周術期口腔機能管理

口腔健康管理とは?

口腔健康管理のイメージ図
図1 口腔健康管理
口腔健康管理は、日常的な口のケアから、歯科専門職が関わる口腔内の治療までを含めみます。口腔健康管理は、口腔ケア、口腔衛生管理、口腔機能管理に分けられます。日頃から口腔内を清潔かつ機能的に良い状態に保つことが大切です。

口腔ケアとは?

口腔ケアとは患者さん自身(自分でできない場合は他の人)が行う歯磨き、うがい、口腔内保湿などの日常的なケアをさします。また、口の機能が衰えないよう、嚥下体操や唾液線マッサージ、舌・唇・頬のストレッチなどを行うことも口腔ケアに含まれます。日常の口腔ケアにより口腔内の清掃状態と口腔の機能を維持することは生活の質を維持するためにも大切です。

口腔衛生管理とは?

歯科衛生士や歯科医師が行う専門的な口腔清掃のことをさします。歯垢1gの中には数百億個の微生物が存在し、口腔内全体には約4000億個の微生物が存在し、密度は糞便以上といわれています。定期的に口腔衛生管理を受け、日常の口腔ケアと循環しながら良好な口腔内環境を維持しましょう。特に全身の治療を受ける前後に、口腔衛生管理を受けることで、口腔内の細菌が原因の合併症が抑制できる可能性があります。
口腔衛生管理のイメージ画像
図2 口腔衛生管理の実際

口腔機能管理とは?

口腔機能管理とは虫歯の治療、歯の詰め物・被せ物、入れ歯の作製を行い噛む機能を回復することや飲み込みの訓練などにより飲み込みの機能(嚥下機能)の低下を防いだりすることをさします。口腔内を衛生面だけでなく、口腔の総合的な機能も含めて歯科が管理することが近年注目されています。

周術期口腔機能管理とは?

2012年度から“周術期等口腔機能管理”が健康保険に導入されました。周術期とは、手術のまわりの時期のことを指しますが、抗がん剤や放射線による治療中も含まれます。周術期口腔機能管理では、周術期に歯科医師や歯科衛生士が患者さんの口腔衛生状態や口腔機能の状態等を評価します。全身の治療に伴い感染するリスクがある歯などの歯科治療や抜歯などを行い、全身の治療に耐えられるように準備します。
全身麻酔の手術では口腔衛生状態が悪いと術後に肺炎や重症な感染症を生じるリスクがあるため、口腔衛生や口腔機能の管理を手術の前後に行うことが重要です。
抗がん剤治療や放射線治療により抵抗力が低下すると、口腔内の細菌が原因感染症を生じることがあります。また、抗がん剤治療や放射線治療の影響で、口内炎や知覚過敏、味覚異常などを生じることがあり、患者さんごとに適切な口腔ケア方法をお教えすることが重要です。そうすることで、合併症の重症化を防ぐことが可能となります。
全身の治療前・治療中・治療後に歯科を受診し口腔内を良い状態に保つように心掛けましょう。場合によっては、かかりつけの歯科と連携を取りながら歯科治療を進めていくこともあります。

画像スライド集

合併症のイメージ図
図3 周術期に起こり得る口腔内合併症
口内炎の写真
図4 抗がん剤治療で生じた口内炎
流れ図
図5 周術期口腔機能管理の流れ