札医大の研究室から(43) 三浦哲嗣教授に聞く(十勝毎日新聞・札幌医科大学 包括連携協定事業)
三浦哲嗣(みうら・てつじ)
1955年夕張市生まれ。80年札幌医科大学医学部卒業。84年米国南アラバマ大学医学部生理学教室研究員、87年道立江差病院内科医長、札幌医科大学内科学第2講座助手、2007年同講座准教授などを経て13年より現職。18年4月より医学部長、今年4月再任。
札医大の研究室から(43) 三浦哲嗣教授に聞く 2020/05/02
安藤:医学部長再任の抱負を。
三浦:この2年、教育面では教育プログラムの質の向上に取り組んできた。今年度、国際基準による医学教育分野別評価を受審する。新たな仕組みで学生たちのパフォーマンスがどうあがるかを検証していく。特に学生の社会的・国際的な視点をどう養っていくのか、その点はまだ工夫が必要。今後さらに努力していきたい。
研究に関しては、本学医学部から共同研究を含めて毎年500~1000本の論文を出している。研究競争がますます激化する中、さらによい成果を出すための環境整備や人材育成などに取り組みたい。
安藤:開学70年を振り返り、感じることは。
三浦:開学当初から、国内の他大学にさきがけて麻酔科や胸部外科、脳神経外科、循環器内科の開設など新しい診療の取り組みが行われた。研究も積極的に行われ、現在では当たり前に治療や診断に使われているものも多い。がんの免疫療法、発がんメカニズムの解析、集学的がん治療、メタボリックシンドローム、間質性肺炎のバイオマーカー、脊髄損傷の再生医療などについて、本学の功績は大きいと言えるのではないか。
安藤:札幌医大の特徴とは。
三浦:講座間や診療科間の垣根が低く、学内協力がしやすい。また、道が設置者であることから、道の医療計画の策定や目標設置などに関わる機会も多い。今後も北海道をプラットフォームとした研究や診療について本学の果たせる役割は大きいと考えている。一方、国際競争が今後はますます盛んになる。学生たちの長期的な留学など、海外との人事交流を増やしていく必要がある。
安藤:将来の展望について。
三浦:理想像は、「タフ アンド コンピテント」。アポロ計画のフライトディレクターの言葉だが、タフさと有能さを併せ持つ人材を育てたい。そのために欠かせないのが、「健全な批判精神」と「活発な交流」。本学でもこれまでいろいろな人が交流し、切磋琢磨しながら進化してきた。失敗を恐れず新しい課題に挑戦する「タフ アンド コンピテント」な人材が、海外を含め交流しながら成長し、よりたくましい組織になっていけばと思っている。
安藤:十勝住民へ一言
三浦:地域の医療課題を解決するには、その地域の特色やニーズをおさえる必要がある。十勝をもっとよい街にするためには何が必要なのか、医療や医学教育で札幌医大が貢献できることはどんなことか、こんな研究をしてほしいなどの現場の声や要望をぜひ我々に伝えていただきたい。