肺サーファクタント蛋白質(Surfactant Protein; SP)

肺サーファクタントは、肺胞II型上皮細胞から肺胞腔内に分泌され、肺胞の表面張力を低下させることにより肺胞の虚脱を防ぎ呼吸を維持する生理活性物質です。
本学医化学講座との共同研究により、SP-AおよびSP-Dの構造・機能の解析を進める中で、これらの蛋白質は表面張力低下作用ではなく、主として自然免疫に関与することが明らかになりました。

血清マーカーの開発と臨床応用

当初、SP-AおよびSP-Dは肺胞腔内に留まり血液中には移行しないと考えられていました。しかし、当科では健常者の血液中にSP-AおよびSP-Dを初めて検出することに成功し、さらに各種呼吸器疾患における血液中の濃度を測定したところ、下の図の様に、間質性肺炎症例において著明に上昇することを見出しました。
そこで産学共同で測定法を開発、その有用性が認められ、1999年にSP-AおよびSP-Dは間質性肺炎の診断に寄与する血清マーカーとして保険収載されました。
現在、日本国内のどの医療機関でも簡単に測定することが可能となり、広く臨床の場で役立てられています。
各種呼吸器疾患における血清SP-A、SP-Dの測定
SP-A・SP-D・KL-6の血中濃度上場の機序