遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)の診断等のためにBRCA1/2の遺伝学的検査を受けられる方、または受けられた方にご協力いただき、「BRCA遺伝学的検査に関するデータベースの作成」の研究を行っています。

詳しくはこちらをご覧ください

HBOC診療に関するお問い合わせ先

札幌医科大学附属病院 遺伝子診療科
お問い合わせ時間:平日9時から17時
電話番号:011-688-9690(遺伝子診療科直通ダイヤル)
※つながらない場合は011-611-2111(病院代表)までおかけください。