臨床研究

脊椎グループ

(1)骨髄間葉系幹細胞を用いた脊髄損傷再生医療の臨床試験

治療の流れ図
当教室では、本学の神経再生医療学部門 本望修教授との共同研究による脊髄損傷に対する骨髄間葉系細胞を用いた再生医療の臨床治験を行っております。この治療法を行っているのは、国内で当教室のみであり、日本全国からのエントリーを受け付けております。

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(2)顕微鏡、内視鏡を用いた低侵襲脊椎手術の治療成績の検討

手術中の写真
当教室の脊椎外科では、術後の早期回復を目指して顕微鏡や内視鏡を用いた新しい低侵襲手術を導入しております。これらの術式における術後疼痛の程度や社会復帰の時期、長期臨床成績、術後のアライメントの変化等についての 臨床研究を行っております。

(3)慢性腰痛患者に関する臨床研究

臨床研究イメージ写真
当教室で行っている慢性腰痛外来患者の病態解明や治療法確立のため、様々な臨床研究を行っております。慢性腰痛患者における脊柱、骨盤アライメントや治療薬選択に関する研究や、放射線部との共同研究で慢性腰痛と腰椎椎間板のMRI T2値に関する研究、Proton MR spectroscopyを用いた慢性腰痛患者の傍脊柱筋の脂肪量の解析等を行っております。

(4)MRI T2値による神経鞘腫と髄膜種の鑑別

(5)頚部CTによるC7横突孔と椎骨動脈の走行に関する研究

(6)スポーツ外来での腰痛患者の病態解析

(7)後縦靭帯骨化症と肥満の関連に関する研究

(8)骨粗鬆症性椎体骨折偽関節に対する手術治療選択に関する研究

手外科・肘関節

(1)上腕骨外上顆炎の病態解明

イメージ写真
上腕骨外上顆炎は別名テニス肘ともよばれ、肘外側部痛をおこす頻度の高い疾患である。同部位に付着している短橈側手根伸筋起始部における過負荷、微小断裂にともなう病的変化が原因と考えられてきた。しかし、滑膜ひだ病変や輪状靭帯の狭窄など肘関節内病変の関与も指摘されており、原因病態についてはいまだに定説が確立されていない。当科ではこれらの病態を解明するため、肘関節の解剖学的、組織学的研究をおこなっている。またこれらの研究成果にもとずいた肘関節鏡視下手術を行い良好な術後成績をあげている。

(2)肘部管症候群の病態解明

イメージ写真
肘部管症候群の病態として肘部管内における尺骨神経の過度の圧迫や伸展が原因であると考えられてきた。当科では肘部管症候群患者における肘部管内の内圧値に関する研究をおこない、肘部管圧力値が肘屈曲時に有意に上昇することを証明した。特に変形性肘関節症にともなう肘部管症候群においてその傾向が顕著であり、そのため尺骨神経の著明な圧迫がおきると考えられた。

(3)拘扼性末梢神経障害における拡散強調MRIを用いた病態診断の試み

拡散強調MRI検査は脳外科領域で脳血管障害の早期発見に有用な検査法として、すでに臨床応用されている。当科では放射線科と共同で、手根管症候群や肘部管症候群における正中神経、尺骨神経を拡散強調MRIを用いて撮影し、末梢神経障害の早期発見に有用な検査法となる可能性について研究を続けている。

(4)先天異常手の治療と病態解明

先天異常手には母指多指症や形成不全、合短指症、屈指症などさまざまな疾患がある。当科では手術治療だけでなく、長期にわたる経過観察と機能評価を行っている。多くの先天異常手で、治療成績と病態解明に関する研究についてまとめられており、30年以上の実績がある。機能評価の一つとして、つまみ機能は母指が非常に重要な役割を果たすことが知られているが、functional dexterity testを用いた評価が有用であることを報告している。

肩関節外科

当教室の肩関節外科チームは北海道ではもちろん、全国的に見てもいち早く関節鏡という低侵襲手術を取り入れ、これまでに全国でも有数の手術症例数を誇っています。腱板断裂、反復性前方脱臼、不安定症、関節唇損傷、石灰性腱炎、投球障害、上腕二頭筋長頭腱脱臼、絞扼性神経障害など、そのほとんどが関節鏡手術の適応となっています。豊富な症例数をもとにこれらの疾患の長期成績や術式別の検討、また目まぐるしく進化する医療機器を利用した新しい術式の開発などの研究を行っています。

(1)一次修復不能な腱板断裂に対する鏡視下パッチ法

現在のところ、一次修復不能な腱板断裂に対する標準的な手術方法はありません。さまざまな施設でさまざまな手術法が行われているのが現状です。当科では患者さん本人の大腿筋膜パッチを用いて鏡視下に腱板修復術を行っています。従来の方法よりも手術成績の向上、再断裂率の低下を期待しています。

(2)放射状MRIを用いた診断率の検討

腱板断裂には肩甲下筋腱断裂、上腕二頭筋長頭腱損傷、関節唇損傷を合併することがあり、術中に認めれば、それに対する治療が必要となります。しかしながら、従来の診察法や画像診断では診断率が低く、術前に評価することが難しいと考えられています。当院では最新の3.0テスラMRIで従来の撮像法とは異なる放射状スライスを用いて、それぞれの損傷の有無を評価し、診断率について検討しています。

(3)人工肩関節置換術におけるpatient-specific instrument guideを用いた正確性の検討

変形性肩関節症に対して人工肩関節置換術(通常型またはリバース型)を行う際には関節窩に対して肩甲骨コンポーネントを正確な位置に設置する必要があります。その為には正確な方向へのドリルガイドの刺入が必須です。しかしながら、関節窩の変形が強い場合には正確な刺入位置の把握が困難となります。それを克服するために術前CTから正確な刺入位置を決定し、3Dプリンターを用いて患者ごとの刺入ガイドを作成することにより、正確な方向へのドリルが可能となります。

膝関節疾患

(1)変形性膝関節症

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前十字靭帯温存型人工膝関節
変形性膝関節症に対して前十字靭帯温存型人工膝関節を導入し、正常の膝により近い関節安定性と関節運動の獲得を目指しています。従来型の人工膝関節では痛みや違和感などの問題が生じやすい階段昇降動作を中心に、膝関節機能の臨床評価を行っています。

(2)膝前十字靭帯損傷

膝前十字靭帯損傷に対しては解剖学的再建術に取り組み、グラフトの違い(膝蓋腱、半腱様筋腱)による臨床成績の比較を行っています。特に患者立脚型評価法を導入し、それを用いた研究を実施しています。

(3)半月損傷

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半月損傷に対しては仮想荷重3D-MRI撮影法を開発し、断裂パターンによる形態変化や術後の評価に取り組んでいます。手術は鏡視下半月縫合術を積極的に行い、半月温存に役立てることを目的として術式の改善に取り組んでいます。

(4)膝関節周囲の骨切り術

O脚やX脚に伴う痛みの治療には、当科では骨切り術を実施しています。適切な骨切りとアライメント矯正、それに伴う痛みの評価を検討しより良い術式改善に取り組んでいます。

足の外科

足関節外側靭帯損傷

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3D-MRIによる足関節外側靭帯評価
足関節外側靭帯損傷の重症例に対しては関節鏡下靭帯修復術を取り入れています。靭帯損傷の評価には3D-MRIを応用しています。3.0T-MRIを撮影し再構成することで前距腓靭帯と踵腓靭帯の描出が明瞭となり、損傷の程度や治療効果の判定に活かされています。

変形性足関節症と外反母趾

変形性足関節症と外反母趾に対する手術治療については日本足の外科学会主導の多施設共同研究をはじめ、全国の大学とともに治療成績の評価を行っています。

骨軟部腫瘍

骨軟部腫瘍の治療成績をさらに改善するために、以下の臨床研究を行っております。

(1)肉腫幹細胞の分離と新規標的抗原の探索

骨軟部肉腫から細胞株の樹立、肉腫幹細胞の分離と解析を行い、肉腫幹細胞を標的とした免疫療法の確立を目指しています。

(2)免疫記憶幹細胞を用いた新しい免疫療法の開発

抗癌剤排出・増殖・分化能を有する新しい免疫記憶幹細胞としてYoung memory T細胞(TYM)を発見し、TYM細胞を用いた新しい免疫療法の開発を目指しています。

(3)滑膜肉腫、骨肉腫に対するがんペプチド療法

症例図
高悪性度骨軟部腫瘍である、滑膜肉腫と骨肉腫症例に対して、免疫療法であるがんペプチド療法の臨床試験を行っております。ペプチドは腫瘍特異性の高いペプチドを設計し、臨床試験に用いております。滑膜肉腫に対しては第1相臨床試験が終了し、新規の臨床試験を計画中です。骨肉腫に対しては、現在第1相臨床試験中で、日本全国より患者様の紹介を頂いております。

(4)粘液線維肉腫における安全な切除縁を獲得するための研究

術後の局所再発率が高い粘液線維肉腫の腫瘍進展範囲をMRIなどで詳細に検討することで、腫瘍の局所浸潤を評価し、安全な切除縁を決定する研究を行っております(図2)。また粘液線維肉腫における再発・予後因子マーカーの検索も行っています(図3)。
図2 MRI T2 mappingによる切除範囲の設定
図3 粘液線維肉腫における予後予測因子の検討

(5)高悪性度骨軟部腫瘍に対する標準的治療法の確立に関する研究

Japan Clinical Oncology Group (JCOG)による、骨肉腫に対する化学療法のランダム化第III相試験JCOG0905、悪性軟部腫瘍に対する術前術後化学療法のランダム化第II/III相試験JCOG1306、およびそれらの附随研究試験に参加しております。

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