平成28年8月1日十勝毎日新聞に7月28日に本学塚本泰司理事長・学長が講演した医療セミナー「知っていますか?尿からわかる健康状態」(十勝毎日新聞社主催)についての記事が掲載されました
「血尿 喫煙者は要注意」
札幌医科大学と十勝毎日新聞社の包括連携協定事業の一環で、帯広市内で28日に開かれた医療セミナー「知っていますか?尿からわかる健康状態」(十勝毎日新聞社主催)。前立腺がんなどの研究で知られる講師の札幌医大理事長・学長、塚本泰司氏(67)の講演要旨を紹介する。 (佐藤いづみ)
まずは尿の「色」。尿が赤い、血液が混じるには2タイプある。一つは目で見て分かる「肉眼的血尿」、もう一つは顕微鏡で見ると分かる「顕微鏡的血尿」。健診で「尿潜血陽性」という言葉があるが、二つとも当てはまり、ほぼ同じものだと思って構わない。血尿はぶどう酒のように赤く、濁っているのが特徴。
尿が赤くなった場合、重要なのは他に症状があるかがポイント。肉眼的血尿があり、他に症状がない場合、中高年以上の人は膀胱(ぼうこう)がんである可能性がある。特に喫煙者は要注意。内視鏡で見つけることができるが、早期発見には肉眼的、あるいは顕微鏡的血尿が分かった時点で、すぐに病院へ行く。早期の場合、電気メスで削ることで診断と治療(施術)が同時にできる。原因は分からないが、間違いなくたばこが関係している。喫煙者は非喫煙者の2~4倍で確率が高まる。肺がんと同じ。また、化学物質、特に染料が原因とも言われる。
おしっこをする時に痛い場合は「急性膀胱炎」でこれは極めて頻度が高い。おしっこが濁る、血が混じる。犯人は大腸菌で膀胱の中で炎症を起こしている。感染症だが、O157などは型が違う。適切な抗菌薬を飲むとすぐに治る。予防は我慢しない、体を冷やさないなど。
尿管結石は七転八倒する痛み。中身はシュウ酸カルシウムが多く、表面がギザギザした軽石のようなもの。男性なら7人に1人は一生に1回かかる。主な治療法は痛みをコントロールしながら経過を見る。レーザーや衝撃波で石を壊すなど。5ミリ程度の石であれば、3ヶ月程度で9割が外に出る。さらに一度尿管結石になった人は、5年以内に2人に1人が再びなる。水分はたくさん取っておいた方がいい。ただ、お茶を過剰摂取するのはよくない。シュウ酸や動物性たんぱく質は必要以上に取らない方がいい。
大人1日の水分摂取量は2000~2500ミリリットル、尿は1000~1500ミリリットル。多尿は同3000ミリリットル以上。1日400ミリリットルや200ミリリットル以下だと乏尿、無尿となるが、これは明らかに異常、腎臓機能の低下が原因。
尿の出方で、女性の場合、くしゃみなどおなかに力を入れた場合に尿が漏れることを「腹圧性尿失禁」という。主な治療法は体操や手術。最後に、中高年男性の場合、出方が悪い場合で挙げられるのが「前立腺肥大症」。治療は薬と手術がある。手術の場合、肥大した前立腺を削るのが標準的な治療。合併症が少ないとされるレーザーなど。いずれも有効なので大きさや年齢などで決める。
がんになる人は100万人いる。男性のトップは前立腺がん。9万2600人、非常に増えている。50歳を過ぎて機会があれば、早期発見のため、PSA(前立腺特異抗原)検査を受けてもいいかなと思う。