札医大の研究室から(9)竹政教授に聞く(十勝毎日新聞・札幌医科大学 包括連携協定事業)

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  日本人の部位別罹患(りかん)数、女性の部位別死亡数がともに第1位の大腸がん。従来の開腹手術、腹腔(ふくこう)鏡手術に続いて近年注目されているのが、これまでより精密な操作が可能な手術支援ロボット「ダビンチサージカルシステム」(以下ダビンチ)による手術だ。これまでに2500例以上の大腸がんの手術経験を持ち、2013年から直腸がんの「ダビンチ手術」を手掛ける医学部消化器・総合、乳腺・内分泌外科学講座の竹政伊知朗教授に、同手術の詳細や利点、可能性などについて聞いた。(聞き手・十勝毎日新聞社 浅利圭一郎)



                  竹政伊知朗(たけまさ・いちろう)

 
1965年広島県生まれ。1993年大阪医科大学医学部卒業。2002年大阪大学大学院医学系研究科博士課程修了。同年4月法務技官医師、6月大阪大学大学院医学系研究科消化器外科助手(助教)、14年大阪大学大学院医学系研究科消化器外科診療局長、15年大阪大学大学院医学系研究科消化器外科講師を経て同年11月から現職。17年徳島大学大学院医科学教育部客員教授。


札医大の研究室から(9) 竹政伊知朗教授に聞く 2017/6/9


浅利: 「ダビンチ手術」とはどういったものか。
竹政: これまでの腹腔鏡手術の画像は2次元で奥行き感が乏しい手術だったが、アメリカのインテューティブサージカル社が製造販売する「ダビンチ」を用いた手術では、執刀医が3次元の画像を確認しながら内視鏡とロボットアームを操作して行う。
 ロボットアームには複数の関節(屈曲点)があり、手ぶれ防止機能を持つので、腹腔鏡手術に比べて可動域が広く、より精密な手術が可能になっている。

浅利: 患者にとってのメリットは。
竹政: 開腹手術に比べて傷口や出血が少ないため、術後の回復や社会復帰が早いのが大きなメリットになる。
 直腸は周囲にぼうこうや前立腺、子宮や膣(ちつ)などの臓器があり、骨盤に囲まれているため、直腸がんの手術では狭いスペースでの繊細な操作が必要になる。さらには血管や神経が網の目のように入り組んでいるため、手術の難易度が非常に高い。ダビンチ手術では、腹腔鏡や開腹手術では難しい奥深い場所まで容易に到達できるので、肛門機能や排尿機能、性機能などの機能温存や整容性の面でも大変優れている。

浅利: 普及に向けた課題は。
竹政: 現状では、大腸がんに対するダビンチ手術は保険適用されていない。このため、良いのは分かっていても、手術に踏み切れないケースは多くある。ただ、ダビンチ手術が良いと広まっていけば、近い将来保険適用されると思う。
 また、操作には十分な知識と高い技術が求められ、執刀医は関連学会の承認などを経て認定される必要がある。現在、手術見学プログラムの指導医がいてライセンス発行可能な認定施設は国内4カ所、手術可能な施設は30カ所程度しかない。医師なら誰もができるわけではなく、慎重に取り組むべき手術方法だといえる。

浅利: 十勝の住民に向けて。
竹政: 日本は長寿社会になったがゆえ、およそ2人に1人ががんになり3人に1人が亡くなっている。中でも大腸がんは、罹患数第1位の身近でとても怖い病気だが、正確な診断と適切な手術、抗がん剤治療で全国的には治療成績が向上しており、不治の病ではない。北海道でも先進的に取り組み、国内トップレベルの成績に引き上げることが私の務めだ。
 特に直腸がんは、手術の質が再発防止や術後のQOL(生活の質)にものすごく大きな影響を及ぼす。どこで手術をしてもいいということはないので、そうした疑いがあれば、まずは精密検査を受けていただきたい。もし大腸がんの診断となれば、専門的な施設で、「良い手術」を受けることが大切だ。そして、病理結果に従って必要な治療をさらに加えてもらう。それらを通して、がんで亡くなる方が1人でも減るようにしていきたい。

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  • 経営企画課 企画広報係