理事長・学長室だより -3号- 平成28年9月23日発行
はじめに
暑さに限らず今年の北海道の気象状況は、これまで異例ずくめでした。台風による記録的な大雨、洪水で大きな被害が道内各地域で発生しました。被害総額は北海道の集計分だけでも1,682億円、国が管理する道路、河川を合計すると2,000億円と報じられています。被害にあわれた方、避難生活を余儀なくされた方、農作物の被害を受けた方、すべての方々に心からお見舞い申し上げます。一刻も早い復興、復旧を願っています。
大規模な災害の場合には、医療支援も不可欠です。前回の理事長・学長室だよりには熊本地震におけるDMATチームの派遣について触れましたが、医療環境の悪化に伴う医薬品の不足、衛生環境への配慮など、通常、何気なく行っていたことが突然できなくなる状況が起きるため、日頃からの備蓄とともに連絡網の整備の重要性に改めて気付かされたところです。北海道とも協力しながら、大規模災害に際しての環境衛生面での連絡網の構築を考えておく必要があることを痛感しました。
それでは、最近の本学の動きをお知らせいたします。
定期試験の時期
特別枠出身の若手医師が地域医療の実践へ
本学医学部に特別枠で入学した皆さんが、2年間の初期臨床研修を終了し地域医療の現場で働き始めました。本年度は7名の医師が将来のキャリア形成を目指しながら、知事の指定した二次医療圏の病院に赴任しています。これらの病院の内科/総合診療科を中心とした診療科で、今後の専門医取得を目指すことになります。この制度は、2008年に始まった入学制度ですが、当初10名の入学定員は現在は15人に拡大されています。来年、本学からは、現在初期臨床研修を行っている13名が地域に赴任する予定でいます。特別枠の皆さんが専門医となり独り立ちするまでにはまだ少し時間がかかりますが、大学ではこの制度の維持と、特別枠を選んで地域医療に貢献することを志している皆さんのキャリア・アップに強く関与していきたいと思っています。皆さんが将来とも地域でその力を最大限発揮できるような環境づくりを、北海道とともに構築していきたいと思っていますので、是非現場の生の声を届けていただければと思います。
大学の連携協定
他の大学との連携協定は、研究内容の情報交換、研究者の人事交流が主ですが、自治体あるいは企業との連携事業は多彩です。大学の教員による最新の医療情報の提供にとどまらず、学生も参加するメディカル・カフェの開催など地域の人と交流する場の設定にも努めています。今年度もこれまで8回上記の事業を北海道の各地で開催しました。12月までに後4回の事業が予定されています。一方、いくつかの企業からは病院の患者さん向けのイベントの提供が予定されています。病院の患者さん向けには、札幌交響楽団のメンバーによる病院ロビーでのコンサートが毎年開催されています。つい最近も6回目のコンサートが終了したところです。この他、女性の入院患者さんにメイクアップのサービスが定期的に行われていますし、クリスマスツリーの点灯式も予定されています。入院している患者さんの気持ちが多少なりとも和らぐようなイベントを毎年提供していただいている連携協定先の企業には、感謝するところが非常に大きいものがあります。また、大学の教員が地域へ出向き、最新の医療情報を提供することができていれば、大学としての地域貢献も大変意義があることになります。外に開かれた大学であり続けるためにも、このような連携事業と地域への貢献を継続する必要があります。
地域医療基礎実習、地域密着型チーム医療実習
私も、事務局長とともに別海町/中標津町、利尻島、留萌市の実習地を訪問し、報告会や交流会に参加いたしました。学生の皆さんが地域における医療の実情を垣間見る機会として非常に有用なものであることを実感して帰ってきました。もちろん、学生時代に経験するものは全体のごく一部にすぎませんが、何よりも新鮮な目で実態を見ることは将来の地域医療の、より深い理解の第1歩となると感じました。その意味で、この実習は学生の皆さんにとって非常に重要なものになったと思いました。
もう一つ重要であると感じたのは、この実習が多くの地域の方々のご支援とご協力によって支えられているということです。地域の方々の献身的な協力なくしては、この実習は実施できません。その意味で、実習に参加した学生の皆さんは目に見えない大きな支えを十分に理解してもらいたいと思います。この理解は、将来の医療人としての糧になるはずです。その理由は、あらゆる医療施設は数多くの職種の力を結集しなければ動かず、医療人のみでは本来の役割を果たすことはできないという事実に他なりません。今回の実習が、多くの方々の御支援と御協力の上に成り立っているという理解は、将来の医療現場でも不可欠になるはずです。
平成27年度業務実績に関する評価結果が公表されました
短期留学助成事業
この助成事業は、大学院生、研究生、研究医に海外研修の機会を持ってもらい、研究あるいは教育水準の向上を図ることを目的に開始されたものです(助成金額70万上限)。時期的、年齢的に海外留学の機会が多くはない若手の大学院生、研究生、研究医に対する事業です。
平成21年度から助成を受けての派遣事業が始まっています。これまで6名の大学院生等、他がアメリカ、カナダ、フィンランドに赴いて、3か月未満の期間ではありますが研修を受けてきています。手術研修、診療見学など臨床の現場での研修も助成の対象になりますので、是非有効に活用してください。例年、応募者が少ない傾向がありますので、募集条件さえあえば採択される可能性が高いことは事実のようです。
おわりに
本年度も半分を経過しました。大学認証評価の受審に向けた「自己点検・評価報告書」の編集も11月末のエンド・ポイントを見据え、作業が佳境に入ってきています。多くの教職員の協力が必要ですので、各自大変な作業にはなりますが、ご配慮の程、お願いいたします。
附属病院は、今年度は厳しい状況が続いているようです。新しい病院の姿が見えるのももう少しのところに来ています。叡智を結集して乗り越えたいと思っています。皆さんの一言を期待しています。