スタッフ

Staff

腫瘍内科

消化管チーム

大沼啓之 講師/岡川泰 診療医/鈴木慎人 診療医

消化管グループで担当する疾患は、科の特性から食道癌、胃癌、大腸癌等の消化管悪性腫瘍症例が大部分を占めており、これらに対する内視鏡診断・治療と薬物療法を二本の柱として診療・研究を行っています。標準治療の適切な実施は勿論の事、患者さんに更なる最良の治療を提供できる様、他科、他施設とも共同し最新の臨床試験などを行っています。消化管悪性腫瘍については、道内でも屈指の症例数、診療レベルにあると自負しております。

食道癌は内科・外科・放射線科など多岐にわたる診療科との集学的治療の重要性が特に高い癌種であり、十分な診療を提供できる施設は限られますが、我々は道内多数の基幹病院の協力の下、内視鏡症例・薬物療法症例共に屈指の食道癌症例数を誇っており、当科の特に強い分野と考えています。食道癌の治療は殆どの場面で内科医が診断・治療(内視鏡治療・薬物療法)に大きく関わることが多い疾患です。

内視鏡的治療については、徹底した病変の拾い上げのトレーニングを診療医 (希望者には研修医から)から行ってもらい、結果前述の多数の症例数の基礎となっています。現在月間4-8例ほどのESDを行っており、高齢者への適応拡大を目指した臨床研究を並行して進めています。進行病期に対してはDocetaxel、Nedaplatin、5-FU (DNF)三剤併用療法を基盤とした治療開発を行っており、切除可能な病期Ib–III症例に対する術前化学療法としてのDNF療法は奏効率82%、病理学的完全緩解32%、2年全生存割合78%と従来の5-FU、Cisplatin併用療法に対するより有効かつ安全な新規レジメンとしての可能性を示しました (Cancer Sci 2018)。手術拒否・耐術不能例や局所進行切除不能例に対するDNF療法併用根治的化学放射線療法(DNF-R)では完全緩解割合82%、生存期間中央値41か月と極めて良好な成績が得られております(Int J Radiat Oncol Biol Phys 2015)。現在DNF術前化学療法または根治的化学放射線療法後の補助療法の実施可能性、意義を検討する臨床試験や、切除不能進行例を対象とした試験を引き続き行っています。

切除不能進行再発胃癌に対しては、Docetaxel、Cisplatin、S-1併用化学療法(DCS療法)を本邦でいち早く開発し、極めて高い奏効率(87%)を示し次代の標準治療の候補と期待されました(Br J Cancer 2007, Cancer Chemother Pharmacol 2010,Cancer Chemother Pharmacol 2017)。その後本邦の様々な施設、試験グループで同療法の変法が再現性を持って良好な成績を示し、引き続き第III相試験が行われたものの、S-1+Cisplatin療法に対する優越性は示されませんでした。しかし、同試験で採用されたDCS療法は当科で開発したものより用量強度の劣るものであり、我々は副作用マネージメントに長けた腫瘍内科医が適切に同治療を行うことで、従来の標準治療を上回る利益を患者さんにもたらすことができると考え、引き続き三剤併用療法の臨床試験を行っております。特に高い奏効率が求められる術前化学療法において同療法は理想的であると考えられ、実際に重篤な周術期合併症を来すことなく高い治癒切除率を確認しております(Cancer Chemother Pharmacol 2012)。また、切除不能進行再発胃癌の根治例は従来殆ど期待できませんでしたが、我々はDCS療法が奏効し切除可能となった症例に対して根治を目的とした手術を行うことで(conversion therapy)、一部の患者さんで治癒と考えられる5年を超える長期無再発生存が得られることを報告しました(Gastric Cancer 2017)。現在胃癌におけるconversion therapyの意義を確立すべく前向きの臨床試験を行っております。

切除不能進行再発大腸癌に対しては、近年BRAF遺伝子変異陽性例や右側結腸癌などの従来予後が不良な対象に対する5-FU/LV、Oxaliplatin、Irinotecan、Bevacizumabの多剤併用療法 (FOLFOXIRI+Bmab療法)の良好な成績が報告され、世界的に標準治療の一つとみなされています。我々は点滴薬の5-FU/LVを実地臨床でより簡便に投与可能で同等の有効性を有するCapecitabineに置き換えたXELOXIRI+Bevacizumabまたは+Cetuximab療法を考案し、臨床試験として優れた成績を報告しており、現在も第II相試験として継続中です (Cancer Chemother Pharmacol 2015, Cancer Chemother Pharmacol 2017)。

その他、ダブルバルーン小腸内視鏡やカプセル内視鏡(各40例,80例 2017年)を用いた小腸疾患の検査・治療を積極的に行っています(Digestive Endoscopy 2010, Endoscopy 2009)。カプセル内視鏡については、新たな前処置法の検討や、FICEによる画像強調の有効性の検討を進めています(EIO 2014)。また、難治性放射線性直腸炎に対するアルゴンプラズマ焼灼治療では世界での有数の症例数を有し、良好な成績を報告しています (Gastrointest Endosc 2010)。

肝・胆・膵チーム(肝臓領域)

宮西浩嗣 准教授/大須賀崇裕 助教/久保智洋 助教

肝腫瘍、肝炎、肝硬変/門脈圧亢進症や、がん薬物療法中など様々な状況下での肝障害の診療をおこなっています。診断では、CT/MRIだけではなく、肝生検、血管造影検査や造影超音波検査を適応に応じて行っております。治療では、肝動脈化学塞栓療法や肝動注化学療法、ラジオ波焼灼療法、分子標的薬治療、化学療法など多岐にわたる治療法を患者さまの状態や腫瘍の拡がりに従って選択しています。肝炎の治療では、ウイルス性肝炎の薬物治療は勿論のこと、門脈圧亢進症に対する内視鏡的治療や血管造影手技を用いたカテーテル治療(B-RTO、PTOやPSEなど)を病態にあわせて選択しています 。

肝・胆・膵チーム(胆膵領域)

宮西浩嗣 准教授/吉田真誠 助教/石川和真 診療医/村松丈児 診療医

私たち札幌医科大学 腫瘍内科胆膵チームは胆膵(胆道と膵)疾患に特化して診療をしています。がんの患者様を診療することが多く、術前診断から切除不能患者様の抗がん剤治療まで行っています。2017年度は膵がん患者様36名、胆道がん患者様20名を新規に診療させて頂きました。

しかしながら、胆道・膵臓がんはいわゆる難治癌に含まれ、いまだ十分な治療成績を得ることができておりません。そのため、多施設共同で臨床試験を計画し、新たなエビデンスの創出することで、患者様の診療に役立てることを目標としております。

また、胆膵領域では黄疸や胆管炎、嚢胞感染に対する内視鏡を用いた精査・治療法が急激に発展してきており、手技や処置具が多彩です。常に知識をup dateし、精度が高くて安全な検査・処置を目指しております。最近はInterventional EUS(超音波内視鏡下胆管ドレナージや膵嚢胞ドレナージ、感染性膵壊死に対する内視鏡的ネクロゼクトミーなど)を行う機会が増加してきています。経皮処置や開腹手術は患者さんの生活の質を落とすことがありますが、Interventional EUSによりこれらの処置を回避することができますので、良い治療法だと実感しています。

2017年度の胆膵内視鏡処置実績は下記の通りです。
ERCP:173件、EUS:65件、EUS-FNA:83件、Interventional EUS:25件、DB-ERC:13件

より質の高い最善の診断・治療を提供すべく、日々研鑽しておりますので、胆道・膵臓癌でお困りの方がいらしましたら、いつでもお待ちしております。

オンコロジーチーム

高田弘一 教授/村瀬和幸 講師/杉山恵里子 診療医

オンコロジーチームは、がん腫横断的がん薬物療法を実践しています。診療科の垣根を越え、整形外科・泌尿器科・耳鼻咽喉科・口腔外科・放射線治療科等と連携し希少がん(サルコーマなど)、難治性精巣腫瘍、頭頸部癌、合併症を有する消化器癌に対するがん薬物療法(免疫療法を含む)を行っております。さらに固形がん(消化器癌を含む)に対する免疫細胞治療 (CAR-T, TCR-T療法)も開発中です(臨床試験実施中)。
また、がん遺伝子パネル検査を積極的に行い、precision oncology の臨床実装を進め、患者さまに最適で最良ながん薬物療法を提供できるよう日々努力しております。当院のがんゲノム医療が評価され、令和5年度からがんゲノム医療拠点病院に選定されました。
加えて、血液悪性腫瘍である多発性骨髄腫、悪性リンパ腫および白血病に対しても血液内科と連携し、多くの患者さまに最新の薬物療法および末梢血幹細胞移植を実施しております。