札医大の研究室からVol.57「重度難聴に人工内耳 遠隔医療で負担軽減」

十勝毎日新聞社との包括連携協定に基づく連載企画、「札医大の研究室から Vol.57」が2026年3月10日にKACHIMAI WEB及び十勝毎日新聞紙面で配信・掲載されました。ぜひご覧ください。

 十勝毎日新聞社と包括連携協定を結ぶ札幌医科大学の研究者に講座・診療科の研究内容や成果、最新情報など身近な医療にまつわるテーマをインタビューしています。

画像スライド集

高野教授
耳鼻咽喉科・頭頸部外科学講座 高野賢一教授 

<たかの・けんいち> 1975年長野県生まれ。2001年札幌医科大医学部卒。06年同大大学院医学研究科を修了後、帯広厚生病院に勤務し、07年には帯広協会病院耳鼻咽喉科医長を務めた。米国イェール大学医学部訪問研究員などを経て、18年から現職。

補聴器では十分な効果が得られなかった人も聴力を獲得できる画期的な方法として知られる「人工内耳」。全国的に装用者が増えており、札幌医大での手術件数も20年前の2倍以上に増加した。同大では道内でいち早く人工内耳の遠隔医療にも取り組み、十勝をはじめ道内各地の患者の通院負担を大幅に軽減している。耳鼻咽喉科・頭頸部(とうけいぶ)外科学講座の高野賢一教授に遠隔医療の現状などについて聞いた。(聞き手・十勝毎日新聞社 安藤有紀)

片耳で約1時間 子どもも適用可

 -人工内耳とは。
 音の細胞・神経が密集する「蝸牛(かぎゅう)」に直接電極を入れ、聴神経に音信号を伝える人工臓器。重度・高度難聴者が対象で、耳の後ろの皮膚を3センチほど切開して手術し、髪をそる必要はほぼない。手術時間は片耳で約1時間。体重8キロ以上または1歳以上の子どもも適用可能。両耳同時に手術できる。

 手術後1週間ほどで「音入れ」をし、その後は電極の微調整を行う「プログラミング」、リハビリ、メンテナンスなどを行う。リハビリ期間には個人差があるものの、多くの場合1年程度を要する。

-人工内耳の遠隔医療とは。
 人工内耳のリハビリやプログラミングには言語聴覚士などの専門職や専用設備が必要で、定期的な調整と機器のメンテナンスも欠かせない。しかし、道内で人材・施設が整っているのはこれまで札幌と旭川のみだった。遠方在住者らにとって通院は時間・経済・身体の負担が大きく、聞こえを諦めてしまう人もいた。

 そこで、札幌医大では2018年から遠隔医療を開始した。装用者と家族の通院負担を軽減、人工内耳を使わなくなってしまう「ノンユーザー化」の減少にも役立っている。

リハビリ、メンテ スマホでも対応

-十勝との遠隔診療が行われている。
 十勝の拠点クリニックと札医大付属病院を専用端末で結び、十勝のクリニックを受診した装用者とビデオ通話をしながら遠隔で人工内耳のプログラミングを行う。あるいは、専用端末を装用者の自宅に郵送する。

 広域な十勝では医療機関が限られており、仕事や学校、持病などで通院が難しい人も多い。遠隔医療により、患者や家族から「負担が減った」と喜びの声が寄せられている。最近は専用端末ではなくスマートフォンで対応可能になりつつあり、遠隔医療は今後ますます手軽で身近なものになるだろう。

-今後の展望は。
 啓発活動に力を入れ、多くの人に人工内耳治療を知ってほしい。遠隔医療はまだ保険収載されていないが、現在、厚生労働省の助成を受けて全国でデータを集めている。データが集まれば近い将来、保険収載も見込めるはずだ。

-十勝住民へ一言。
 十勝は医療レベルの高い地域で、私自身も帯広で働いた経験から実感している。一方で、人工内耳医療のような一部の先進医療は大学病院など限られた施設に集約されているのも現状。札幌医大では道内どこに住んでいても必要な医療を身近な形で届けることを目指しており、遠隔医療もその一つ。十勝の皆さんにも安心して医療を受けてもらえるよう取り組んでいく。


2026年3月10日掲載 十勝毎日新聞記事

2026年3月10日掲載 十勝毎日新聞記事
2026年3月10日掲載 十勝毎日新聞記事(掲載許諾済)

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情報発信元
  • 経営企画課企画広報係