関節リウマチになってしまった患者さんにしばしば質問される内容の一つに、
「どうして、私は関節リウマチになってしまったのでしょうか」という質問があります。
残念ながら、明確にお答えするのは難しいのですが、
関節リウマチになる人には共通の体質(遺伝的素因)や環境(生活習慣など)があると言われています。
例えば、関節リウマチ患者さんの3親等以内は関節リウマチを発症する確率が高いという報告があります。
双生児の研究でも一方が関節リウマチであると他方も関節リウマチになる確率が高いとされており、
遺伝的素因(体質)と関節リウマチの関係が言われています。
ただし、近しい親族に関節リウマチの人がいるからといって必ず自分が関節リウマチになるわけでもなければ、
親戚に関節リウマチの人がいなくても自分が関節リウマチになってしまうこともあります。
遺伝的素因(体質)以外に環境(生活習慣など)も発症に関与するとされています。
中でもタバコは最も発症に関与している因子とされています。
さらにはタバコは関節リウマチの関節病状を悪化させたり、
治療薬の有効性を低下させ、関節が壊れる速度も早めてしまう可能性が示唆されています。
タバコと関節リウマチの関連を示す研究はいろいろありますが、
受動喫煙でも影響も否定できない結果があったり、
禁煙により関節リウマチの発症リスクを低下させることができることを示している研究もあります。
喫煙の影響は関節リウマチだけにはとどまりませんが
総じて多くのリウマチ専門医はタバコは関節リウマチには良くないので禁煙を推奨していると思います。
そのほかにも歯周病と関節リウマチの関係も言われています。
特定の歯周病の原因菌が関節リウマチの発症に関与するとされており、
関節リウマチの患者さんには歯周病の人が多いとされています。
歯周病をよくすると関節リウマチが良くなるあるいは発症リスクを減らすということは
医学的にはまだ証明されていないようですが、
もしかしたら口の中をきれいにたもっておくことは関節リウマチへのリスクを減らすことにつながるかもしれません。
そのほかにも食事内容や肥満、ホルモンバランスの影響などが関節リウマチの発症に関与するという話もありますし、
腸内細菌の異常が関節リウマチの発症に関与している可能性も示されてきています。
これらの発症にかかわるリスクを取り除いていけばもしかしたら関節リウマチへの発症を抑制できるかもしれません。
ただし、今のところ関節リウマチの発症抑制効果が医学研究である程度はっきり示せているのは禁煙することだけです。
関節リウマチ発症抑制法や民間療法が巷には数多くあふれていますが、すべてに有効性があるのかに関しては、
まだ十分な検討ができていないところがあると思います。
それらの方法を行う場合はよくリスク・ベネフィットを考えて行う必要があると思います。
さて、ここまで多く述べましたが喫煙は医学的にはいいことはきわめて少ないので、全員に推奨してもいいかもしれませんが、
すべての人に関節リウマチになることを恐れて予防策を講じてもらうのも効率がいいとは言えないのではないかと思っています。
そこで、一つ考えるべきは個々人がどのくらい関節リウマチになってしまうリスクがあるのかということかと思います。
関節リウマチになってしまうリスクの高いと予想される人は
積極的に発症予防につとめたほうがよいかもしれません。
では、関節リウマチの発症リスクが高い人とはどのような人でしょうか。
一番簡単な見分け方は先に述べた遺伝的素因(体質)があるかどうかです。
特に1親等以内(つまり両親か子供)に関節リウマチの人がいる場合は、
関節リウマチの人がいない場合の4倍程度の発症リスクという報告があります。
近しい家族に関節リウマチの人がいる場合には
自分にも関節リウマチになる体質があると考えていいかと思います。
今のところ完全に発症抑制する方法はありませんが、
あとは生活習慣の心がけでもしかしたら関節リウマチにならずにすむのかもしれません。
もうひとつの関節リウマチの発症リスクが高い人
実は最近関節リウマチになる直前の状態を検出するもう一つの方法に注目が集まっています。
それが、関節リウマチの前段階のページで紹介した、clinically suspect arthralgia(CSA)といわれる状態です。
CSAは関節は腫れていないけれど、関節が痛い人のなかで、近親者に関節リウマチの家族歴があるかどうかや
どこの関節が痛いかなどのいくつかの基準を満たすかどうかで判定される基準で
CSAの基準を満たすと関節リウマチを発症する確率が約1年で15%程度になるといわれています。
このCSAをセルフチェックできるアプリを開発しましたので、気になる方は試してみてください。
CSAに該当する人もここにあるような関節リウマチの予防につながるような生活をおくることが、
もしかしたら、関節リウマチになるのを遅らせたり、ならずにすませてくれることにつながっていくのかもしれません。
(これに関してはまだ医学的な証明がなされていません)