胸部レントゲン写真上で線維化をきたす間質性肺疾患を検出するAI(エーアイ:人工知能)プログラムの開発研究

特発性肺線維症(IPF:アイピーエフ)をはじめとする進行性の線維化を伴う間質性肺疾患の患者さんに対して、抗線維化薬による早期治療が重要であると言われています(*注釈1)。しかし、間質性肺疾患を胸部レントゲン写真で検出することは容易ではなく、特に早期の病変を検出することは困難です。

そこで、当講座の研究グループはエムスリー株式会社と共同で、胸部レントゲン写真上で線維化を伴う間質性肺疾患を検出するAIプログラム(*注釈2)の開発を試みました。
線維化を伴う間質性肺疾患の患者さんおよびその他の疾患の患者さん(画像上、異常がない患者さんを含む)の胸部レントゲン画像をAIに学習させることによりプログラムを作成し、試験用の胸部レントゲン画像を用いて、その検出能を評価しました。

その結果、AIプログラムは呼吸器専門医や放射線診断医に劣らない性能で、線維化を伴う間質性肺疾患を検出できることがわかりました。
研究結果は2023年2月に国際学会雑誌European Respiratory Journalに掲載されました。(Nishikiori H et al. Eur Respir J. 2023; 61(2): 2102269)

被曝や費用の問題から胸部CT検査が全ての施設で、全ての患者さんに行われるわけではありません。それに対し、胸部レントゲン検査はほとんどの医療機関で、比較的簡便に、繰り返し行うことができます。
このAIプログラムにより、非専門医でも線維化を伴う間質性肺疾患を検出することが容易になり、患者さんにとって早期発見、早期治療につながることが期待されます。
  • (*注釈1)病気の種類、進行速度、患者さんの状態により適応が異なります。必ずしも全ての患者さんに当てはまるわけではありません。
  • (*注釈2)CAD(コンピューター検出支援)の一種であり、最終的な判断・診断は医師が行います。
レントゲン写真とCT画像
線維化をきたす間質性肺疾患の患者さんの胸部レントゲン写真と胸部CT画像
レントゲン写真でははっきりとした異常は指摘できないが、胸部CT画像では両肺にわずかな線維化の所見を認めた。
この胸部レントゲン写真をAIプログラムは高確率で「線維化をきたす間質性肺疾患」の患者さんのものだと判断した(0から1までの可能性スコアで0.853)。