はじめに
「理事長・学長室から2024」No.34をお届けします。
1.本学が推進するポータブルカルテの現状と今後
札幌医科大学は、全国初の試みとして、富士通(株)と協同して開発した健康管理アプリ「ポータブルカルテ」を2023年9月より実臨床において運用してきました(図2)。運用開始から1年4月が経過し、これまでの経過・進捗状況、そして今後の展望について報告します。資料作成にあたっては、附属総合情報センター准教授の廣田健一先生(病院教授)にご尽力いただきました。
昨年12月末現在での「ポータブルカルテ」登録件数は126件に及びます。当初はiPhone版のみでしたが、2024年9月よりAndroid版がリリースされてからの登録は103件となります(図3)。
登録者の男女比は、男性59%、女性41%です。年齢別には、男女ともに60代の占める比率が高くなっています(図4)。
診療科では、30診療科中、20診療科の患者でアプリの登録がありました。上位3診療科は全て内科系の診療科であり、全体の6割を占めています(図5)。4位の泌尿器科は外来場所が1階登録ブースに近いため、通行の際に立ち寄る患者が多かったものと推察されます。今後は、B1F、2Fの外来に案内を掲示するなどのアピールが必要だと考えられます。
登録者を居住地別に見ると、札幌在住の患者さんが全体の81%を占め、札幌以外を含めた札幌近郊全体で88%を占めていました(図6)。
疾患別には、新生物が全体の24%と最も多く、次いで呼吸器系、循環器系、内分泌・栄養および代謝系、消化器系の疾患が多くなっています(図7)。
これまでポータブルカルテを利用した患者さんからは、「診察予約がスマホで確認できるようになって便利だ」「医師や薬剤師に薬の情報を伝えるときに、スマホで確認できるのが良い」「保険の書類に記載する際に、病名などが確認できる」などといった概ね良好な反応をいただいています。
今後の課題としては、まず内科以外の診療科の患者さんや、札幌圏以外の全道の幅広い地域の患者さんにも登録を拡大することがあげられます。また、本システムの主要な目的の一つである、他の公的・私的医療機関との情報の共有・連携の構築を実現することも目指していきます。さらに新たな取り組みとして、EHRおよびPHRデータを活用したアプリ(健康寿命延伸アプリ〔仮称〕)の開発も視野に入れています。
本学が取り組む医療DXの中核をなすものとして、ポータブルカルテを今後さらに充実・拡充していきたいと考えています。
おわりに
北海道立女子医専が創設された1945年は、第2次世界大戦が終結した年です。したがって、本学は戦後の日本の復興と発展とともに歩んできたことになります。
1945年はまた、広島、長崎に原子爆弾が投下された年でもあります。それから80年が経過した今もなお、世界中で戦火は絶えず、核兵器使用の危険性さえ高まっています。昨年ノーベル平和賞を受賞した、日本被団協の田中熙巳さん(92歳)の授賞式での演説の中の言葉、「人類が核兵器で自滅することのないように!」が、世界の大国そして核保有国の指導者たちに届くことを願いたいです。
2025年の世界が、少しでも平和への兆しを見せ、そこに未来への希望を見出せることを祈っています。