札幌医科大学医学部 整形外科学講座
基礎研究
 脊椎・電気生理グループ
脊椎・電気生理グループ脊柱・関節における感覚受容器の神経生理学、痛みの発生メカニズム

 札幌医大整形外科では、これまで電気生理学的手法を用いて、椎間関節や椎間板などの脊椎構成要素、肩関節、足関節などにおける機械的感覚受容器の分布や生理学的特性についての研究を行ってきました。感覚受容器はその生理学的特性により、固有感覚受容器と侵害受容器に分けられます。固有感覚受容器の研究は、脊柱や四肢の関節の運動制御システムの解明につながり、障害予防やパフォーマンス向上など、スポーツ医学やリハビリテーション医学の領域に応用できると考えられます。一方、侵害受容システムの解析では、痛みの受容や伝達機構を明らかにすることができ、難治性とされる慢性疼痛のメカニズムの解明に寄与できると考えています。
 また近年は腰椎疾患においてしばしばみられる神経根性疼痛について、疼痛発生のメカニズムや、そこにおける交感神経の関与についての研究を、腰部神経根絞扼モデルラットを用いて行っています。
 骨軟部腫瘍グループ
骨軟部腫瘍グループ メラノーマでは、近年がんワクチン療法の臨床試験が広く行われています。しかし骨肉腫を始めとした骨軟部肉腫におけるがんワクチン療法の研究は残念ながら非常に限られています。そこで私たちは本学第一病 理学教室と共同で骨軟部肉腫に対するがんワクチン療法の開発を目指して基礎的研究を続けています。
 現在は、高悪性度軟部肉腫のひとつである滑膜肉腫に高頻度に存在する転座融合遺伝子SYT-SSXを標的としたがんワクチン療法と、骨肉腫患者に対するがんワクチン療法の開発を行っています。滑膜肉腫患者に対するSYT-SSXペプチドがんワクチン療法はすでに第1相臨床試験を行っています。
 また、私たちは、本学附属病院病理部と共同で、診断に苦慮することの多い骨軟部腫瘍に関して、診断の一致率が高くなるように組織形態学的な指標を作成し検討を行ったり、FISH (fluorescence in situ hybridization)解析を用いて遺伝子学的な検索を行っています。FISHは特に特異的転座融合遺伝子を持つ腫瘍の病理診断に大変有用であ ることが明らかになってきました。
 下肢・バイオメカニクスグループ
下肢・バイオメカニクスグループ 我々は未固定凍結標本を使用して、運動器の機能解剖や動的解析を行っています。磁気による3次元計測機器を用いて精密な骨運動を測定し、足関節の安定に働く腓骨の役割を評価したり、靭帯断裂に伴う足関節の不安定性を評価してきました。今後は本邦でも最近問題となっている後脛骨筋腱機能不全による後天性偏平足の治療と予防を最終目標とし、荷重に伴う足アーチの変位測定や後脛骨筋腱の力学的解析をすすめていく予定です。
 その他にも膝関節、手関節、肩関節の動的解析、肢位による神経の伸張率の解析、靭帯の強度試験等の様々なテーマで研究をしています。これらの研究成果を日本や海外の学会で発表しています。 臨床の問題点に直結した研究を行うことにより、病態の解明と治療方法の開発をすすめています。これらの基礎的研究を行うことで、より良い治療につながるよう努力しています。
 骨代謝グループ
骨代謝グループ

 日本の骨粗鬆症患者は約1千万人といわれ、治療が最も必要な骨代謝疾患である。そのため骨代謝領域における最近の研究進歩は著しく、当科でもいくつかの研究を進めている。
(1)ヒト由来の骨芽細胞様株を使用した培養システムを樹立し、培養細胞を用いた実験で骨芽細胞の分化や石灰化過程に関与する分子の検討をおこなっている。最近、細胞外基質蛋白の1つであるテトラネクチンが骨形成に関与することを明らかにした。現在、我々が樹立した遺伝子欠損マウスを用いてヒトの骨代謝過程におけるテトラネクチンの役割を検討している。
(2)細胞間結合のひとつであるタイト結合の骨における役割は不明である。最近、我々は骨芽細胞がタイト結合関連蛋白を発現し、分化過程においてその発現が変化することを発見した。さらに、ビタミンD受容体遺伝子欠損マウスを用いた研究では腸上皮細胞上のビタミンD受容体を介しタイト結合関連蛋白の発現調節を行い、カルシウム吸収の制御していることを示した。これらの研究は、骨粗鬆症・骨代謝異常疾患の新たな病態として興味深い。
(3)抗がん剤としての研究過程で骨への影響があることが発見されたリベロマイシンAは、成熟破骨細胞にアポトーシスを増加させる。われわれは卵巣摘除マウスを用い、リベロマイシンAの持続投与を行ったところ、骨量減少の抑制が確認され、治療薬として有用である可能性が示唆された。
(4)閉経後骨粗鬆症患者の診断ツールを作成するために、患者血漿を用いて、近年発達しているプロテオミクスを用いて行っている。
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