理事長・学長室から2022

9令和4年12月12日発行

はじめに

サッカーワールドカップ、日本代表のGiant Killingな戦いぶりには驚きましたが、1戦ごとに上げたり下げたりするマスコミの手のひら返しにも驚きました。
2022年もあと3週間足らずとなりました。本学にとって今年一番のイベントは何といっても新キャンパス完成でしたね。「理事長・学長室から2022、第9号」は、その話題から始めたいと思います。

1. 新キャンパス落成除幕式・記念式典を開催。栗山英樹監督が記念講演

11月19日に、本学の新キャンパス落成を記念して除幕式・式典・講演会が開催されました。まず、教育研究棟前広場において、鈴木直道知事らご来賓をお招きしてのテープカットと石碑の除幕式を執り行いました(写真1)。続いて、D102講義室において記念式典を開催し、鈴木知事、市橋修治道議会副議長らにご祝辞を頂戴したほか、新キャンパス「広場」の愛称選考結果の発表などが行われました(次項参照)。
臨床講堂に場所を移して行われた記念講演会では、栗山英樹さん(WBC侍ジャパン監督、前日本ハムファイターズ監督)にご講演をいただきました(写真2)。会場は、本学教職員や学生など多くの聴衆で埋め尽くされました。栗山さんがまず掲げたのが「刮目相待」という言葉です。すなわち、才能に溺れることなく努力する人間は、どんどん成長する。それを目を見開いて注目せよ、ということです。そしてまさに、刮目相待すべき、エンゼルスの大谷翔平選手から直接電話があり、侍ジャパンに参加する意思を告げられたことが報告されると、満場の拍手が巻き起こりました。
講演の後は、HTBの室岡里美アナのMCで、栗山さんと私の対談をさせていただきました(写真3)。栗山さんからは、「誰かを助けてあげられたり、痛みを取り除くことのできる皆さんはわれわれのヒーローです。ぜひ日本一、世界一の病院を目指してください」という言葉を頂戴しました。栗山さんの温かい人柄に感銘し、その一言一言から勇気と元気をいただいたひと時でした。

2. 新キャンパス「広場」愛称決定

この度、大学の外構工事により完成した、大学と附属病院をつなぐ「広場」の愛称を公募していましたが、広報委員会や教員・学生の代表による投票・審査により、受賞作品が決定しました。
優秀賞(採用作品)は『らてす』です(図1)。作者は、札幌市の武山ルミ様です。医学の父「ヒポクラテス」から引用したものですが、「ステラ」「テラス」にも通じて、覚えやすく親しみやすいという評価が寄せられました。
準優秀賞には、札幌市の山本 聡様による『SAPO+TO』と、剣淵町の枝 将義様による『Polaris Garden』が選出されました。3名の受賞者の皆さんには、札幌医大において表彰状と記念品の贈呈が行われました(写真4)。
広場は完成後すぐ雪が降ってしまい、また植樹もされたばかりで、まだ殺風景ですが、来春以降は緑も増え、学生、職員、そして患者さんも含めて「憩いの場」として活用されることを期待しております。

3. 「Dr.コトー診療所」関連イベントで、吉岡秀隆さん、柴咲コウさんら来学

11月29日に、映画「Dr.コトー診療所」のPRイベントが本学で開催されました。総合診療医学講座の辻 喜久教授による「地域医療セミナー」の終盤、サプライズの形で、俳優の吉岡秀隆さん、柴咲コウさん、監督の中江功さんが登壇しました(写真5)。主人公役の吉岡さんからは、役柄そのままの誠実な人柄が感じられ、「頑張った姿を誰も見ていなくても、必ず自分は見ていて、それは心の財産になる」という言葉には深く感動しました。柴咲さんは、さすがに大女優のオーラが凄かったです。何より、学生さんたちが、有名人を前にしても物怖じせず、しっかりと質問・発言していたのには大変感心しました。
Dr.コトー診療所公式Twitterより

4. 高麗大学国際医学生リサーチカンファレンス

11月19日、韓国高麗大学(Korea University)において開催された、第5回KU International Medical Student Research Conferenceに本学医学部4年生(薬理学講座MD-PhDコース)の中島龍汰君が参加しました。中島君は、「Resveratrol, Activator of NAD⁺-dependent Protein Deacetylase SIRT1, Attenuates Age-related Muscle Atrophy and Motor Dysfunction by Promoting Autophagy in Mice」という演題を発表し、質疑応答にもしっかり対応していたとのことです(写真6)。指導教官の薬理学講座、久野篤史教授には引率の労をおとり頂きました。
当日は、10月に本学を訪問されたYoung-Mee Lee教授も会場に駆けつけてくれました(写真7)。今後も、高麗大学との学生・教員レベルでの国際交流を推進していきたいと考えています。

5. 「総合スポーツ医学 実践ハンドブック」

11月の第33回日本臨床スポーツ医学会学術集会(札幌市)にあわせて、『総合スポーツ医学 実践ハンドブック』という書籍が発売されました(図2)。ここで、あえてこの書籍を紹介させていただくのは、この本の執筆者のほとんどが本学医学部・保健医療学部・附属病院の教職員で、まさに本学スポーツ医学の総力をあげて作成したものだからです(図3)。スポーツ医学は、内科、婦人科、整形外科、脳神経外科、耳鼻咽喉科、眼科、皮膚科、リハビリテーション科、歯科、救急医学など多様な診療科、そして医師、歯科医師、理学療法士、作業療法士、看護師、薬剤師、アスレチックトレーナー、栄養士、臨床心理士など多職種が関わっており、スポーツ医学が「総合医学」と言われる所以です。
本書には、東京2020や北京冬季五輪に派遣された本学の医師・理学療法士のスタッフの奮戦記も掲載されています。本書が、スポーツ医学に関する多職種間連携の一助となり、本道のスポーツ選手の競技力向上、ひいては道民の健康増進に寄与できることを願っています。

おわりに

2022年は、最後こそサッカーワールドカップで盛り上がりましたが、1年通してみると、国内的にも、世界的にも、お世辞にも良い年ではなかったと思います。
来たるべき2023年こそ、ぜひとも良い年に、と言ってもそんなに甘いもんじゃないですよね。でも、われわれ札幌医大は、新しい施設・キャンパスというアドバンテージをいただいています。これを幸せに感じるとともに、比較的規模の小さな医療系総合大学だからこそ可能な、「結束力」、「機動力」、「斬新な発想力」をもう一つのアドバンテージとして、われわれも “Giant Killing” を合言葉に頑張っていきたいものですね!