肩関節診療

当教室の肩関節外科チームは北海道ではもちろん、全国的に見てもいち早く関節鏡という低侵襲手術を取り入れ、これまでに全国でも有数の手術症例数を誇っています。腱板断裂、反復性前方脱臼、不安定症、関節唇損傷、石灰性腱炎、投球障害、上腕二頭筋長頭腱脱臼、絞扼性神経障害など、そのほとんどが関節鏡手術の適応となっています。豊富な症例数をもとにこれらの疾患の長期成績や術式別の検討、また目まぐるしく進化する医療機器を利用した新しい術式の開発などの研究を行っています。

(1)一次修復不能な腱板断裂に対する鏡視下パッチ法

現在のところ、一次修復不能な腱板断裂に対する標準的な手術方法はありません。さまざまな施設でさまざまな手術法が行われているのが現状です。当科では患者さん本人の大腿筋膜パッチを用いて鏡視下に腱板修復術を行っています。従来の方法よりも手術成績の向上、再断裂率の低下を期待しています。

(2)放射状MRIを用いた診断率の検討

腱板断裂には肩甲下筋腱断裂、上腕二頭筋長頭腱損傷、関節唇損傷を合併することがあり、術中に認めれば、それに対する治療が必要となります。しかしながら、従来の診察法や画像診断では診断率が低く、術前に評価することが難しいと考えられています。当院では最新の3.0テスラMRIで従来の撮像法とは異なる放射状スライスを用いて、それぞれの損傷の有無を評価し、診断率について検討しています。

(3)人工肩関節置換術におけるpatient-specific instrument guideを用いた正確性の検討

変形性肩関節症に対して人工肩関節置換術(通常型またはリバース型)を行う際には関節窩に対して肩甲骨コンポーネントを正確な位置に設置する必要があります。その為には正確な方向へのドリルガイドの刺入が必須です。しかしながら、関節窩の変形が強い場合には正確な刺入位置の把握が困難となります。それを克服するために術前CTから正確な刺入位置を決定し、3Dプリンターを用いて患者ごとの刺入ガイドを作成することにより、正確な方向へのドリルが可能となります。