札医大の研究室から(18) 今野美紀教授に聞く(十勝毎日新聞・札幌医科大学 包括連携協定事業)

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 たばこは、喫煙者だけでなく受動喫煙する周囲の人にも大きな害を及ぼすことは広く知られているが、子どもの発育などには、どのような影響があるのだろう。禁煙外来に関わった看護師とともに札幌市内の小中学校で喫煙防止教育に携わる、保健医療学部看護学科看護学第2講座の今野美紀教授に話を聞いた。(聞き手・浅利圭一郎)

 


今野美紀(こんの・みき)
  1964年音更町生まれ。88年千葉大学看護学部卒業。94年札幌医科大学保健医療学部看護学科助手、99年千葉大学大学院看護学研究科博士後期課程修了。2000年札幌医科大学保健医療学部看護学科講師、04年同助教授、07年同准教授を経て12年から現職。

札医大の研究室から(18) 今野美紀教授に聞く 2018/03/09

浅利:たばこを吸う子どもの数はどうなっているのか。
今野:2012年の、北海道の中学生と高校生約5000人対象の調査によると、中学1年の2.9%、高校3年の7.9%に喫煙経験があった。道内、全国の調査でも、成人の喫煙率低下に伴って子どもの喫煙率も下がっている。

浅利:子どもへのたばこの影響(害悪)には具体的にどんなものがあるのか。
今野:子どもは大人に比べて、重度のニコチン依存になりやすく、禁煙しにくいことが知られている。例えば夏休みに1、2本吸っただけで、学校が始まったあとも吸わずにいられなくなる。また、喫煙開始年齢が低いと喫煙年数が長くなり生涯喫煙量が増えるので、がんの罹患(りかん)リスクや全死因死亡への影響が大きいと言われている。

浅利:
親や家庭環境が大きな影響を及ぼすのか。
今野:やはり、家庭での喫煙習慣が子どもに及ぼす影響は非常に大きい。乳幼児は自分でたばこの煙を避けることができない。その結果、気管支ぜんそくや虫歯、中耳炎などにかかりやすい。家庭への介入は難しいが、親側へのアプローチとして、職場で産業医が子どもへの影響を話したり、看護師が妊婦健診や乳幼児健診で喫煙習慣を尋ねたりと、小児看護の観点から取り組めることがある。
 子どもが喫煙するきっかけの多くは「友達に誘われて」「好奇心」「何となく」から。禁煙は簡単でないため、子どもが最初の1本に手を出せない、日ごろの環境づくりが大事だ。

浅利:小中学校でのたばこの影響を伝える授業はどんな内容を行っているのか。
今野:たばこが、具体的に自分の身体や日常にどんな影響を及ぼすのかを、分かりやすい例で説明している。例えば、たばこを吸ってニコチン切れになると集中力が下がり、勉強やスポーツでのパフォーマンスが下がるとか、肌のハリがなくなりシワが増えるとか、データを示しながら「たばこを吸う人生か、吸わない人生か」というのを、自ら選択してもらえるような内容で伝えている。
 さらに、友達からたばこを勧められたときの上手な返し方について、子どもたち自身に考えてもらってロールプレーイングを行うなどもしている。

浅利:十勝の住民に向けて。
今野:昨今、よく出回っている加熱式(新型)たばこも、まるで無害のように思われがちだが、ニコチンが含まれており、その量は紙巻きたばこに比べて微減であることや、禁煙外来など、正しい理解をしてもらえるよう情報提供をしている。情報リテラシーは重要だ。
 家族に喫煙者がいる子どもは、普段から自分と家族の健康を気に掛けている。家族みんなが健康に暮らしていく上で、たばことは無縁(無煙)になることを考えてもらえたらと思う。

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  • 経営企画課 企画広報係