不妊症などのQ&A

不妊症関連Q&A(15題)

  • 不妊症って何?

    一般的な夫婦が避妊をしないで2年を経過しても妊娠しない場合を不妊症といいます。ただし、夫が長期出張だとか、長い間船で航海に出ている方の場合は当てはまらないかもしれません。

  • 不妊の原因は?

    排卵障害、卵管障害、受精障害、着床障害、男性因子など原因はさまざまです。それぞれの原因に対して順を追って検査して行くことになります。また、いろいろ検査をしても原因がわからない不妊のことを原因不明不妊とか機能性不妊といいます。

  • 子宮卵管造影ってどういう検査ですか?

    子宮の入り口から造影剤(レントゲン写真で見ると白く見える薬)を注入して卵管の通過性や子宮の内腔のかたちを見る検査です。子宮の中に筋腫やポリープがあればわかることがあります。

  • 子宮鏡と卵管鏡と腹腔鏡(ラパロスコピー)の違いを教えてください。

    子宮鏡は子宮の入り口からカメラ(胃カメラのようなカメラ)を入れて子宮の内膜や卵管の開口部(子宮から卵管につながる口)をみる検査です。
    卵管鏡は卵管がつまっている患者さんに使用するのですが、卵管の開口部から卵管に挿入しそのつまりを開通させるために使用する道具です。
    腹腔鏡はお腹の中の状態をオヘソのしたの小さな切開からカメラをいれて子宮、卵管、卵巣の状態を見る検査です。また、大きさによっては子宮筋腫や卵巣腫瘍の摘出、癒着剥離などの治療もできます。

  • どうして不妊症の患者さんに腹腔鏡が必要なのでしょうか?

    体の外からの検査、例えば子宮卵管造影や、超音波、CT、MRIなどの画像検査ではお腹の中の病変、特に感染や内膜症による癒着を見つけることが困難なことがあります。その場合カメラを使って実際にお腹の中をのぞくとわかることがあります。また、腹腔鏡下に癒着を剥離したり、内膜症を焼灼したりすることができます。ただし、剥離した癒着はまた癒着してしまうことがあります。

  • 人工授精(AIH)と体外受精(IVF)はどのように違うのでしょうか?

    人工授精は夫にマスターベーションにより採取していただいた精液を処理(いい精子を集める操作)をして人工授精用の注射器を使って子宮の中に入れてあげる治療法です。夫の精子の濃度が少ない方、頚管粘液の良くない方にこの方法が選択されます。また、タイミングで妊娠できず特に原因が見つからない方にも排卵誘発剤と組み合わせたりして施行することがあります。
    体外受精も夫に精液をマスターベーションにより採取していただきますが、体外受精の場合はたまご(卵子)も患者さん自身から採取(採卵)することになります。採取した精液と卵子を同じ培養液の中に一晩置くことにより受精卵を得ることができます。受精卵を子宮に戻すことを胚移植といいます。この一連の治療を体外受精―胚移植といいます。

  • 無精子症の治療法を教えて下さい。

    無精子症の原因としては、精巣で精子が形成されていない場合と、精子は造られてはいるのですが、その通過経路に問題がある場合があります。精子が精巣で形成されていない場合は、非配偶者間人工授精(AID)の適応になります。精路に障害がある場合、最近では精巣上体から精子を採取するMESAや精巣から精子を見つけだすTESEを用いた顕微授精も行われています。

  • 顕微授精について教えてください。

    受精は精子が卵子の周囲にある透明帯を通過し、さらに卵細胞膜と融合することにより成立します。しかし、この過程のどこかに問題があり妊娠に至らないケースが報告されるようになり、精子を1匹だけ卵の細胞質のなかに注入する(ICSI)が行われるようになりました。問題点としましては、妊娠率、流産率、胎児奇形率などについては一般的な体外受精と変わらないという報告が多いようですが、夫の不妊に関係する遺伝子が子供に遺伝するという報告もされています。

  • 不妊検査について教えてください。

    まず自宅でできることは基礎体温の測定です。病院にいらした時には、順を追ってですが、夫の精液検査、頚管粘液検査、フーナーテスト、子宮卵管造影、超音波検査、その他ホルモン検査などを行います。

  • 一般的な不妊治療の流れについて教えてください。

    一般的には、検査上基質的疾患(内膜症、子宮筋腫など)があれば、その治療を行います。検査上明らかな問題なければ、タイミング指導、排卵誘発剤の使用(クロミフェン療法、HMG-MCG療法)、また同時に人工授精の併用を行い、それでも妊娠に至らない場合は、体外授精を勧めます。ただ、それぞれの治療をどのくらいの期間行うのかは医療機関で異なりますが、不妊には年齢因子が大きく関わるとされるため、早い時期に体外授精を勧める施設もあります。

  • 不妊治療で卵巣がんは増えますか?

    1992年にそのような報告がなされ問題になりましたが、現在のところ不妊治療と卵巣がんとの関係はないとされています。

  • 卵管がつまっている場合、体外受精と卵管形成術ではどちらが良いのですか?

    卵管がつまっている場合の選択肢は上記の2つです。普通のセックスで卵管を通じた妊娠を希望する場合は後者です。現在では、腹腔鏡下卵管形成術、開腹卵管形成術、卵管鏡手術があります。卵管形成術が不成功の場合は、体外受精しかありあせん。
    卵管鏡下卵管開口術は当科では、開腹で行っています。腹腔鏡でアシストしていた時に比べて成功率が格段に上昇しております。当科では、体外受精か手術治療のどちらを選択するかは、患者さんと充分相談の上決めています。

  • 多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)に対する新しい排卵誘発法を教えて下さい。

    PCOSの患者さんには高インスリン血症を示している場合があります。そのような患者さんにはインスリン抵抗性改善薬が有効な場合があります。また、乳がんの薬であるアロマターゼ・インヒビターは卵胞ホルモンの産生を抑制しますので、排卵誘発効果が期待されています。しかし、いずれも日本ではPCOSに対して保険適応にはなっておりませんし、日本での臨床データの蓄積は不十分です。これらを使用する際には、副作用も含めて主治医と充分に話し合った上で服用することが必要です。

  • 胚盤胞移植は妊娠率が高いと聞きますが、体外受精のときには必ずこれをやった方が良いのでしょうか?

    胚盤胞移植の場合の着床率が、分割卵の着床率に比べて高いことが知られています。しかし、患者さんにもよりますが、分割卵が胚盤胞になる確率は約50%と言われています。つまり、胚盤胞を目指すと、1個も胚移植できないリスクもあります。したがって、第1回目の体外受精から実施するのではなく、分割卵で着床しなかった場合に勧められます。

  • 体外受精をすると何か問題は起こりませんか?

    体外受精が増えるにつれて多胎妊娠が増加していることは事実です。また、HMGによる排卵誘発で卵巣過剰刺激症候群(卵巣がはれて、腹水がたまる)になる事もあります。これらは、いくら注意しても避けられない場合があります。また、採卵の際、お腹の中に多量出血する事や、感染の報告もありますが、極めて稀です。