就労支援の取り組み
脳神経外科
文責:脳神経外科 脳機能センター 越智 さと子
脳神経外科は、脳神経系疾患に対し外科的治療を行い得る専門性の高い独立した基本診療科です。その守備範囲は、胎児から高齢者の、脳腫瘍、血管障害、外傷、機能、脊髄末梢神経、小児発達等幅広く、男女問わず長期的研鑽を積み、年齢を問わず新しい技術、知識の取得が必要です。手術ばかりでなく脳機能温存しよりよい予後を目指す為、画像生理機能評価、脳卒中や機能的疾患の連携チーム医療、脊髄脊椎外科、遠隔医療、再生医療や神経科学との関連領域等、様々な働き方の選択肢や需要があり変化しています。
その中で現在、同門に女性医師は6名(4 %)、子育て中5名(乳幼児あり3名)で、脳神経外科専門医4名(57%)、学位取得4名(57%)、大学院在籍2人と、みな意欲的に勤務しており、教室応援の成果とも言えます。大学病院勤務医師15名中、女性は3名(20%)。乳幼児育児中の先生は、早朝カンファレンス後の出勤、保育園迎え時間までに帰宅し寝かせつけてから残務を済ませる、等の個々工夫し、個々に対応しています。
教育システムは、男女問わず卒後7年目の専門医取得までは大学内外、道内外での研修プログラムに沿い、それ以降は大半が大学院生として研究の時間を持ち学位取得、脳卒中専門医、神経血管内治療専門医、てんかん認定医、神経内視鏡認定医、脊髄脊椎外科専門医、臨床神経生理認定医、認知症専門医、等様々な方向に専門性を伸ばします。技術習得には、頭蓋底外科や神経内視鏡、血管内治療、脳波ハンズオン等の研修機会がある他、希望によりマイクロ機器貸与により産休中在宅での訓練、育児休職中の参加も可能です。
日本脳神経外科全体では女性医師約8%、専門医の4%と、若い世代ほど増えています。女性脳外科医の歴史は30年ほどに過ぎず、将来更なる活躍が期待されます。北海道の地域特性もあり、脳外科一線病院では外傷、脳血管障害等の緊急対応や当直も多い中、妊娠、育児中の女医負担軽減と病院業務の兼ね合いは今でも難しい問題をはらみます。従って女性等医師支援は、制度というより個別対応、要望希望へのオーダーメイド対応と言えます。
本来、出産育児支援は有効な未来への投資であり、女性医師への支援が男性医師の産休、育児休暇取得への後押しにもなる等、男女を問わずwork-life balanceに変化が見られます。大企業と同様、産休育休に対応し、将来にわたり安心して専門医としての医療活動が保証される、との意識が共有されています。その実例として、一昨年に脳神経外科地方会で女性医師の働きやすい(働かせやすい)環境整備に向けたシンポジウムが企画され、女性医師5人が報告、奮闘に感銘を受けた、との声が多く聞かれました。結婚、出産、育児、介護、保育園待機問題等、否応なく困難と向き合う中で個々鍛えられた結果、患者やご家族が抱える社会的困難への配慮、時代に即した問題意識が高い、と評価された訳です。女性特有の問題への共感や理解は、女性医師の特技ともなります。術野の美しさに魅せられ、神経科学の奥深さ面白さに魅了されて等、入局を希望される女性は増えています。敷居が高いと感じる学生へ、女性研修医からの情報提供は男女問わず活躍できる分野とのアピールになり、幸い入局者が増え、臨床業務、研究、学会活動等にも、良い循環が生まれています。
生涯に渡り様々な働き方の選択肢があり、その中でどのようにライフイベントを組み込むか。まずは、医局説明会等に参加、相談、連絡をとってみてください。