札医大の研究室から(10) 山蔭道明教授に聞く(十勝毎日新聞・札幌医科大学 包括連携協定事業)

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  手術や、痛みの緩和などに欠かせない「麻酔」。一般に全身麻酔と局所麻酔、神経ブロックなどが知られるが、近年、その麻酔が持つ技術進歩や安全性に対して注目が集まっている。 1957年、全国で4番目、道内で初めて開講し、今年開講60周年を迎えた札幌医科大学麻酔科学講座の山蔭道明教授に聞いた。(聞き手・浅利圭一郎)
山蔭道明(やまかげ・みちあき)

 1963年室蘭市生まれ。88年札幌医科大学卒業、93年同大学院修了。94年米国ジョンズ・ホプキンス大学医学部麻酔学講座研究員。96年札幌医科大学麻酔学講座助手、2000年同講座講師を経て、09年から現職。

札医大の研究室から(10) 山蔭道明教授に聞く 2017/7/14


浅利 麻酔の安全性はどの程度まで高まっているのか。
山蔭 30年前は、患者さんが必要十分な麻酔を受けているのかを確かめるには心電図と、聴診器を用いた血圧計くらいしかなかったが、今はパルスオキシメータという機器で瞬時に血液中の酸素飽和度と、おでこにシールを貼っただけで麻酔が効いているか分かるようになった。
 麻酔薬そのものの進化と、そうしたモニターの進化によって非常に安全性が高まったといえる。


浅利 酒が強い人や痛がる人は麻酔が効きにくいという説があるが、本当か。
山蔭 アルコールを代謝する酵素があるかどうかと麻酔薬とはまったく関係がないので、たとえば酒に強いから麻酔薬が早く代謝されるなどということはない。
 麻酔の効きやすさに個人差はあるが、それもあくまで医師が想定する範囲内で、いくら投与しても効かないということはない。例えば元気で若い人は高齢者に比べて効きにくいことがあるが、それも1.5倍くらいの差で、進化したモニターを用いて患者にとって安全な量を投与することになる。


浅利 麻酔には、どのような種類があるのか。
山蔭 麻酔には吸入麻酔と静脈麻酔がある。吸入麻酔薬では脂肪組織にたまりにくいものが開発されていて、そうすると早く覚醒して病室に戻ってもらえる。静脈麻酔薬も代謝が早いものが使えるようになり、投与中は効いているが、止めるとすっと覚めるようになっている。
 以前は、術後(覚醒まで)30分程度掛かっていたが、最近では5分後にはさめて病室に戻れることが多く、術後早期に回復してもらえるようになっている。


浅利 最近の末梢神経ブロックについて。
山蔭 筋肉や神経がよく見える超音波エコーを体表から当てて、必要な部分の神経だけをブロックできるようになった。以前は、この辺りに神経が走っているだろうと予測してブロックしていたが、いまは確実に見ながら安全に行う。手や足、腹壁などのほか、腹腔鏡手術の際の穴を開けた部分だけ痛みを取ることができる。


浅利 十勝の住民に向けて。
山蔭 札医大は、道民の地域医療に貢献できるよう力を注いでいるが、どこの地域でも均てん化したレベルの医療を受けていただけるようにしたい。
 十勝であれば帯広協会病院、帯広厚生病院といった基幹病院で受けられる診療のレベルを上げるよう努力している。北海道は広いので、ドクターヘリやジェット機などで基幹病院への搬送体制を整え、そこに行けば札幌や東京と同じような医療を受けられるシステムをつくるというのが私たちの考えだ。
 

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  • 経営企画課 企画広報係