札医大の研究室から(48) 上村修二講師に聞く(十勝毎日新聞・札幌医科大学 包括連携協定事業)

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 札幌医科大学付属病院は道内唯一の高度救命救急センターとして、救急医療だけでなく災害医療に関しても道内で中心的な役割を担う。同大救急医学講座で教室長を務め、胆振東部地震では北海道DMAT(災害派遣医療チーム)調整本部の本部長として全道の災害医療チームを指揮し、今回の新型コロナウイルス対策で札幌市のアドバイザーも務める上村修二講師に対策内容や救急医の役割を聞いた。(聞き手・安藤有紀)

上村修二(うえむら・しゅうじ)

 旭川市出身。札幌医科大学医学部卒、同大大学院修了。市立札幌病院救命救急センター、災害医療センター救命救急センター、市立函館病院救命救急センター、米国マサチューセッツ大学への留学などを経て2017年より現職。北海道災害医療コーディネーターや札幌市感染症対策本部のアドバイザーなども務める。

札医大の研究室から(48) 上村修二講師に聞く 2020/12/04

安藤:講座と新型コロナ対策との関係は。安藤:講座と新型コロナ対策との関係は。
上村:北海道のECMO(エクモ)センターとして、今年3月から新型コロナの最重症患者の治療を行っている。4月上旬に札幌市から市内の入院調整に関する助言を求められ、感染者が増加した同月中旬からは道からの要請により札幌市保健所にチームで入って主に入院調整の実務を担った。

安藤:札幌市保健所での具体的な活動は。
上村:入院情報共有システム「コビット・チェイサー」やメーリングリストを導入し、情報共有を効率化した。システム導入前は、約20の各医療機関に受け入れ可能な患者数などを電話で確認する作業が必要だったが、「コビット・チェイサー」導入後はそれを簡略できた。医療機関は朝と夕の1日2回情報を更新、それが保健所と医療機関に共有されるので、どの病院で受け入れが可能かすぐ把握できる。保健所と医療機関の負担を減らすことができた。今は札幌市内のみだが、全道に拡大されると聞いている。

安藤:災害医療と救急医の関係は。
上村:災害医療も救急医療も、与えられた時間・資源で目的を果たさなければならないこと、チームで対応し他部署との連携も必要なためマネジメント能力が求められることは同じ。必ずしも救急医が災害医療を行うわけではないが、上述のようなトレーニングを日々受けている救急医は災害医療を得意としている。災害医療は私のサブスペシャリティ(専門領域)の一つだ。

安藤:救急医のサブスペシャリティとは。
上村:救急医というと、外科や内科などの他科とで二つの専門領域を持つイメージがあるが、われわれの教室ではエクモや集中治療、メディカルコントロール、災害医療など、救急領域内で自分の得意分野を磨く救急医が増えている。私は「病院管理」と「医療政策」に興味があり、救急医の新しいサブスペシャリティに加えられないか模索中だ。昨年度に北海道大学の「病院経営アドミニストレーター」コースを終了し、現在も勉強している。

安藤:十勝住民へ一言。
上村:十勝は2次医療圏と3次医療圏が道内で唯一重なっていることもあり、医療機関は救命救急センターがある帯広厚生病院を核とした体制ができている。消防機関も「とかち広域消防事務組合」で一つの組織になり救急医療体制の役割が分かりやすくまとまっている。今後ドクターヘリと救急医が加わることで、さらに良い救急医療を住民に提供できるはずだ。より多くの良い救急医を育成し、十勝地域にも貢献できれば。

 

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  • 経営企画課企画広報係