札幌医科大学・十勝毎日新聞社 包括連携協定事業 「札医大の研究室から」Report1

十勝毎日新聞社と本学との包括連携協定により、十勝毎日新聞の紙面・WEB・動画において「札幌医科大学の研究室から」と題し、本学の研究や臨床の取組を紹介しています。ぜひ、ご覧ください。

医学部整形外科学講座 江森誠人 准教授
医学部整形外科学講座 江森誠人 准教授

プロフィール

東京都出身。札幌医科大学卒、同大学大学院博士課程修了。同大学付属病院や小樽協会病院などを経て、2009年大阪府立成人病センター(現大阪国際がんセンター)レジデント、17年札幌医科大学整形外科講師。今年から現職。日本整形外科学会認定整形外科専門医、日本整形外科学会骨・軟部腫瘍医、日本がん治療認定医機構がん治療認定医。



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「しこり」には悪性も 腫大の速さや硬さ注意


皮膚や筋肉などに発生するしこり(軟部腫瘍)。その多くが良性だが、10万人に6人ほどの割合で悪性があるという。悪性は放置すると命に関わる場合もあり、注意が必要だ。良性と悪性の違いはどこにあるのか、悪性の特徴や見分け方のポイント、治療法などについて整形外科学講座の江森誠人准教授に話を聞いた。(聞き手・安藤有紀)
  -軟部腫瘍とは。
 全身どこにでもでき、その中に良性と悪性がある。悪性の腫瘍を総合して「がん」と呼び、このうち上皮にできるものを「癌(がん)」、非上皮性組織にできる軟部腫瘍を「肉腫」と区別している。整形外科では主に、四肢や、内臓以外の体幹の表面に発生した軟部腫瘍を扱っている。

 -良性と悪性の違いは。

 良性で最も多いのが脂肪腫。神経に分化して生じる神経鞘腫(しょうしゅ)や神経線維腫などもある。悪性なのは転移する能力を持つ腫瘍。放っておくと命に関わる場合もある。

 腫瘍が大きくなるスピードにも注意が必要だ。良性は10年や20年など時間をかけて少しずつ大きくなるものが多いのに対し、悪性は大きくなるスピードが速い傾向がある。触ると硬い、ガチガチで押しても動かないというタイプも悪性の可能性がある。急激に大きくなった、小さくても硬い場合は早期に受診を。

<種類の判断難しく>
 -年齢での傾向はあるか。

 粘液線維肉腫は高齢者、滑膜肉腫はもっと若い世代の人にできやすいなど、年齢・年代が一つの目安になることもある。ただし、軟部腫瘍には良性悪性合わせて100種類近くのタイプがあり、判断が非常に難しい。良性と悪性の中間のようなタイプもあり、診断・治療には専門性を要する。医療機関では磁気共鳴画像装置(MRI)やエコーなどで詳しく調べて悪性・良性を判断するので、自分で判断せず受診してもらいたい。

<小さなうちに切除>
 -治療法は。

 最も根拠のある治療法は切除。良性で痛みがない、美容的に困っていないならそのままで問題ないものもあるが、悪性は大きくなる、転移するなどの可能性があるため手術を行う。良性ならしこりそのものを切除、悪性は周囲の筋肉や靭帯(じんたい)などの組織も含めて広範切除する。悪性のしこりは大きくなると転移の可能性が高くなり、病気のステージも上がる。切除範囲が広くなると予後にも影響するので、できるだけ小さなうちに切除するのが望ましい。既に転移が発生している場合などは化学療法や放射線治療も組み合わせて治療する。

 -生活で気を付けることは。
 悪性の腫瘍は痛みを感じることがほとんどないため、放置してしまう人が多い。しこりに気付いたらできるだけ早く整形外科あるいは皮膚科を受診してほしい。

 ゴリゴリとしたしこりがないか、足や腕の太さに左右差がないか、入浴の際などに自分の体を触って時折チェックするのも効果的。しこりの中には悪性のものがあることを知り、家族や友人など周囲の人からも早期受診するよう声を掛けてもらいたい。

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 十勝毎日新聞社は包括連携協定を結ぶ札幌医科大学の各診療科の研究内容や成果、最新情報など身近な医療にまつわるテーマをインタビューしています。

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