子宮頸がんの妊孕性温存療法

私たちは、妊娠・出産する能力を保ちながら
がんを治療する妊孕性温存療法に取り組んでいます。

妊孕性温存療法

私たちが取り組んでいる妊孕性温存療法とは
妊娠・出産する能力を保ちながらがんを治療することです。

子宮頸がんの進行と病期

子宮頸がんはⅠ期では子宮頸部にがんがとどまっていますが、Ⅱ期になると子宮頸部から基靱帯という組織を通じて広がり、Ⅲ期になると骨盤の壁まで達します。Ⅳ期になると周辺の臓器や肺や肝臓などの遠隔臓器にも転移します。

子宮頸がん治療と妊娠

浸潤子宮頸がん治療の流れ

子宮頸がんの進行期に対する治療法は決まっており、従来ⅠA2期以上は子宮全摘出術が標準治療とされておりました。札幌医大婦人科ではⅠB1期のがんまで子宮を温存する腟式トラケレクトミーという治療を10年以上前から取り組み、これまで約60人の患者さんに行ってきました。

頸がん0期治療内容

(2010年度:日産婦腫瘍委員会報告)

治療法 例数
円錐切除 3264 77.0
単純全摘 650 15.3
単摘+リンパ 9 0.2
準広汎全摘 35 0.8
準広汎+リンパ 12 0.3
広汎全摘 4 0.1
放射線療法 14 0.3
その他 329 5.6
4239 100.0

子宮頸部円錐切除術

子宮頸管と妊娠

子宮頸がんが発生する子宮頸部とは妊娠をしやすくするために粘液を分泌したり、妊娠した場合には腟から子宮内に細菌が入らない様にするバリヤ機能や胎児が子宮内にとどまるように物理的抵抗の役割を果たしています。手術でこれが摘出されると妊娠しにくくなったり、妊娠の維持が難しくなります。

非妊娠時

子宮頸管からは頸管粘液が分泌され、精子の膣から子宮への通過を容易にさせる

妊娠時

腟式広汎頸部摘出術

この動画は腟式トラケレクトミーを行っているところですが、病巣を腟と子宮頸部で切断し摘出し、腟と残った子宮を縫合するものです。

妊娠時の様子

妊娠時の子宮頸部

先にも述べましたが、妊娠時の子宮頸部は妊娠を維持するためには非常に重要な役割を果たします。

頸部を摘出した子宮での妊娠

しかし、トラケレクトミーで子宮頸部を摘出された子宮の場合には大事な頸部がなくなるため流産や早産のリスクが高く、妊娠してからも早産予防のための治療が必要になります。

子宮頸がんとデータ

年齢と妊娠歴

進行期と組織型

進行期はほとんどがⅠB1期です。

妊娠率

妊娠率は結婚された17名のうち12例(65%)が妊娠しています。妊娠率が高いのが腟式トラケレクトミーの特徴です。