理事長・学長室だより -4号- 平成28年12月28日発行

理事長・学長室だより

理事長・学長 塚本 泰司

はじめに

 前回の理事長だよりでも今年の天候の異常さに触れましたが、その傾向は依然として続いているようです。
 11月下旬、12月上旬の思わぬ大雪は一時的には消失しましたが、その後は異常な降雪量をもたらした天候のために一気に積雪量が増加しました。
 冬季間は強力なシベリア高気圧と一時的には多少盛り返す太平洋高気圧がせめぎ合うという、北海道の地理学上の特徴を、改めて認識させられた日々でした。予期せぬ積雪量のため、幹線道路といえども車線数が減少し、車両の通過が妨げられているようです。その中でも、中央区は区画整理が以前(1972年の冬季オリンピック前)十分に行われなかったために、道路幅が狭くこのような積雪量になると1車線状態のところが頻発しているようです。
 歩行する場合も、車を運転する場合も事故には十分注意してください。

ニプロ株式会社「再生医療開発センター」が竣工式を終えました

 昨年11月13日に起工式を行い建設が開始されたニプロ株式会社による「再生医療開発センター」が12月23日に竣工式を終え、再生医療の実用化に向け新たな一歩が踏み出されました。
 竣工式には高橋はるみ北海道知事、秋元克広札幌市長をはじめ、この間、ご支援いただいた方々が出席されました。式に先立つ当日午前には、日本骨髄間葉系細胞治療学会の設立記念「再生医療シンポジウム」も開催され、本学神経再生医療学の本望 修教授の「脳梗塞対する医師主導治験」と題する会長講演、また附属病院長・整形外科学講座の山下 敏彦教授から「脊髄損傷に対する医師主導治験」の講演が行われました。出席した多くの参加者がこの細胞治療の将来に大いに期待を寄せる内容となっていました。
 施設においては、今後、薬事承認や規制当局による審査を経た後に、再生医療に供する骨髄間葉系幹細胞の培養が本格的に開始されます。
 当面は当大学病院のみでの治療となりますので、この治療を心待ちにされている患者さんに一刻でも早くこの治療を届けることができるように、大学として万難を排して準備していきたいと考えています。

大学基準協会の認証評価に向けた自己点検・評価の実施

 ご承知のように、大学は教育や研究の水準を常に向上させるという義務を負っていますが、そのためには教育・研究のみならずそれを支える組織やその運営、施設・設備などの状況を自ら点検・評価すること、そして7年のうちに1度、文部科学大臣の認証を受けた評価機関による評価を受審することが義務付けられています。
 本学は平成29年度に次期の評価を受けることとしており、そのため、本年度は点検・評価を行う年となっていました。「札幌医科大学自己点検評価員会」において、認証評価機関((公財)大学基準協会)が定める10の評価基準に沿って自己点検・評価を実施し、今月までに、その作業の大部分が終了しました。この間、この作業を担っていただいた多くの教員、事務局職員の皆さんに御礼申し上げます。
 点検・評価の詳細は多岐にわたりますが、10の評価基準でいえばおおむね一定の成果あるいは達成状況が得られていると判断しました。
 しかし、一部には更なる改善が必要と思われる事項もあり、今後その詳細を検討の上、改善に向けた努力をしなければならないと思っています。
 今回の評価結果は、最終的に取りまとめた後、年明け早々に認証評価機関へ提出する予定です。
 大学にはこれまで以上に社会、とりわけステークホールダーに対する説明責任が求められようになってきています。そのため、大学自らが自己点検・評価の結果を大学の質の向上に活用する仕組みを構築するとともに、その質の向上に向け不断の努力をしていく必要があります。
 教職員の皆さんの叡智を結集することで、本学を「医の知(いのち)の殿堂」にしたいと思っていますので、更なるご支援をお願いいたします。
 

社会貢献など

 北海道の企業などとの連携協定事業は継続的に行われてきており、大学で得られた情報を社会に還元することが特別でなくなってきたことは非常に歓迎すべきものです。
 今年も、これまでに本学と各企業との連携協定に基づく事業で、本学の教員が地域に出向いて行う講演が9月以降も5回行われています。大学では、時宜にかなったテーマで今後もこの事業を推進していきたいと思っています。地域の医療状況を改善するための方策にはいろいろなものが必要です。
 これらの講演以外にも、例年通り札幌交響楽団によるアンサンブルコンサート、クリスマスツリー点灯式が開催されました。ご支援を賜りました企業の皆様には改めて御礼申し上げたいと思います。

入学試験

 今年度も、11月26日の保健医療学部の推薦入学試験を皮切りに、大学入学試験が本格化します。入学試験は大学にとって極めて重要な行事であることは言うまでもありません。どのようにしたら優秀な学生に本学を希望してもらえるかは、今後も私たちの課題です。アドミッションセンターを中心に北海道の各高校への訪問など、これまでも地道な活動が行われてきました。一般入学試験の出願は年明けとなりますが、この活動の成果もあり医学部の推薦入学試験では、昨年を上回る数の志願者がありました。センター試験、一般入学試験に向けて、直接関係する教員、職員ばかりでなく大学をあげた入学試験実施体制への支援をお願いする次第です。

表彰

 佐藤昇志名誉教授(前病理学第一講座教授)が日本癌学会の長與又郎賞を受賞されました。この賞は日本癌学会で最も名誉ある賞で、大学として非常に誇らしく思います。ちなみに、過去、和田武雄先生、菊地幸吉先生、今井浩三先生の3先生がこの賞を受けられております。これまでの20名の同賞受賞のうち4名が本学の関係者であることは、本学のがん研究が突出した成果を上げてきたことに他なりません。この伝統をぜひとも継続することが、私たちに課せられている義務であることは言うまでもありません。
 氷見徹夫教授(耳鼻咽喉科学講座)が、日本学術振興会「科研費審査委員」の表彰を受けました。5,700人の中から選出されたものです。審査委員としての公平かつ科学的な視点、建設的な意見が評価されたと聞いています。
 両先生の益々のご活躍を期待するところです。

終わりに

 今年は例年になくインフルエンザの流行が早めに始まり、さらにはノロウイルス感染症も猛威を振るっています。マイコプラズマ肺炎も例年より発生患者数が多いと聞いています。附属病院を抱える大学としては、教職員の健康には他の施設に増して気がかりな点が多くあります。医療提供者が健康でいられることが何より重要です。年末年始の時期を感染症にかかることなく過ごされることを切に願っています。
 本年のご支援に感謝いたします。
 明年も教職員の皆さんにとって良い年であることを念じています。