理事長・学長室から2025

No.40令和7年7月7日発行

はじめに

 6月下旬から、北海道らしからぬ蒸し暑い日々が続いていますね。これから先が思いやられます......。
 先月号のNo.39で告知したように、6月28日に、本学の創基80周年記念式典・講演会・祝賀会が開催されました。多くの教職員・関係者の皆さんのご尽力により、まさに本学にとって記念すべき1日となりました。
 「理事長・学長室から2025」No.40は、その報告から始めたいと思います。

1.札幌医科大学創基80周年記念式典・講演会・祝賀会が開催されました

 札幌パークホテルを会場として行われた式典・講演会には263名、祝賀会には137名の参加者があり、いずれも盛会となりました(写真1)。

【記念式典】

 まず冒頭に、本学の歴史・現在のアクティビティー・将来への展望を示した「オープニングビデオ」が上映され、次いで私より、本学の将来のあるべき姿・目指すべき目標を示した「札幌医科大学Vision for the Next Decade」のプレゼンテーションを行いました(写真2)。 
 続いて、鈴木直道知事からビデオメッセージ、武部 新文部副大臣から御祝辞をいただいたほか、多くの方々よりお祝いの言葉や祝電を頂戴しました(写真3)。
 式典の締めは、本学医学部3年生の大木大樹君と妹の風香さん(札幌市立大学助産学専攻科)ペアによる競技ダンスのエキシビションに飾っていただきました。映画「The Greatest Showman」の音楽にのせた、息をのむような華麗なダンスに場内は魅了され、多くの出席者から賞賛の声があがりました(写真4)。

【記念講演会】

 記念講演会は、オンライン配信により一般の方々にも聴講していただきました。
 まず記念講演として、筑波大学体育系教授で、ソウルオリンピック女子柔道銅メダリストの山口 香先生に、「トップスポーツを支える医科学の現状と課題 —札幌医科大学スポーツ医学講座開設に寄せてー」とのテーマでお話いただきました(写真5)。「コーチングとは、何かを教えるのではなく、選手がもともと持っているものに気付かせる、あるいはそれを引き出してやることである」、「特権を持つ者・勝ち組は、弱者を思いやることが大事である」、「敗因をメンタルのせいにしてはいけない」などの言葉は、一つずつ心に響きました。多くの参加者より「良いお話だった」との声が寄せられました。
 続いて、本学を卒業後、世界を舞台に活躍されている3名の先生方による、シンポジウム「世界に羽ばたく札医のつばさ」を開催しました。米国UCSF教授の長尾正人先生からは「医療従事者の仕事を変える新たな潮流:変化する医療環境とキャリアの未来」、米国USC教授の岩城裕一先生からは「黎明期から成熟期に至る移植医療を現場最前線での経験から」、フィンランド・タンペレ大学の久末智実先生からは「“世界一幸せな国”から考える看護の創造性」と題したご講演をいただきました(写真6、7)。岩城先生は残念ながら来日が叶わずビデオによる講演となりました。
 最後に、本学2001年卒の国境なき医師団日本会長、米国エモリー大学准教授の中嶋優子先生からは、スリランカでの国際会議出席中のため、ビデオメッセージをいただきました。「母校が今もなお、地域医療への貢献と、国際的視野の育成という、二つの使命を大切にしながら、教育と研究の最前線を歩み続けていることを、いち卒業生として心から誇りに思います」という言葉には心底感動し、私は講演会の最前列で泣きそうになっていました。
 世界で活躍する大先輩の先生方のお話から、視聴した学生・研修医、教職員の皆さんは誇りと勇気を感じ取り、大いにモチベーションを高めることができたものと思います。

【祝賀会】

  祝賀会の冒頭は、ジャズ・ビッグバンド「JIMMY ALL STARS」の演奏に飾っていただきました。JIMMY ALL STARSを率いる東原俊郎さんには、これまで数回にわたり本学にご寄附をいただいており、ECMOカーの導入に際しても多大なるご支援をいただきました。東原さんの「What a Wonderful World」や「北の国から」のトランペット演奏の素晴らしい音色には、会場全体が魅了されました(写真8)。
 来賓の西川祐司旭川医科大学学長には、先生と本学病理学教室との関わりを含めたご丁寧な御祝辞をいただきました(写真9)。続いて、秦 史壯後援会長の発声により開宴となり、和やかな歓談のうちに、記念すべき1日を締めくくっていただきました。
 祝賀会を企画・運営していただきました、委員長の西里卓次医学部同窓会長をはじめとする実行委員会の皆様に心より感謝申し上げます。また、式典・講演会・祝賀会を通じて、素晴らしい司会・進行役を務めていただいたHTBの森さやかアナウンサーにも心より感謝いたします(写真10)。

2.札幌医科大学「統合報告書」を発行しました

  本学創基80周年記念式典等の開催に合わせ、札幌医科大学 統合報告書(Integrated Report 2025)を発行しました(図1)。統合報告書とは、大学や企業のビジョン・活動状況や財務情報をまとめた報告書のことで、全国の主要な大学ではすでに定期的に発行されていますが、本学ではこれまで作成されてきませんでした。この度、創基80周年を機に、「記念誌」的な意味も込めて作成を計画し、杉村政樹医療人育成センター教授をリーダーとするタスクフォースにより作成作業にあたっていただきました。巻頭には、「札幌医科大学Vision for the Next Decade」を掲載し、本学の「今」と「これから」を明示した、充実した内容の報告書となりました。短期間で立派な冊子を仕上げていただいたタスクフォースの皆様のご尽力に感謝いたします。
 統合報告書は、下記URLから本学ホームページで閲覧することができます。
札幌医科大学 統合報告書(Integrated Report 2025)

3.網走市地域医療講演会が開催されました

  6月7日、網走市地域医療講演会において「札幌医大が取り組む最新医療 ー北海道の元気のためにー」というテーマで講演をさせていただきました。水谷洋一網走市町のご厚意により、タイトルに「札幌医科大学創基80周年記念」という冠を付けさせていただきました。
会場の網走市役所には、網走市民をはじめ、近隣の清里町の古谷一夫町長、小清水町、斜里町の自治体の方々など、60数名の方々にご参集いただきました(写真11、12)。大変熱心に聴いていただき、多くの方々より、札幌医大による一層の医療支援に期待する声をいただきました。講演後は、同市の「オホーツク流氷館」にて、流氷体験までさせていただきました(写真13)。
 網走市は、ラグビーやサッカーのトップレベルのチームの強化合宿が可能な施設が整っており、本学によるスポーツ医学の側面からの支援も可能かと思いました。今後も、網走市や網走厚生病院と連携して、地域の医療の向上に貢献していきたいと考えます。
 7月26日には片寄保健医療学部長が、9月20日には高橋感染制御・臨床検査医学講座教授が、同じく網走市地域医療講演会で講演する予定となっています。

4.かちまい・札幌医大医療セミナー「人生100年時代を健やかに」が開催されました

  6月13日、帯広市において、十勝毎日新聞社(かちまい)との包括連携協定事業として、「かちまい・札幌医大医療セミナー」を開催しました。セミナーのテーマを「人生100年時代を健やかに」とし、本セミナーにも「札幌医大創基80周年記念」の冠を付けていただきました(写真14)。会場の北海道ホテルには、約200名の参加者が詰めかけました。
 第一部では、私が「北海道の元気のために:札幌医大の最新医療」と題した講演を行い(写真15)、第二部では、片寄保健医療学部長による「スポーツ医学が導く健やかで元気なライフパフォーマンス」との講演(写真16)に続き、戸田 創講師によるエクササイズの実技指導が行われました(写真17)。姿勢改善のためのセルフチェックや座ったままでできる運動を、会場の参加者全員で行いました(写真18)。帯広協会病院と帯広整形外科の2名の理学療法士も指導に加わり、会場は大いに盛り上がりました。
 今後も、十勝毎日新聞社様との連携を深め、帯広・十勝地区の住民の皆様の健康増進に寄与していきたいと考えています。

おわりに

 この度の創基80周年記念事業は、約半年間という限られた準備期間に、札幌医大に関わる多くの人々の力が結集し、成し遂げられたものです。医学部・保健医療学部・医療人育成センターの教員からなるタスクフォースにより作成された「札幌医科大学Vision for the Next Decade」や「統合報告書」は、斬新かつ魅力的な内容で、未来に向けて希望が持てるものになりました。同窓会や後援会の皆様からは絶大なるご支援・ご協力をいただき、多くのOB個人ならびに法人(関連病院等)から想定を超える財政的支援を頂戴することでできました。種々の企画・準備、そして記念式典・講演会・祝賀会当日の運営においては、事務局の皆様に統率のとれた的確な仕事をしていただき、外部からのゲストからも高い評価をいただいています。
 このように、一つの目標に向かって札幌医大が一丸となった時に発揮されるパワーや心意気を目の当たりにし、今更ながら、「札幌医大ってスゲーな!」と思った次第です。あらためて、ご尽力された皆様に心より感謝いたします。学生の皆さんは、このような素晴らしい人々に自分たちが支えられていることを自覚し、その気概を受け継いでで行ってほしいと思います。
 「札幌医科大学Vision for the Next Decade」が指し示す、10年後そしてその先の未来に向けて、札幌医大がさらに飛躍していくことを確信しています。