かかりつけ医にとっての関節リウマチ診療の問題点
医療過疎地域においてかかりつけ医を担っている先生方にとって,ありとあらゆる疾患の診療に携わることは時に大きな負担となっていることかと思います.
特に関節リウマチ診療は生物学的製剤の登場によりここ20年ほどで大きく変化を遂げており,普段見慣れていない免疫抑制剤や生物学的製剤が使われており,さらには疾患あるいは治療特有のトラブルが起こりうるので,できるなら診ないで済ませたいという思いもあるかもしれません.ただ一方で関節リウマチ患者は100-400人に1人程度とされて非常に多く,かかりつけ医のところに新規発症の関節リウマチ患者が初診することも決して珍しいことではありません.
関節リウマチの診断はリウマチ因子や抗CCP抗体が測定可能となり,以前と比べれば関節リウマチの血清学的スクリーニングはより容易になりましたが,これらは関節リウマチではない日本人でも数パーセント(リウマチ因子:6.4%,抗CCP抗体:1.7%)でみられることや1),抗CCP抗体は特異度こそ高いもののその感度は患者の状態や研究により幅があり,3-8割程度とされており,これらの抗体で関節リウマチか否かを判断することはできません.これらリウマチ因子や抗CCP抗体が認められない関節リウマチは抗CCP抗体陽性の関節リウマチとは異なる臨床経過を取ることも知られているため,血清学陰性関節リウマチとあえて分けて診療にあたるリウマチ専門医もいるぐらいです.
一説にはこのような血清学陰性関節リウマチは喫煙率の低下などに伴い今後増加傾向になるということもいわれており3), 関節リウマチの診断は決して容易ではありません.特に早期の血清学陰性関節リウマチはその他の膠原病などの慢性多発性関節炎を起こす疾患との鑑別が難しくその診断にはリウマチ専門医であっても時に困難を伴います.
すべての関節リウマチ患者をリウマチ専門医が治療できれば良いのでしょうが,すべての関節リウマチ患者をカバーするにはリウマチ専門医の数は十分とは言えません.特に北海道・東北地区はリウマチ専門医が全国平均を下回っています.北海道の二次医療圏別にみるとリウマチ専門医不在の地域が複数あり,土地も広大のためリウマチ医1人あたりのカバーすべき診療範囲は広範です.そのためリウマチ専門医へのアクセスが非常に悪い場所も少なくありません.
上記の様な現状のため,かかりつけ医が関節リウマチの診療を担っている地域も少なくありません.
他のページにも掲載している通り,関節リウマチ治療およびその他の膠原病の治療も日進月歩であり,数多くのあまり聞きなれない治療薬かつ,免疫不全状態により通常とは異なる病状を起こすことも少なくない関節リウマチ患者は、かかりつけ医にとっては時に悩みの種になってしまうかもしれません.
リウマチ専門医へのアクセスがそれほど困難でない地域であればまだいいかもしれませんが,地域によっては患者さんは数百キロかけて通院しなければならないこともあります.
そのような時に,どのような症例を専門医に受診させるべきなのか,よくわからない病状に遭遇したときにどのように判断したらよいのか.そのようなことを気軽に相談できるシステムが必要と考えました.
uRMD-NETはこの点に関して2つの解決策を提案します.
①Mediiを使ったオンラインコンサルテーション
②関節リウマチ,pre-RA(特にCSA)の可能性について調べられるアプリ
これらのツールをつかってより手軽に,的確に相談しやすい環境が構築できればとねがっています.
【文献】
1) Terao C, et al. Arthritis Care Res (Hoboken) 66(12): 1818-1827, 2014
2) Mimori T, Intern Med 44(11): 1122-1126, 2005
3) Myasoedova E et al. Ann Rheum Dis 79(4): 440-444, 2020