保険適用となっている,がん遺伝子パネル検査(がんゲノムプロファイリング検査,CGP検査)の解析結果をエクセルに取り込み,その評価を支援するソフトウェアです.生殖細胞系列由来であることが推定される病的バリアント(PGPV,presumed germline pathogenic variant)の検討に必要な情報の付加のほか,C-CATレポートを取り込み薬物療法を検討するエキスパートパネルのためのデータ整理にもお使いただけます.本ソフトウェアにより,煩雑なマニュアル作業の自動化,効率化を図ることが可能です.指定が開始された「エキスパートパネル実施可能がんゲノム医療連携病院」でも便利にお使いいただけます.
C-CATレポートの取り込み機能を追加しました.(2024/10/4)
ClinGenのTP53 ACMGバリアント評価ガイドラインv2.1に対応しました.(2024/9/20)
二次的所見ワーキンググループ(SFWG)「がん遺伝子パネル検査 二次的所見 患者開示 推奨度別リスト v4」に対応しました.(2023/11/13)
アノテーション解析でAlphaMissenseのスコア,病原性表示に対応しました.(2023/9/28)
アノテーション解析でToMMo 54KJPNの健常人アリル頻度表示に対応しました.(2023/7/15)
がん遺伝子パネル検査およびエキスパートパネル関連ファイルが保存されているフォルダをスキャンしてC-CAT IDおよび関連ファイルを抽出し,Varporter解析結果のSNV,CNV,Fusionを含む情報と組み合わせて一覧表を作成できます.一覧表はブラウザで表示でき,検索による抽出やクリックでファイルを開くこともできます.SNV,CNV,Fusionを集計しグラフも作成可能です(Pathogenicな物のみの集計も可能).外部とのインターネット接続はないためセキュリティ上も安全です.Varporterと組み合わせて簡易的なデータベースとしてお使いいただけます.
【動作環境】WindowsおよびMicrosoft Excel(C-CATレポート変換にWord)
(zip圧縮ファイル[要解凍],試用可)
【免責事項】本ソフトウェアはあくまで解析の支援を行うものであり,使用者の責任において御利用下さい.開発者はいかなる責任も負いかねますので御了承ください.
【お問い合わせ先】メールアドレス:mgs.rif.smu@gmail.com
札幌医科大学医学部 附属がん研究所(旧フロンティア医学研究所) ゲノム医科学部門まで
試用の感想,要望,試用期間の延長,また導入に関する御質問などありましたら,上記まで御連絡ください.
【導入実績】21施設(がんゲノム医療中核拠点病院:1か所,拠点病院:9か所,連携病院:11か所)(2024年3月現在,事務手続き中を含む)
当センターはがんゲノム医療拠点病院として,2023年度のCGP検査に関しては,院内:305例,連携:97例の検査実施実績がありました.エキスパートパネルは月2回開催され,いわゆるGermline Findingsに関しては,担当医のチェックの他に,事前に遺伝専門職(臨床遺伝専門医,認定遺伝カウンセラーそれぞれ1名)およびゲノム医療責任者(1名)の3名で,患者さんに開示すべきPGPVまたはGermline Findingsについて検討を行っております.
Varporterは2022年7月より当センターに導入されました.私事ですが,2024年4月より当センターに赴任し初めてVarporterを使用することになりました.Varporterの優れている点は,一人一人のレポートを個別に見ていくのではなく,抽出・統合されたエキスパートパネル1回分のデータファイルにおいてソート機能を使用することができる点です.それにより,症例ごとに一つ一つの遺伝子の評価を行うのではなく,遺伝子ごとに全症例のバリアント情報を確認することができます.遺伝子を選択した後,塩基配列情報,VAF,データベース情報を基にソートできますので,あとは小杉班のフローチャートに従って,返却すべきかどうかを判断できます.ヌルバリアントかどうか,またミスセンス変異であれば直接リンクしているClinVarのサイトを見れば一目で判断できます.ミスセンス変異の場合で,かつClinVarでConflicting classifications of pathogenicityの表記の場合は詳細を確認する必要がありますが,ClinVarのサイトに直接リンクしているので,簡便に判断が可能です.
またClinVarのサイトに未登録のバリアントの場合には,自身で過不足なくACMG基準を判定する必要がありますが,そのような場合にVarsomeへ直接リンクしていることも大変便利です.以前は各種データベースへアクセスする場合に,それぞれのホームページの遺伝子の表記法が異なるため,間違って入力すると検索が不可能であったり,違うバリアントにリンクしてしまうリスクがあったりしましたが,直接リンク機能によりリスクが減り現場の労力の軽減に貢献していると考えております.
通常の医療において,検査結果の結果解釈を現場の医療者が行うことは稀ですが,がんゲノム医療では検査会社の解析結果をエキスパートパネルで判断するという立て付けになっており,現場の関係者は多くの負担を強いられていることと思います.そのような状況の中でVarporterは負担軽減に役立つとともに臨床的にも有用なツールとして重宝されると確信しております.
(2024/7/5)大阪国際がんセンター 遺伝子診療部
当院は一地方私立大学ではありますが,がんゲノム医療拠点病院として連携病院とともに年間に200件弱の症例のComprehensive Genome Profiling(CGP)テスト後のエキスパートパネル(以下EP)を行っております.関連病院が少なく,CGPテスト件数も膨大ではないことから,当施設ではEP支援システムの導入やEPの前段階に必要な検査報告書からのキュレーション,資料作成に関しての補助は認められませんでした.そのため,CGP開始初年度からは全くの手作業での資料作成を強いられておりました.さらにマンパワー不足の問題もあり,フラストレーションがたまる一方でした.
Varporterの存在は,神奈川県立がんセンターの廣島幸彦先生にご教授いただき,病院執行部に掛け合って2023年にようやく導入していただきました.いままで検査のオリジナルXMLファイルデータ,検査報告書とC-CAT情報を見比べならが手作業ですべての遺伝子バリアント情報の検索をwebページを逐一開いて確認していましたが,Varporter導入によりその苦難から開放されました.また,手作業の転記のために頻繁に起こっていた確認漏れや転記ミスもVarporterで解消されました.さらにVarporterで作成された資料はエクセルシートとして加工が可能なため,そこにさらに独自の情報を追加できカスタマイズ性も非常に高いと感じています.
また,Varporterで作成されたエクセルシートを通じての遺伝子バリアントに関する情報は,主だった遺伝子バリアントの検索サイトが網羅されており,情報量が非常に豊富です.一方で,Secondary Finding(SF)に関連した遺伝子バリアントについてもVarporter処理後非常に明確に表示されるため遺伝カウンセラーの方の作業効率も大きく改善しております.
余談ではありますが,当方のPCのセキュリティの問題でVarporterが作動せず,ほとほと困っておりましたが,webを通していろいろとアドバイスを頂きました.さらに,最近CGP検査としてあらたに臨床導入されたGuardant360や他パネルテスト版にも追加負担無しで対応して頂いており,Varporter作成者の井戸川雅史先生およびその関係の方々に心より深謝申し上げます.
(2024/7/2)久留米大学病院 腫瘍センター
当院はがんゲノム医療拠点病院として,毎週5-10症例前後のエキスパートパネルを実施しています.エキスパートパネルの数日前に,少人数の「コアメンバー」による事前検討を行い,その週の症例の検査結果と推奨治療を確認していますが,検査会社のレポートはパネルによって形式や内容が異なっていること,また検査レポートのほかにもC-CAT調査結果報告書,web上のデータベース等,複数のファイルやwebを開く必要があり,確認作業が複雑化して,検討漏れやエラーを起こす恐れがあり,頭を悩ませていました.対策の一つとして,当院エキスパートパネルでは,1症例ごとに,事前に検査結果と治療薬の候補を一つの表にまとめたものを作成しています.エキスパートパネル業務の中でVarporterは,xmlファイルからバリアントを抜き出し,上記の表を作成する用途,バリアントの病的意義の検討,PGPVの確認に活用しています.Varporterを使用してみて,手作業によるエラーが防止されるとともに,ClinvarやVarsomeなどのデータベースへのリンクが作成されるため,各レポート間でのバリアントの病的意義の記載が異なり再評価を必要とする場合などに最新の情報にワンクリックでアクセスできることがとても役立っています.また,価格も良心的でサポートが手厚いことも好評です.
(2024/7/4)埼玉医科大学国際医療センター がんゲノム医療センター
当院の遺伝子診療部門では,二次的所見疑いバリアント(Putative Germline Pathogenic Variant: PGPV),また二次的所見バリアント(Pathogenic Germline Variant: PGV)について厚労科研小杉班のフローに沿って判断しエキスパートパネルで,遺伝外来推奨有無についてコメントしております.Varporter使用により,すべてのバリアントを瞬時に一覧で確認することができるようになり,germline由来の可能性について多角的な視点で検討できるようになりました.また,小杉班のリストに該当する遺伝子か否か確実にスクリーニングすることができる点や頻度やバリアント評価のサイトをすぐに参照できる点も,スクリーニング作業効率化に繋がっており大変助かっております.
(2023/3/27)
当院ではがんゲノム医療拠点病院として年間500件程度(自施設400件,連携100件)の症例をエキスパートパネル(以下EP)で検討しています.当院ではEPの前に@ Molecular MTGとA Clinical MTGの2つの事前ミーティングを実施しています.@ Molecular MTGではがん遺伝子パネル検査で検出された遺伝子変異についてPathogenicity(病原性)とPGPV(presumed germline pathogenic variant,生殖細胞系列由来であることが推定される病的バリアント)について検討し,病的と判定した遺伝子変異についてA Clinical MTGで推奨治療について検討するという流れとなっています.この運用の中でボトルネックとなるのが@ Molecular MTGで使用するCurationレポートの作成になります.Curationレポートは全ての遺伝子変異についてClinVarなど7種類以上の公共データベースの内容をまとめたもので,当院では手作業でXMLファイルから遺伝子変異情報をエクセルファイルに転記し,各々のデータベースを参照して必要情報を記入して作成しており,変異数の多い症例では1時間程度要することもあり,何とか自動化できないかと考えておりました.現状,幾つかのEP支援システムでCurationが自動化されていますが,どれも高額で導入は難しいと考えていました.
そんな中,Varporterのデモ使用の紹介があり,早速使用してみました.まず使用して驚いたのが,エクセルベースのシンプルなシステムで使い方が非常に簡単,動作が早く,軽いという点でした.また,XMLファイルから自動で変異情報を抽出,リスト化し,Curationレポートに必要なデータベースの殆どの情報が自動入力され,しかも該当Webページにリンクが貼られているので,情報ソースをすぐに参照することができる点がまさに「痒いところに手が届く」機能で非常に重宝しています.
私はがん薬物療法を専門としていますので,PGPVに関しては小杉班のリストを参考にする程度で詳細は遺伝診療科に任せていたのですが,VarporterにはVarsomeなどPGPV用の参照データベースが充実していて,札幌医大で使用されている詳細な遺伝カウンセリングシートも自動作成されますので,非常に勉強になりました.
上記のような充実した内容で非常に良心的な価格設定でしたので,当院では導入を即決致しました.EP準備の効率化だけでなく,PGPVに興味のある薬物療法医のスキルアップにも有用な教材になると考えています.
(2022/5/18執筆,2022/8/23記名公開)
神奈川県立がんセンター がんゲノム診療科
現在,がんゲノム医療連携病院に非常勤認定遺伝カウンセラーとして勤務しています.年間30-50件程度の症例の遺伝子変異について,エキスパートパネル(EP)提示前にSecondary Findings(SF,2次的所見)として開示が必要か否かの評価を行っています.
これまでは,遺伝子変異に関わるXMLファイル情報(変異遺伝子,変異箇所,アレル頻度など)や,各種データベースによる評価,小杉班のリスト情報などを手作業でエクセルファイルに転記し,SF開示要否(案)を作成していました.担当医師が判断できるよう,必要に応じて,作成したエクセルファイルに加えて各種データベースのリンク先などを情報共有ツールに転記していました.変異遺伝子数の多い時や,手間のかかるとき(データベース検索時に変異箇所からはデータなしの場合に様々なアプローチで確認するなど)には,1例あたり1時間を超えることも度々ありました.以前,がんゲノム医療拠点病院に勤務していた時は,EP前に,遺伝子変異の病原性や生殖細胞由来と推定できるかなどを,複数の臨床遺伝専門医と複数の認定遺伝カウンセラーで議論することで,SFとしての開示必要性をダブルチェックできていましたが,現在は1人で評価しているので,評価の品質が適切に保たれているか(対象遺伝子の拾い漏れや転記ミスなどが無いかを含む),より慎重に何度も確認する必要があります.
Varporterを用いることで,十分なスタッフがいないがんゲノム連携病院でも品質の確保ができ,使用方法も易しく,遺伝子数が多くても短時間で結果が得られます.また,遺伝性腫瘍の専門家ではないがんゲノム医療担当医師にとっても,各種データベースのリンクが簡単に確認できるため,従来よりも積極的にデータベースを確認いただけるようになり,がんゲノム医療だけでなく,遺伝性腫瘍への親近感も持っていただけると感じます.当院では,がんゲノム医療拠点病院に比較し症例数は少ないですが,今後のがんゲノム医療の広がりにも対応できるよう導入予定です.
(2022/5/19)