がんゲノム医療をAIで加速:支援システム「Varporter」に生成AIを統合 ~AI情報収集・サマリー作成により専門家会議を大幅に効率化~
概要
札幌医科大学医学部 ゲノム予防医学講座 ゲノム医科学分野の井戸川雅史准教授は、同内科学講座 腫瘍内科学分野(高田弘一教授)、消化器内科学分野(仲瀬裕志教授)、附属病院遺伝子診療科、「地域に貢献する北海道がんプロ養成プラン」と共同で、がん遺伝子パネル検査(CGP)の解析評価をAIで支援する「Varporter(バーポーター)」AIシステムを開発いたしました。これまで全国の医療現場でCGPのデータ集約ツールとして活用されてきた「Varporterソフトウェア」を土台とし、新たに生成AI(大規模言語モデル:LLM)を基盤とした「情報のオーガナイズ(収集・整理・要約)機能」を実装。これにより、専門家会議(エキスパートパネル)に向けた膨大な調査や資料作成を自動化し、高度ながんゲノム医療の包括的支援を実現しました。
開発の背景:医療現場の「情報の波」をAIで整理
CGP検査の拡大に伴い、医療機関が検査結果を適切に評価するために必要な人的リソースの不足が深刻な課題となっています。Varporterは従来からマニュアル作業の自動化に寄与してきましたが、関連データベースの詳細確認や臨床試験情報の収集には、依然として煩雑な手作業が必要でした。本システムは、Varporterが持つ高度なデータ整理能力に、AIによる「オーガナイズ機能」を統合することで、この課題を解決しました。
主な特徴
- AIサマリーの自動生成と信頼性の両立: RAG(検索拡張生成)やWeb検索APIを駆使し、関連データベースの詳細や最新ガイドライン、臨床試験情報を自動集約。AIの役割を「要約・整理」に限定することで、ハルシネーション(誤情報)のない出力を生成。
- 国際基準への対応: 遺伝性乳がん卵巣がん(HBOC)の原因となるBRCA1/BRCA2遺伝子の病原性評価を、難解な国際基準「ClinGen ENIGMA」に準拠してAIが支援。専門医の判断を強力にバックアップ。
- AIチャットボット「バーポくん」: バリアント表記の正規化やリファレンス変換(liftover)といった、複雑で負担のかかる作業を対話形式で即座に実行。医療従事者の心理的・時間的負担を大幅に軽減し、教育効果も創出。
社会的意義
現在、Varporterは全国の医療機関に導入されており、がんゲノム医療中核拠点病院から連携病院まで幅広く活用されています。従来の確実なデータ管理機能にAIによる高度な情報集約機能が加わった本システムは、限られた人的リソースで質の高いエキスパートパネルを運営するために非常に有益な基盤となります。
AIサマリー等の生成サンプルは以下でご覧いただけます。AIチャットボット「バーポくん」の試用も可能です。
本研究に関するお問い合わせ先
札幌医科大学 医学部 ゲノム予防医学講座 ゲノム医科学分野
准教授 井戸川 雅史
TEL: 011-611-2111(内線23870)
Email: idogawa★sapmed.ac.jp ★を@に変えて送信してください。