股関節診療

(1)変形性股関節症

病期が進行した症例では股関節部痛が強く日常生活に支障をきたす場合があります。この様な患者様には手術療法(主に人工股関節全置換術)を施行しています。我々の施設では、患者様の立場に立って以下のような方法で人工関節を施行しています。
  • 1980年代より一貫して骨セメントを使用しないセメントレス手術を行い、セメント合併症を回避しています。
  • 2006年より術後の疼痛や出血、人工股関節脱臼などの合併症を軽減させるように、筋肉や腱を温存する前側方アプローチによる低侵襲手術を行っています。これにより、術後の人工関節の脱臼が減少し、早期からの歩行が可能となっています。結果的に入院期間が短縮されていますが、術後の歩行姿勢の改善や安全な日常生活動作が獲得されてからの退院としています。闇雲に短い入院期間は設定していません。
  • 低侵襲手術をより確実にするため、海外や国内の手術見学や臨床に直結する解剖などの基礎的な研究も同時に行っています。
  • 人工関節の合併症の一つであるゆるみによる再置換術を可能な限り少なくするよう、摩耗の少ないポリエチレンを関節面に使用しています。また、近年では骨温存を計るべく大腿骨には温存型のステムや短いタイプのステムを用いることで、より低侵襲の手術を目指しています。

(2)臼蓋形成不全(寛骨臼形成不全)

主に股関節の屋根が十分覆われていない関節のことをこのように総称しています。治療方法は、下肢の筋力訓練などの保存療法や手術療法などがあります。手術療法には、大腿骨や骨盤側の骨切りを行う方法があります。我々は、主に骨盤側(臼蓋)を3次元的に骨切りする方法(寛骨臼回転骨切り術)を行っています。これにより屋根のかぶさりが得られ、疼痛が軽減します。入院期間は少し長くなりますが、長期間の疼痛の改善が見込まれます。近年では、手術前にコンピュータシミレーションを施行したり、手術中関節鏡カメラを用いたりして、より正確な手術を行うように努めています。

(3)大腿骨頭壊死症

青壮年期に発生する大腿骨頭が壊死する病気です。誘因として、ステロイド、アルコールなど様々な原因が示唆されていますが、未だ不明な点も多いのが現状です。我々は、それらを解明すべく多くの基礎実験を行っており、その研究結果が少しずつ明らかとなってきました。今後、病気の原因解明に役立ち、この病気を予防できればと日々努めています。治療は免荷などの保存療法もありますが、壊死により骨頭が壊れると疼痛が増強し、歩行困難や日常生活に支障をきたすことがあり、手術療法により治療することがあります。手術療法には病期にもよりますが、自分の骨頭の健常部を荷重部に回転させる大腿骨頭回転骨切り術という方法があります。これにより関節を温存して長期的な疼痛の改善が見込まれます。その他破壊がかなり進行している場合は、人工股関節全置換術を施行することもあります。

(4)大腿骨寛骨臼インピンジメント(FAI)

股関節の運動時に骨盤と大腿骨が衝突し、関節唇の断裂や剥離、骨棘などの形成が見られる病態です。スポーツや重労働など激しい動きをする方に多いとされておりますが、近年では骨性の解剖学的異常などにより生じている可能性も示唆されており、診断方法や治療方法などにも注目されている領域です。我々は、関節唇に照準を合わせたMRIなどを用いて総合的に診断しています。以前から関節鏡を用いた治療を行っており、近年では関節唇の修復や再建なども施行しています。当科は股関節鏡関連の治療経験は国内でも多く、その研究や発表も国内外で行っています。長期的な治療効果は今後期待されるところです。

(5)先天性股関節脱臼

子宮内での胎児の体勢異常などにより、先天的に股関節が脱臼している状態をいいます。治療は主に抱き方指導や装具療法などの保存療法が中心となります。装具療法ではリーメンビューゲルというバンドを2-4ヵ月間装着します。この治療により大部分の赤ちゃんの股関節は整復(元の位置に戻る)されますが、それでも改善しない場合は、入院のうえ牽引療法を施行します。最終的にどうしても戻らない場合は、手術療法により整復することも稀にあります。