非侵襲的に測定した個別筋の「粘性」が 爆発的な力発揮能力と関連することを解明
~超音波せん断波イメージングによる新たな筋粘性評価の可能性~
<研究の概要>
札幌医科大学大学院保健医療学研究科の足立梨紗大学院生,同大学保健医療学部理学療法学科の小出所大樹助教,谷口圭吾教授,国立スポーツ科学センター安藤良介研究員らの研究グループは,超音波せん断波イメージングを用いて,個別の骨格筋の「粘性」を非侵襲的に評価できる可能性を示し,さらに筋の粘性係数が爆発的な力発揮能力を反映するトルク発揮率 (Rate of Torque Development:RTD)と関連することを明らかにしました.
本成果は国際学術誌「Ultrasound in Medicine and Biology」(Impact factor: 2.8(2025),SJR 2025: Q1,掲載日: 2026年8月20日)および「European Journal of Applied Physiology」(Impact factor: 2.9(2025),SJR 2025: Q1,掲載日: 2026年6月29日)に掲載されました.
本成果は,これまで主に「弾性(かたさ)」に焦点が当てられてきた筋肉の力学的特性において,「粘性」という新たな側面に着目し,その測定可能性と運動機能との関連を示したものです.筋の粘性は関節運動時の衝撃や振動を吸収するなど,いわゆる「ダンパー」のような役割を担うと考えられており,今後は運動パフォーマンスや外傷・障害予防,リハビリテーションへの応用が期待されます.
本成果は国際学術誌「Ultrasound in Medicine and Biology」(Impact factor: 2.8(2025),SJR 2025: Q1,掲載日: 2026年8月20日)および「European Journal of Applied Physiology」(Impact factor: 2.9(2025),SJR 2025: Q1,掲載日: 2026年6月29日)に掲載されました.
本成果は,これまで主に「弾性(かたさ)」に焦点が当てられてきた筋肉の力学的特性において,「粘性」という新たな側面に着目し,その測定可能性と運動機能との関連を示したものです.筋の粘性は関節運動時の衝撃や振動を吸収するなど,いわゆる「ダンパー」のような役割を担うと考えられており,今後は運動パフォーマンスや外傷・障害予防,リハビリテーションへの応用が期待されます.
<研究のポイント>
・超音波を活用した新たな「筋の粘性」評価法:
超音波せん断波イメージングから導き出される個別筋の粘性係数が,異なる速度で足関節を動かした際に生じる抵抗特性を表す「構造的減衰係数」と相関することを明らかにしました.粘性は物体を変形させる速度に応じて抵抗が変化する性質を持つことから,超音波せん断波イメージングで得られる粘性係数は,個別の骨格筋の有する粘性特性を非侵襲的に評価する指標となる可能性が示されました.
・筋の粘性は「素早い力発揮」と関連:
筋の粘性係数は,筋収縮開始後の0-50msおよび0-100msにおけるトルク発揮率(RTD)と有意な正の相関を示しました.一方,粘性係数は最大筋力(ピークトルク)とは相関しませんでした.このことから,筋の粘性は最大限の力を発揮する能力ではなく,力を素早く立ち上げる能力と関連する可能性が示されました.
超音波せん断波イメージングから導き出される個別筋の粘性係数が,異なる速度で足関節を動かした際に生じる抵抗特性を表す「構造的減衰係数」と相関することを明らかにしました.粘性は物体を変形させる速度に応じて抵抗が変化する性質を持つことから,超音波せん断波イメージングで得られる粘性係数は,個別の骨格筋の有する粘性特性を非侵襲的に評価する指標となる可能性が示されました.
・筋の粘性は「素早い力発揮」と関連:
筋の粘性係数は,筋収縮開始後の0-50msおよび0-100msにおけるトルク発揮率(RTD)と有意な正の相関を示しました.一方,粘性係数は最大筋力(ピークトルク)とは相関しませんでした.このことから,筋の粘性は最大限の力を発揮する能力ではなく,力を素早く立ち上げる能力と関連する可能性が示されました.
<研究の背景>
骨格筋は「弾性」と「粘性」の両方を備えた粘弾性体です.これまで,スポーツやリハビリテーションの分野では筋肉の「かたさ」に代表される「弾性」特性が運動機能に与える影響について多くの研究が行われてきました.また,筋肉の「粘性」は,筋を変形させる速度に依存して抵抗が変化する性質を持ち,機械的にはダンパーのような役割を果たすことが知られています.しかし,生体内において個別の筋が持つ粘性を定量的に評価することは技術的に難しく,その機能的な意義については十分に明らかになっていませんでした.特に,スプリントやジャンプなどの爆発的な運動に必要な「トルク発揮率(RTD)」や,関節運動時のエネルギー吸収・散逸に関わる「構造的減衰」に対して,個別筋の粘性がどのように寄与しているのかについては,未解明な点が多く残されていました.
そこで本研究グループは,超音波せん断波イメージングによって個別筋の粘性を評価できるかを検証するとともに,その粘性が運動機能とどのように関連するのかを検討しました.
そこで本研究グループは,超音波せん断波イメージングによって個別筋の粘性を評価できるかを検証するとともに,その粘性が運動機能とどのように関連するのかを検討しました.
<研究方法>
本研究は,健常な若年男性を対象とした2つの実験から構成されています
粘性と足関節受動底屈運動時の制動特性の検討(論文1:Kodesho et al. 2026)
対象:健常男性15名
測定部位:内側腓腹筋
手法:異なる角速度(1°/s, 5°/s, 10°/s, 20°/s)で受動的に足関節を背屈させ,足関節に生じる底屈受動トルクのピーク値と角速度の関係から「構造的減衰係数」を算出しました.また超音波せん断波イメージングを用いて筋の粘性係数,せん断弾性率,せん断波分散スロープを測定し,構造的減衰係数との関連を検討しました.
粘性と爆発的な力発揮能力の検討(論文2:Adachi et al. 2026)
対象:健常男性29名
測定部位:内側腓腹筋
手法:超音波せん断波イメージングを用いて底屈15°および0°(中間位)における筋の粘性係数とせん断弾性率を測定しました.その後,最大等尺性足関節底屈運動を行い,筋収縮開始から0-50ms(RTD50)および0-100ms(RTD100)におけるトルク発揮率を算出し,筋の粘弾性との関連を検討しました.
粘性と足関節受動底屈運動時の制動特性の検討(論文1:Kodesho et al. 2026)
対象:健常男性15名
測定部位:内側腓腹筋
手法:異なる角速度(1°/s, 5°/s, 10°/s, 20°/s)で受動的に足関節を背屈させ,足関節に生じる底屈受動トルクのピーク値と角速度の関係から「構造的減衰係数」を算出しました.また超音波せん断波イメージングを用いて筋の粘性係数,せん断弾性率,せん断波分散スロープを測定し,構造的減衰係数との関連を検討しました.
粘性と爆発的な力発揮能力の検討(論文2:Adachi et al. 2026)
対象:健常男性29名
測定部位:内側腓腹筋
手法:超音波せん断波イメージングを用いて底屈15°および0°(中間位)における筋の粘性係数とせん断弾性率を測定しました.その後,最大等尺性足関節底屈運動を行い,筋収縮開始から0-50ms(RTD50)および0-100ms(RTD100)におけるトルク発揮率を算出し,筋の粘弾性との関連を検討しました.
<研究結果>
・個別筋の粘性は関節の「減衰特性」と関連:
足関節の構造的減衰係数は,底屈15°(r = 0.652)および0°(r = 0.537)における内側腓腹筋の粘性係数と中程度の有意な正の相関を示しました.一方,弾性率やせん断波分散スロープではこのような相関は認められませんでした.この結果は,超音波せん断波イメージングで得られる粘性係数が,速度に依存して生じる関節運動時の抵抗特性を反映している可能性を示しています.
・筋の粘性は「素早い力発揮」と関連:
足関節底屈15°で測定された内側腓腹筋の粘性係数は,RTD50(r = 0.507)およびRTD100(r = 0.399)と有意な正の相関を示しました.一方,粘性係数と最大筋力(ピークトルク)との間には有意な相関が見られませんでした.このことから,筋の粘性は最大筋力そのものではなく,筋収縮開始直後における素早い力発揮能力と関連する可能性が示唆されました.
足関節の構造的減衰係数は,底屈15°(r = 0.652)および0°(r = 0.537)における内側腓腹筋の粘性係数と中程度の有意な正の相関を示しました.一方,弾性率やせん断波分散スロープではこのような相関は認められませんでした.この結果は,超音波せん断波イメージングで得られる粘性係数が,速度に依存して生じる関節運動時の抵抗特性を反映している可能性を示しています.
・筋の粘性は「素早い力発揮」と関連:
足関節底屈15°で測定された内側腓腹筋の粘性係数は,RTD50(r = 0.507)およびRTD100(r = 0.399)と有意な正の相関を示しました.一方,粘性係数と最大筋力(ピークトルク)との間には有意な相関が見られませんでした.このことから,筋の粘性は最大筋力そのものではなく,筋収縮開始直後における素早い力発揮能力と関連する可能性が示唆されました.
<今後への期待>
本研究により,超音波せん断波イメージングを用いて,個別筋の粘性特性を非侵襲的に評価できる可能性が示され,さらにその粘性係数が爆発的な力発揮能力と関連することが明らかになりました.今後はアスリートやスポーツ外傷・障害を有する対象者における筋・腱の粘弾性の特徴を明らかにするとともに,ハイパフォーマンス発揮や安全な競技復帰に向けた新たなコンディショニング指標の確立を目指します.
<謝辞>
※ハイパフォーマンススポーツセンター(HPSC)とは
ハイパフォーマンススポーツセンター(HPSC)は、オリンピック競技とパラリンピック競技を一体的に捉え、国立スポーツ科学センター(JISS)と味の素ナショナルトレーニングセンター(NTC)が持つスポーツ医・科学、情報等による研究、支援及び高度な科学的トレーニング環境を提供し、ハイパフォーマンススポーツの強化に貢献しています。
<論文情報>
【論文1】
公開雑誌:Ultrasound in Medicine & Biology
論文名: Angular Velocity Dependence of Passive Ankle Joint Torque Correlates with Viscosity Coefficient of the Medial Gastrocnemius in Males: A Step Toward Quantifying Muscle Viscosity Using Shear Wave Elastography
DOI: https://doi.org/10.1016/j.ultrasmedbio.2026.07.006
著者: Taiki Kodeshoa, b* ,Risa Adachic, Koki Ishiyamac, Kazuyoshi Kozawac, d, Gakuto Nakaoa, e, Ryosuke Andob, Keigo Taniguchia (*は責任著者)
【論文2】
公開雑誌:European Journal of Applied Physiology
論文名: Relationship between medial gastrocnemius viscosity and rate of torque development: new insights into resting muscle viscoelasticity and rapid force production
DOI: https://doi.org/10.1007/s00421-026-06312-8
著者: Risa Adachic, Taiki Kodeshoa, b, Gakuto Nakaoa, e, Ginji Narac, d, Koki Ishiyamac, Keita Sekiguchic, Junpei Sawanoc, Shota Hirayamac, Kotoka Kidac, Ryosuke Andob, Keigo Taniguchia*
(*は責任著者)
a. Department of Physical Therapy, School of Health Sciences, Sapporo Medical University, Sapporo, Hokkaido, Japan
b. Department of Sports Sciences, Japan Institute of Sports Sciences (JISS), Tokyo, Japan
c. Graduate School of Health Sciences, Sapporo Medical University, Sapporo, Hokkaido, Japan
d. Rehabilitation Center, NTT Medical Center Sapporo, Sapporo, Hokkaido, Japan
e. SPLYZA Inc, Hamamatsu, Shizuoka, Japan
公開雑誌:Ultrasound in Medicine & Biology
論文名: Angular Velocity Dependence of Passive Ankle Joint Torque Correlates with Viscosity Coefficient of the Medial Gastrocnemius in Males: A Step Toward Quantifying Muscle Viscosity Using Shear Wave Elastography
DOI: https://doi.org/10.1016/j.ultrasmedbio.2026.07.006
著者: Taiki Kodeshoa, b* ,Risa Adachic, Koki Ishiyamac, Kazuyoshi Kozawac, d, Gakuto Nakaoa, e, Ryosuke Andob, Keigo Taniguchia (*は責任著者)
【論文2】
公開雑誌:European Journal of Applied Physiology
論文名: Relationship between medial gastrocnemius viscosity and rate of torque development: new insights into resting muscle viscoelasticity and rapid force production
DOI: https://doi.org/10.1007/s00421-026-06312-8
著者: Risa Adachic, Taiki Kodeshoa, b, Gakuto Nakaoa, e, Ginji Narac, d, Koki Ishiyamac, Keita Sekiguchic, Junpei Sawanoc, Shota Hirayamac, Kotoka Kidac, Ryosuke Andob, Keigo Taniguchia*
(*は責任著者)
a. Department of Physical Therapy, School of Health Sciences, Sapporo Medical University, Sapporo, Hokkaido, Japan
b. Department of Sports Sciences, Japan Institute of Sports Sciences (JISS), Tokyo, Japan
c. Graduate School of Health Sciences, Sapporo Medical University, Sapporo, Hokkaido, Japan
d. Rehabilitation Center, NTT Medical Center Sapporo, Sapporo, Hokkaido, Japan
e. SPLYZA Inc, Hamamatsu, Shizuoka, Japan