pre-RAとは

関節リウマチ前段階(pre-RA)とは?

最近の研究で関節リウマチが発症する前にいくつかの段階があることがわかりました。

関節リウマチの発症とは、関節が痛くなって腫れるようになって(関節炎を起こして)、関節リウマチと診断できるようになる状態をいいます。こうなれば関節リウマチの治療が始まります。

その前の段階には例えば、関節リウマチやそれ以外の病気のどれとも診断できない状態(分類不能関節炎とよびます)があったり、関節が腫れるわけではないけれど、あちこちの関節が痛いといった状態があります。 さらにさかのぼっていけば、関節が痛くなる前に関節リウマチの発症原因になる免疫の異常がでるという状態もあります。

もちろんこれらの関節リウマチの前段階と考えられる状態の人でも全員が関節リウマチと診断されるようになるわけではなく、他の病気と診断されるようになったり、あるいは認められていた免疫の異常がなくなってしまったり、痛みが勝手によくなってしまうような人もいるでしょう。
このような前段階もあくまでものちに関節リウマチであると診断されてから初めて、今までの症状や異常が関節リウマチの前段階(pre-RAと呼びます)であったのですねといえるわけです。
ちょっと哲学的な感じでちんぷんかんぷんかもしれませんが、そのように関節リウマチになる前の状態から経過がわかっている人を時間経過で整理してみると以下の5段階(6段階目で関節リウマチになる)に分けれるのではないかとされています。
ただし、すべての関節リウマチの人がこの5段階を経るわけではありません。

なぜここでわかりづらい、pre-RAを紹介したかというと、関節リウマチになってしまったら、健康診断でいえば”要治療”の状態ですが、pre-RAは”要精査”と”要経過観察”という状態になります。pre-RAが疑われたら一度リウマチ専門医にかかって精査を受けて、治療が必要かどうか評価してもらうのがよい状態です。

関節リウマチはいかに早く気が付いてしっかりとした治療を開始するかで、未来がかわるとされています(予後がかわる)。
ただし、pre-RAをみつけるのは実はリウマチ専門医にとっても時に難しいことです。
ましてやご自身で気が付くのはかなり難しいでしょう。

そんな時は我々の開発したセルフチェックアプリを試してみてください。ヒントになるかもしれません。

 

  • 1. 遺伝要因

    関節リウマチになる人には共通の遺伝子の特徴があるとされています。
    その特徴を持っている人はもっていない人に比べれば関節リウマチになってしまうリスクが高いといわれています。
    関節リウマチの人が親族(特に二親等以内)にいると関節リウマチの発症リスクが高まるといわれているのは、
    この関節リウマチに共通の遺伝子の特徴を持っている確率が高いからです。
    しかしながら、たとえ遺伝子が全く同じ一卵性双生児(そっくりな双子)であったとしても、一方が関節リウマチであったときに、
    もう一人も関節リウマチになる確率はせいぜい30%程度とされているので、
    関節リウマチになりやすい遺伝子をもっていても、必ず関節リウマチになるというわけではないのが難しいところです。

  • 2. 環境要因(生活環境)

    1で関節リウマチになりやすい遺伝子をもっていたとしても、必ず関節リウマチになるわけではないと述べました。
    では、そのほかにも何か関節リウマチを起こす原因があるのではないかと考えられるようになりました。
    様々な調査がなされ、日常生活・ライフスタイルの中に関節リウマチを誘発する原因があるのではないかといわれるようになっています。

    現在までに、ある程度関節リウマチの発症に関係しているといわれているものの中には、
    喫煙、歯周病、ウイルス感染症、肥満などがいわれています。

    特にたばこに関しては発症にかかわるだけではなく、関節リウマチの治療の有効性も下がるといわれており、
    関節リウマチの天敵です。

  • 3. 免疫異常の出現

    1のような関節リウマチになりやすい遺伝的な特徴を持った人が、
    2で述べたような関節リウマチを誘発するような生活を送っていたりすると、
    関節リウマチに特徴的な免疫の異常が出現することがあります。
    この段階では関節は痛くもなければ腫れるということもありません。

    しばしばこのような症状のない状態で関節リウマチの免疫異常が認められることがあります。
    たとえば、健康診断で「リウマトイド因子(リウマチ因子)」が陽性であることがわかった
    あるいはそのほかの理由で病院を受診した際に関節リウマチにかかわる症状の可能性が疑われて
    関節リウマチにかかわる抗体(抗CCP抗体)を調べてそれがひっかかる(陽性)ということもあります。

    この免疫異常が出現してから比較的すぐに関節リウマチになる人もいれば、何年間もなんともない人もいます。
    さらにいえば、この免疫異常が出現しないまま関節リウマチになってしまう人もいるため、
    すべての人がこの状態になるわけでもありません。
    関節リウマチも一枚岩ではないのがまた病気の理解を難しくしているところです。

  • 4. 関節の痛みはあるけど腫れてこない状態

    たとえば近しい親族に関節リウマチの人(1があてはまり)がいて、
    ヘビースモーカーで口腔内衛生があまり保てず(2の要素があり)、
    血液検査で関節リウマチに見られるような免疫の異常がみられ始めた人(3が認められる)に、
    関節の痛みが出てくるようになってくるといよいよもって関節リウマチになりかけているのではないかと思われる状態になります。

    誤解のないように付け加えておきますが、決してすべての人がこの段階をすべて経るわけではありません。
    上記はわかりやすくするための一例と思ってください。

    4の段階は、リウマチ専門の先生が診察しても、関節の腫れがはっきりしないけれど、関節が痛かったり、こわばったりする状態です。
    MRIやエコーの検査で、異常が認められる場合もありますが、異常がはっきりとしない場合もあります。
    もちろん、関節の痛みの原因は関節リウマチに限らず、他の病気の可能性もありますので、この段階での判断は難しいところがあります。
    実際にこの段階で病院を受診される人もかなりの数いらっしゃいますが、検査を一生懸命しても、なかなか診断がつかないこともあり、
    この状態が長く続くと医師側も患者側も苦労する状態になってしまうこともあります。

    近年、このような状態の人のなかから、何とかして関節リウマチになる人を早く(効率的に)拾い上げる方法はないかという試みが
    積極的に行われるようになってきています。
    なぜかというとこの状態で関節リウマチになりそうな人を見分けられれば関節リウマチの治療をより
    早く始めることができる可能性があると考えられているからです。
    関節リウマチの説明のところにも書きましたが、関節リウマチは初期が骨破壊の進行が早いとされるので、治療は最初が肝心です。
    早く関節リウマチであるとわかることでこの大事な時期にちゃんと治療が受けられる可能性があると考えられています。

    また、もしかしたら、関節リウマチの診断がつく前の段階からでも生活習慣を変えたりすることで、
    関節リウマチになってしまうのを防いだり、遅らせたりができるのではないかとも考えられています。
    ただし、これはまだ予想の段階で具体的にどうすれば、関節リウマチにならずにすむのかということに関しては、
    積極的な研究がなされていますが、まだ科学的に有効な方法が見いだせていません。

    この4のなかでも近い未来に関節リウマチになってしまう可能性が高いといわれているのが、
    clinically suspect arthralgia(CSA)といわれる状態です。
    CSAは関節は腫れていないけれど、関節が痛い人のなかで、
    近親者に関節リウマチの家族歴があるかどうかやどこの関節が痛いかなどのいくつかの基準を満たすかどうかで判定される基準で
    CSAの基準を満たすと関節リウマチを発症する確率が約1年で15%程度になるといわれています。
    この段階で、さらに血液検査で3で述べたような免疫異常や画像検査で関節リウマチを疑わせる異常が認められると
    さらに関節リウマチを発症する確率は上がるといわれています。

    我々はこのCSAをセルフチェックできるアプリを開発しましたので、気になる方は試してみてください。
    CSAの疑いがあるのであれば、一度リウマチ専門医の先生に診てもらってもいいかもしれませんが、
    この段階ではまだ関節リウマチとは診断できませんし、なんらかの治療を開始すべきかどうかに関してはまだ答えがありません。

  • 5. 関節は腫れているが、特定の病気と診断できない状態(分類不能関節炎)

    この状態が関節リウマチの直前の状態といわれており、4の状態からさらに炎症を強める何らかの要因が加わって起こるとされます。

    この状態はたとえば、
    関節が腫れるという症状が出てからまだ期間が短い場合や
    腫れる関節が一つだけの場合、
    血液検査での異常がでにくい場合などによくあります。

    しばらくすると関節リウマチであることがわかったり、場合によってはそのほかの関節の痛みを起こす病気であることがわかったりします。
    (確率論としては関節リウマチの可能性が高いのですが、そのほかの病気でもこの状態になりえます)

    この状況が長く続き、関節の症状が強い場合には病名がはっきりしないまま治療を行うこともしばしばあります。

    この状態が続けば多くの人が病院を受診することになるかと思います。
    一方で、「年のせい」「つかいすぎだから」といって受診控えをする人もいるかもしれません。

    先に述べたようにこの状態は関節リウマチになっていく可能性がそれなりにあると思われますので、
    一度はリウマチ専門医の先生に診てもらうことをおすすめします。

  • 6. 関節リウマチの発症

    上記の状態の5段階ののちに関節リウマチを発症するとされています。

    1-5の状態は人によりその長さは様々であり、前段階に気づくことなくいきなり関節リウマチになるという場合もあります。

    関節リウマチの診断には一定の基準がありますが、その基準を満たした場合は迅速に関節リウマチの治療を受けるべきです。
    迅速な治療開始はその後の関節予後(関節破壊の予防・機能の維持)にとても重要です。
    逆にいうと、迅速な治療を受けないと、一番大事な時期に治療を受けられない可能性があります。

    ぜひ、「年のせい」「つかいすぎだから」といって受診控えせずに、リウマチ専門医の先生に診てもらいましょう。

    我々の開発した、セルフチェックアプリは関節リウマチの基準を満たすかどうかを自分である程度調べることができます。
    気になったらまずチェックしてみてください。

    繰り返しますが、アプリは診断を目的とするものではありませんので、気になる症状がある場合はちゃんと病院を受診してください。