老年看護学
領域紹介 -老年看護学とは
老年看護領域では、高齢者の価値観や信念を尊重し、その人らしい自立した生活を支援するために必要な看護を実践する能力を養います。学部では、高齢者疑似体験、ライフストーリー・インタビューなどをとおして高齢者を身近に感じてもらう授業から開始します。3年次には、健康障害のある高齢者の看護を展開する思考過程を学ぶために、紙上事例を用いた演習を行います。その後、健康度の高い高齢者とのコミュニケ-ション実習、病気や障害をもつ高齢者へ看護援助を行う実習へと段階的に、高齢者の生活を支える各種施設や関係職種の活動に触れるなかで老年看護の役割について考えます。また、4年次の選択科目では、今後増加が予測される認知症をもつ人のケアについて専門的に学ぶ機会も準備しています。
1 教材
学習ガイドブックと看護過程演習WORKBOOKを作成して学生に配付しています。これは学内での紙上事例を用いた演習だけではなく、その後の実習でも活用します。
2 技術演習
片麻痺などの障害をもつ高齢者への安全・安楽な移動・排泄・清潔の技術を習得します。
写真は、車いすからベッドへの移乗援助を練習している場面です。
写真は、車いすからベッドへの移乗援助を練習している場面です。
3 高齢者疑似体験演習
高齢者疑似体験セットを装着して様々な日常生活動作を行います。この体験を通して、高齢者の加齢による身体的変化や心理的影響についての理解を深めます。
教員紹介
教授 長谷川 真澄
高校生へのメッセージ
「ひとは皆かならず老い、やがて死を迎えます。老年看護は、どのような健康状態にあっても自分らしく生ききることを支える看護をめざします。人生の完成期にある高齢者へのケアに携わることは、さまざまな先覚の教えに接し看護者としての人間性を磨く機会にもなります。高齢者のかたとともに成長する看護を札幌医科大学で一緒に学びませんか?」
准教授 木島 輝美
高校生へのメッセージ
「看護の対象の多くは65歳以上の高齢者です。そして、高齢者はこれまで社会を支えてきてくれた人生の大先輩でもあります。長い人生で培ってきた高齢者の英知を一緒に学びましょう!」
研究テーマ(教育活動、社会貢献活動)
1 せん妄ケアの質評価指標の開発に関する研究
急性期病院に入院する高齢患者のせん妄対策に関するガイドラインや多職種チームによる支援活動が進んできましたが、せん妄対策のケアの質を評価する指標の開発が遅れています。せん妄ケアは複雑で、対象者一人ひとりに合わせた対応が求められます。看護師の実践知を評価指標に盛り込めるようナラティブ研究手法を取り入れながら取り組んでいます。
2 認知症の人と家族に対する診断後支援に関する研究
近年、早期に認知症の診断を受ける人が増えていますが、認知症の診断を受けてから介護サービス等の利用に至るまでに1年以上の時間がかかっています。これは「空白の時間」と呼ばれており、認知症診断後すみやかに専門的な支援につながるシステムの構築が急務です。そこで、認知症の人と家族のニーズに応じた診断後支援の方法を検討しています。
3 軽症脳卒中患者の再発予防に関する研究
脳卒中で亡くなるかたは減っていますが、病気になるかたは増えています。脳卒中は高齢者に多く、繰り返すことも少なくありません。脳卒中の再発を予防することは要介護の予防にもつながります。再発を予防するためには日常生活全般の見直しをする必要があります。長期にわたって実施できる効果的な支援方法を検討しています。
4 せん妄ケアの質向上をめざす教育パッケージの開発
せん妄を発症すると安全上の理由で身体拘束をされることがありますが、身体拘束はせん妄のリスク因子の1つでもあり、倫理的にも問題があります。これらの問題を解決するには、組織的な対策に加え、看護師が高齢患者のせん妄や身体拘束を予防するためのアセスメントや実践能力の向上が欠かせません。そこで、臨床看護師の教育教材として活用できるe-ラーニングや動画教材を用いた事例検討を含む教育パッケージの開発を目指しています。