山下敏彦新学長に聞く(十勝毎日新聞・札幌医科大学 包括連携協定事業)
札幌医科大学の第4代目の新理事長、第12代目の新学長に1日、整形外科学講座の山下敏彦教授が就任した。就任の抱負や札幌医大がこれから目指す姿について、新学長に聞いた。(聞き手・安藤有紀)
山下敏彦(やました・としひこ)
1958年砂川市出身。83年札幌医科大学医学部卒、87年同大大学院修了。米国ウェイン州立大学博士研究員、札幌医科大学医学部整形外科学講座助教授などを経て、2002年同講座教授。同大学附属病院手術部長、副院長を歴任した後、14年病院長、18年同大学国際交流部長、今年4月から現職。
山下敏彦新学長に聞く 2022/04/20
安藤:就任の抱負を。
山下:微力ながら大学の発展のために尽くしていきたい。これまでの研究をさらに活性化し、札幌医大の研究力と研究成果を世界に向けて発信していくことが大事。新型コロナの影響もあり、ICT(情報通信技術)の重要性が高まっている。オンラインでの診療や教育を発展させ、全道の地域医療にも生かしていきたい。AI(人工知能)等の最先端技術を医療・医学にも取り入れていく。
安藤:附属病院病院長、国際交流部長の在任期間を振り返って。
山下:病院長として特に力を入れたのは、医療安全の推進と災害対策。東日本大震災を踏まえ大学病院も災害に対する備えが求められている中、一定の対策が確立されたと思っている。
18年からは国際交流部長として、米国カリフォルニア大学サンフランシスコ校、韓国高麗大学との交流をスタートさせた。二大学とも非常に魅力的な大学。コロナ禍で国際交流が制限されたが、オンラインで交流を続けている。
安藤:地域医療に関して。
山下:札幌医大からは年間延べ2000人以上の医師を道内地域に派遣している。さらなる人員の拡大はなかなか厳しいが、オンライン診療を進めることで地域との距離感を縮めていきたい。ICTを使った病院間の連携も重要。医療におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)を本格的に進め、道民の皆さんの健康増進にも寄与していきたい。
安藤:感染症への取組みについて。
山下:新型コロナでは附属病院の専用病棟、高度救命救急センターで中等症・重症患者を非常に多く受け入れた。北海道で初めて体外式膜型人工肺「ECMO」(エクモ)を搭載した救急搬送車「エクモカー」も導入し、さらに機動性を高めている。
附属病院に感染症科等の開設も予定しており、感染症医療でも北海道をリードしていきたい。
安藤:十勝住民へ一言。
山下:十勝には学生の地域医療実習などさまざまな面で非常にお世話になっている。今後も札幌医大と十勝地区の医療機関等との連携を密にして、住民の皆様の健康維持に貢献していきたい。
十勝はスピードスケートを中心にウインタースポーツが盛んで、帯広の施設は国のナショナルトレーニングセンター(NTC)に指定されている。札幌医大でも帯広協会病院のスポーツ外来で地元のスポーツ選手を診療するなどスポーツ医学に注力している。2030年の札幌五輪誘致が実現すれば、スケート競技は十勝で開催されるだろう。それも視野に入れ、十勝地区のスポーツ医学を今後もサポートしていきたい。