札医大の研究室から(44) 大日向輝美教授に聞く(十勝毎日新聞・札幌医科大学 包括連携協定事業)

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 札医大保健医療学部は、看護・理学療法・作業療法の3学科からなる国内初の医療系学部として93年に開設された。今年開学70年を迎える札幌医科大学の中で同学部がこれまでどのような役割を担い、今後は何を目指していくのか、大日向輝美教授に聞いた。(聞き手・安藤有紀)

大日向輝美(おおひなた・てるみ)

 1962年札幌生まれ。83年道立衛生学院看護婦第一科卒、92年北海学園大学法学部卒、95年同大大学院法学研究科修了。2007年北海道大学大学院教育学研究科博士後期課程修了。01年札幌医科大学保健医療学部看護学科助教授、11年同学部副学部長・看護学科長などを経て15年から現職。

札医大の研究室から(44) 大日向輝美教授に聞く 2020/05/30

安藤:保健医療学部の歴史と意義とは。
大日向:「北海道衛生大学設立構想」を基に前身の札医大衛生短期大学部ができ、続いて本学部が開設された。同構想の狙いは、北海道の地域医療を担う医療技術者と将来指導的な役割を担うパイオニアの育成。本学部もこれが理念となっている。学部開設から28年目、卒業生が各分野でリーダーの役割を果たすようになり、道内の医療系大学で教員として活躍する修了生も多い。当初の目的・理念は実現されつつあると感じている。

安藤:現在の取り組みは。
大日向:今年4月、全国初となる一年課程の保健師養成コースとして専攻科公衆衛生看護学専攻を開設した。保健師は地域医療構想や地域包括ケアシステムにおいてコアとなる職種だが、道内では不足が深刻な状況。同専攻を通じ、質の高い保健師を輩出していきたい。
 昨年度は地域貢献推進センターを開設し、道民対象の健康支援、看護職やリハビリテーション職、福祉職など道内の専門職対象の学習支援などを行ってきた。今年度予定していた講座やセミナー、研修などは新型コロナウイルスの影響で中止・延期せざるを得ない状況だが、WEB配信での講座開催やテレビ会議システムを用いた研修などを検討している。

安藤:今後に向けて。
大日向:これまでの医療者養成は施設内を中心に考えられてきたが、これからのキーワードは「保健・予防・生活・地域」。我々が養成する三職種には人々の健康を生活面から支える役割があり、その役割は今後ますます重要になるだろう。医療者として高度で専門的な知識と技術は当然求められるが、その前提として豊かで温かな人間性、人としての道徳・倫理性は必須。他者の喜びを自分の喜びとすることができ、自分の喜びが他者の喜びにつながっていくという医療本来の価値を大事にできる人材を育てたい。
 もう一つの課題は災害医療。急性期の救命・延命だけでなく、避難民の健康と生活をどう守るのかも重要な視点。今年度から開始した新カリキュラムでは災害に関連した教育活動を強化している。

安藤:十勝住民へ一言。
大日向:十勝はいつも晴れている印象があり、とても良いところ。一方で看護師や保健師、リハビリテーション職の不足などの課題も聞く。管内の高校との高大連携を一層進めるなど、医療職志望につなげるための協力支援を強めたい。地域医療の質の向上の観点から、医療に携わる人たちの学習機会の提供にも取り組んでいく。

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  • 経営企画課企画広報係