札医大の研究室から(35) 大西浩文教授に聞く(十勝毎日新聞・札幌医科大学 包括連携協定事業)

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 糖尿病の予防策として、健康診査(健診)を受けることが大切と言われる。札幌医科大学医学部公衆衛生学講座の大西浩文教授に、その理由や検査結果の見方、将来糖尿病になりやすい要因、日常生活で注意することなどについて聞いた。(聞き手・安藤有紀)

大西浩文(おおにし・ひろふみ)

 1970年旭川出身。札幌医科大学医学部卒。札幌医科大学附属情報センター、米国シカゴ・ノースウェスタン大学予防医学講座などを経て、2012年札幌医科大学公衆衛生学講座准教授、17年より現職。

札医大の研究室から(35) 大西浩文教授に聞く 2019/8/23

安藤:なぜ健診が大事なのか。
大西:糖尿病は無症状で進行することが多い。早期に発見し早期に治療を受けるために健診が重要。慢性的に血糖値が高い状態が糖尿病の病態。10時間以上空腹の状態で採血し、血液1デシリットル中126ミリグラム以上、食後の血糖値で200ミリグラムを超えると糖尿病型と判定する。さらに、過去1~2カ月の血糖値の平均を見るHbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)という検査もある。1回の血液検査でも、血糖値とHbA1cの両方が糖尿病型に該当すると糖尿病と診断される。

安藤:将来的に糖尿病になりやすい要因は。
大西:私たちが行っている、集団を対象とした疫学研究では、健診の結果から将来的な病気へのかかりやすさを予測できることがわかっている。空腹時の血糖値で、1デシリットル当たり100~109ミリグラムに該当する人は、90ミリグラム未満の人に比べ約6倍、110~125ミリグラムだと約15倍も糖尿病になりやすい。また、メタボリックシンドロームとして知られる腹部肥満の人、血縁に糖尿病の人がいる場合も注意が必要。女性より男性のほうが糖尿病になりやすく、年齢、喫煙、睡眠不足なども原因となる。

安藤:日常生活で気を付けることは。
大西:肥満の人は少しでも体重を落とすこと。半年ほどかけて現体重の3~5%を落とすのを目標にするとよい。食事は甘いものを減らすより、腹八分目~七分目のように食事のカロリーを全体的に減らすイメージ。食後の高血糖を防ぐために炭水化物を控える、野菜やきのこ、海藻類などの食物繊維を多く取ることも大切。朝食を抜くと昼食・夕食後の血糖値が高くなる。3食バランス良く食べてほしい。ウオーキングなどの有酸素運動も血糖値を下げるメリットがある。もし今年の健診で異常がなかった場合でも、定期的に健診を受けてもらいたい。

安藤:十勝の住民へ一言。
大西:十勝はおいしいものが多いからか、肥満や血糖値の高い人が多いことが統計データから分かっている。帯広市のデータによると、HbA1cの高い人が全道平均よりも多い。健康寿命の延伸のためにも糖尿病には注意してほしい。また、帯広市の特定健診の受診率は、全道平均、全国平均と比べて低い。健診を受診して糖尿病の予防・管理に生かしてほしい。

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  • 経営企画課企画広報係