札医大の研究室から(8)畠中正光教授に聞く(十勝毎日新聞・札幌医科大学 包括連携協定事業)
普及と進化が著しい医療機器のMRI(磁気共鳴画像装置)。この装置でどのような検査が行われ、CT(コンピューター断層撮影装置)とはどう違うのか。それぞれの特徴や有用性、MRIの持つ可能性などについて放射線診断学の畠中正光教授に聞いた。(聞き手・浅利圭一郎)
畠中正光(はたけなか・まさみつ)
1960年高知県生まれ。85年九州大学医学部卒業。93年同大学大学院医学系研究科修了、医学部臨床薬理学講座助手。95年同大学生体防御医学研究所付属病院助手、2001年同病院講師。06年同大学医学部助(准)教授を経て、11年から現職。
札医大の研究室から(8) 畠中正光教授に聞く 2017/5/19
浅利:MRIでは何を診ているのか。
畠中:私たちの体内には、小さな磁石の性質を持った水素原子核が無数存在している。この磁石が、特定の周波数の電磁波を介してエナジーのやり取りをするという性質を利用して、そのエナジーの強弱を白黒のコントラストで表現し、体内の構造や状態を画像化したものがMRIだ。
浅利:CTとの違いは。
畠中:体内の構造を画像化するのは同じだが、CTは体外から放射線であるX線を照射し、体を通過したX線を反対側で計測して画像を作る。X線を使用する以上、一定の被ばくが避けられない。それに対してMRIは、電磁波を使うものの被ばくの心配がなく、その意味で安全性が高い。
浅利:MRIは、どんな検査に適しているのか。
畠中:脳や四肢、上腹部や骨盤の検査には非常に適している。造影剤を使わずに細かな血管を映し出すことも可能だ。以前は、肺や心臓などにはCTの方が適していると考えられていたが、冠動脈や心筋への血流を診ることもできるし、肺についても間質性肺炎の診断などでCTに劣らぬ画像を得られるようになっている。
検査に30分~1時間程度かかるため(CTでは数秒程度)、患者の状態が悪いときは使いづらいが、被ばくの心配がないので、繰り返し検査する必要がある場合にも適している。
浅利:MRIを使った研究はどれくらい深まっているのか。
畠中:主にがんに関する研究をしているが、最近は、MRIを通して目に見えない、光学顕微鏡的な細かな情報が得られるようになっている。それによって腫瘍の良性・悪性の区別や、悪性の場合はその程度などの予測もできようになっている。
病変が薬や放射線にどの程度反応するのかについてMRIで分かるようになる日も近いのではないか。体の現時点の状態を評価することから、将来の状態を読み解く情報を得られる技術へと進化していて、とても希望の持てる研究だ。未来と希望が見いだせる。
浅利:十勝の住民に向けて。
畠中:北海道は広くて、医療の面でも不便は多いと思う。ただ、急速にデジタル化が進んでいて、ネットワークで各地の医療機関を結ぶことができるようになっている。例えば、どこかの病院で撮影した画像を札医大に集めてカンファレンスすることもできる。IT(情報技術)を上手に活用すれば、地域が抱える医療の問題をある程度解決できる時代なので、大いに期待してもらえればと思う。