理事長・学長室だより -12号- 令和元年5月7日発行

理事長・学長室だより

理事長・学長 塚本 泰司

<はじめに>

 今年度は色々な面で新しい時代の幕開けになります。新天皇が即位され、元号が平成から令和にかわりました。北海道も新知事が4月下旬に就任され新しい流れが始まります。大学も第3期目の中期計画のもと、今年度からその1年目が開始されます。残すべきものは残しつつ、「きのう」とは違う「きょう」、「きょう」とは違う「あした」を目指すことが必要と考えています。

新入生・在学生へ向けて

 4月の入学式の式辞の草稿の段階ではAppleの創業者のSteven Jobsの”connecting the dots”というフレーズを話すことを考えていましたが、時間の関係で最終的には削除しました。数日前に今年の本学の大学祭のテーマが「結」であることを知りました。学生時代に多くの点(dots)を作っておき、将来それらを「結」ぶ(connecting)ことができれば、広範囲な平面を描くことができます。まさに、入学式の式辞で言わんとしたことです。学生時代に多くの「点」を作りそれを将来の医療人としてのネットワークづくりに活用することを勧めます。
 平成30年度の国家試験の合格率は、医学部、保健医療学部とも良好な成績であったことは第2期中期計画の締めの年として喜ばしい状況でした。今後もこれらの結果が継続することを願っています。

韓国・高麗大学との大学間交流に関する覚書等の締結

 これまでの実績をさらに充実させるために、国際交流委員会が幅広く活動の輪を広げてくれています。その第一弾目が韓国・高麗大学との交流協定の締結です。去る3月11日に、韓国・高麗大学との間で、大学間の交流を定めた「覚書」と、地域医療実習や臨床実習の分野で連携する「学生交流協定」を締結しました。本学が、国際交流推進のため、海外の大学と覚書等を締結するのは、8年ぶりになります。韓国・高麗大学は、1905年に創立された私立大学で、教員は約5,000人、学生は約37,000人の韓国屈指の大学です。
 高麗大学との交流期間は5年間で、今後、教員及び学生(大学院生を含む。)の交流、共同研究、合同講義、シンポジウム、地域医療実習、臨床実習等の分野で、幅広く交流することとしております。

THE世界大学ランキング日本版2019で、本学が教育力リソースで全国6位にランクイン

 世界大学ランキングで知られる「THE世界大学ランキング 日本版」が2019年3月27日にベネッセグループより発表され、札幌医科大学が教育リソース部門で全国トップ6位にランクインしました。教育リソース、教育充実度、教育成果及び国際性の4分野で評価される総合順位では総合大学に肩を並べることはなかなか困難ですが、大学のリソースのさらなる充実を目指す後押しになると期待しています。

脊髄損傷再生医療の実用化

 本学とニプロ株式会社が共同開発した脊髄損傷に対する再生医療等製品「ステミラック注(一般的名称:ヒト(自己)骨髄由来間葉系幹細胞)」を使った治療が、世界で初めて札幌医科大学附属病院で開始されます。5月4日のNHKスペシャルでも放映されました。この治療法の概略は附属病院のホームページも閲覧できますので、是非参照していただければと思います。
 この治療は、神経再生医療学部門の本望教授のチームが30年近く継続してきた研究の成果です。まさに、大学の建学の精神である「医学・医療の攻究」を実践していただいたと思っています。
 実用化に至るまでには、ニプロ株式会社はもとより、文部科学省、厚生労働省、北海道、札幌市からも多大な協力・支援を頂きました。産・学・官の協力が非常にうまくいった典型です。
 何より、多くの脊髄損傷の患者さんが、この治療で日常生活が可能になり、社会復帰できることを願っています。

終わりに

 附属病院の医師への適用はもう少し先になるようですが、働き方改革は本年度から始まります。適切な働き方が求められている時代になっています。決められた時間内に必要な用務を行うことで、生産性を上げていくことを考えなければなりません。一方で、個人の付加価値をどのように追加し能力を向上させるかも同時に考えていかなければなりません。
 「ボーッと生きている」ことがだんだん困難になってきているようです。いずれにしても、限られた時間を有効に生かすことがますます求められていることは間違いなさそうです。
 今年度も教職員の皆さんの益々の活躍を期待しています。

 理事長・学長 塚本泰司