免疫制御医学部門

免疫制御医学部門は、平成25年5月に札幌医科大学医学部附属フロンティア医学研究所に設置された比較的新しい部門です。生体防御の基盤をなす免疫システムの異常は、免疫アレルギー疾患や自己免疫疾患、腫瘍発生など数多くの難治性病態に関与しています。一方で残念ながらヒトの免疫機構の全体像は未だ解明には至っていないため、ヒト免疫システムの研究展開が望まれています。このような観点から、臨床材料やマウスモデルを用いて中枢性あるいは末梢性免疫組織の解析系を構築し、免疫病態の研究を続けてきました。抗体医薬などによる最新の免疫治療による生体への影響を明らかにするためにも、社会に還元できるような研究開発を目指しています。

スタッフ

教授 一宮 慎吾 
<所属>
 医学部附属フロンティア医学研究所 免疫制御医学部門
<研究テーマ>
 ヒト免疫システムの解明と臨床への応用
<研究活動と展望>
 多様な機能を有するリンパ球は自然免疫と適応免疫をコントロールし様々な疾患病態に関わるため、リンパ球の機能調節機構に焦点をあて研究を行っています。臨床検体に含まれているリンパ球を直接的に研究対象として、プライミングの過程やサイトカインの産生、病変局所へのホーミングの様式、極性の変化、T細胞抗原受容体(TCR)レパトアの特異性など様々な観点から解析し、臨床病態における新しいT細胞サブセットの役割などを調べています。アレルゲンや自己抗原などの病原物質に対するT細胞応答をMHCテトラマーにより追跡し、ゲノム編集技術を用いたマウスモデルも活用してあらゆるレベルから検討を重ねて臨床への応用を目指しています。免疫学の講義ではこれまでの基礎的知見に加え、新たな概念も一緒に考えていきたいです。若いひとたちの参加を心待ちにしています。
  
  
講師 亀倉 隆太 
<所属>
 医学部附属フロンティア医学研究所 免疫制御医学部門
<研究テーマ>
 ①エピイムノームに着目した免疫・アレルギー疾患の病態解明
 ②免疫・アレルギー疾患における機能性リンパ球サブセットの機能解析
<研究活動と展望>
 粘膜上皮は近年、免疫機構としても大変注目されています。さらに、近年の研究で、粘膜上皮と免疫細胞とのクロストーク(エピイムノーム)は免疫・アレルギー疾患の病態形成に重要な役割を担っていることがわかってきました。臨床検体を比較的容易に確保できる耳鼻咽喉科医としての環境とこれまでの経験を生かして、エピイムノームに着目した独創性のある研究を行い、免疫・アレルギー疾患のさらなる病態解明と治療に向けた臨床応用を目指していきたいと考えています。現在耳鼻咽喉科、免疫・リウマチ内科、呼吸器・アレルギー内科、皮膚科といった臨床各科とも共同研究を進めております。具体的には、北海道特有のシラカバ花粉症や扁桃病巣感染症(掌蹠膿疱症、IgA腎症など)、IgG4関連疾患、間質性肺炎、皮膚悪性腫瘍をターゲットとして臨床検体の解析を行っています。最終的には疾患病態の解明にとどまらず、基礎と臨床の架け橋となって、ヒト免疫が関わるトランスレーショナル研究を導いていきたいと考えています。
  

助教 高木 宏美 
<所属>
 医学部附属フロンティア医学研究所 免疫制御医学部門
<研究テーマ>
 経鼻ワクチン投与時の濾胞ヘルパーT細胞の制御機構の解明
<研究活動と展望>
 粘膜免疫を活性化させる経鼻投与型ワクチンは、上気道を感染経路とする微生物に対して非常に有効ではありますが、鼻腔粘膜組織での免疫応答機序は不明のままです。感染防御に有効なワクチンは主に高親和性の抗体産生を誘導することが知られています。この抗体産生には濾胞ヘルパーT細胞が重要な役割を担っておりますが、鼻粘膜での濾胞ヘルパーT細胞の誘導・活性化機構は明らかとなっておりません。そこで、経鼻投与時の濾胞ヘルパーT細胞の誘導機構・活性化機構を明らかにし、ワクチンの開発につながる研究を推進していきたいと考えております。