平成23年度札幌医科大学入学式・大学院入学式 式辞

平成23年度入学式

平成23年度札幌医科大学入学式・大学院入学式のようす


平成23年度 札幌医科大学入学式・大学院入学式 式辞

 
本日ここに、平成23年度札幌医科大学医学部及び保健医療学部、並びに大学院医学研究科及び保健医療学研究科の入学式を挙行するにあたり、大学を代表して、式辞を申し上げます。
本日の入学式に、ご多忙のところご出席いただきました  北海道知事 高橋はるみ様 代理の副知事 多田健一郎様、北海道議会議長 石井孝一様、札幌医科大学後援会長 秋野公孝様 をはじめ、ご来賓の皆様に、厚く御礼申し上げます。 

去る3月11日、東日本大震災が発生し、地震・津波に加え福島第一原子力発電所の深刻な事故など、大変大きな被害となりました。被災されました皆様に、心よりお見舞いを申し上げます。本学におきましても既に災害派遣医療二チームの派遣に続き、岩手県宮古市への医療救護班の継続的な派遣、震災遺族支援活動、患者受け入れなどの取組を行っておりますが、今後とも現地の要望などを踏まえ、できる限りの支援を続けて参りたいと考えております。

さて、この度、札幌医科大学へ入学されました学生の諸君、誠におめでとうございます。諸君の入学をお祝いし、大学をあげて歓迎いたします。本日の慶びにいたる道のりを支え、励まし、導いてこられた御両親をはじめ、御家族の皆様にも心からお祝い申し上げます。 
諸君は、医師あるいは看護師、理学療法士、作業療法士を目指して本学を志し、入学の栄冠を勝ち得ました。喜びと期待に満ち溢れている現在の心境と推察致します。

札幌医科大学は、北海道立の大学として、1950年に創設され、昨年創立60周年、前身の道立女子医学専門学校からは創基65周年を迎えました。この間、札幌医科大学は北海道における最先端の医学と医療を担い、地域医療に貢献する優秀な人材を多数送り出してまいりました。そして、現在、医学部、保健医療学部の卒業生の大半は、北海道各地に根をおろし、最新の医学・保健医療学の知識、技術に基づいて、第一線で活躍しており、その数(かず)は、これまでに約七千五百名にのぼります。この大学で、「進取の精神と自由闊達な気風」そして「医学・医療の攻究と地域医療への貢献」という建学の精神を心に深く刻み、医学あるいは保健医療学を学んでいただきたいと思います。

この数年、日本の大学、特に医療系大学は大きな変革の潮流の中にあります。国の政策としてのライフサイエンス研究の支援と臨床への応用促進には多くの予算が投入され、本学における脳梗塞の神経再生治療や癌ワクチンも含めて先端的な研究が推進されております。一方で、多くのメディアにも紹介されておりますように、医師の卒後研修必修化の地域医療への大きな影響は地方における医師不足として全国的な社会現象となっており、看護師不足も深刻な問題となっております。

本学は道立の医科大学であり、道民の皆様の支援により成り立っており、医学部、保健医療学部の教員、スタッフと卒業生が地域医療を皆で支えていくことが、道民の皆様から強く求められております。地域医療崩壊の問題を含めて、日本の医療の将来には私自身少なからず不安を抱いておりました。一方で、今回の大震災で日本はかつて無い事態に直面しておりますが、若い方々を含めて国民の皆様の一致した対応を見ていますと、やはり日本は違う、日本はすごいという思いが強くなっております。地域医療もこのような時だからこそ原点に帰って考えてみるよい機会ではないでしょうか。医学部の場合なら、諸君の一人一人の力が集約されて百十人がまとまると、大変大きな力になり、地域医療は大きく前進します。今回の大震災は、このようなことまで私たちに考えさせてくれる大きなメッセージを発してくれていると思います。
この札幌医科大学を選んで入学された新入生の諸君は、大震災の年に入学したからこそ感じること、学べることがあります。札幌医科大学の建学の精神の継承者として、新しい医学と医療、そして道民の健康を守るパイオニアとして、大きく羽ばたくことを期待しています。そして、私達も諸君と一緒になって、様々な課題解決に向かって取り組んで参ります。

さて、学生の諸君は、4年後または6年後には、医師、看護師、理学療法士、作業療法士として、「ヒトのいのち」に直接携わる職業につきます。やりがいのある尊い仕事ですが大変厳しい職業でもあります。本学は、幸い、今年の医師国家試験の合格率は96.2%で全国4位、看護師国家試験は100%、理学療法士、作業療法士も高い合格率を得ております。
また、最近の報道にも紹介されておりますように、北海道や道議会の御理解により今後、具体的な機能や整備内容を盛り込んだ新キャンパス構想の検討がスタートする予定です。教育棟、研究所、保健医療学部棟、病院など、より教育、研究、臨床を進めやすい新しい環境の整備に取りかかりたいと考えております。
このような勉学環境において、諸君は、積極的に教員から知識や経験を引き出し、人生の先輩でもあるアドバイザーの先生と、悩みだけではなく、色々な事を話す事も有意義です。積極的に行動し、貪欲に吸収し、人間としての力を高めてください。
医療人にとって最も特徴的な点は、生涯勉強、研鑽が続くという点です。そのような下地を学生時代にしっかり作っていただきたいと思います。

次に、大学院は我国の科学技術の先端を切り開く人材を育成する重要な機関であります。大学院へ進学した諸君の勉学・研究は、国際的スケールの中で、高いレベルを目指すものでなければなりません。幸い、本学が一地方公立大学でありながら、研究面でも大きく評価されておりますのは、がん研究、免疫研究、再生医学などの分野での優れた実績によるものです。このように研究レベルの高い本学大学院で諸君には世界に通用する一線級の研究を是非成し遂げていただきたいと祈念致します。
本日、私は、札幌医科大学及び北海道の医療の将来を担う諸君に、この大震災の年に入学した諸君に、願いと期待を込めてお話しいたしました。道民の皆様に期待される札幌医科大学を諸君が創出するという気概をもって、本学の学生生活をスタートしていただきたいと思います。
諸君のご健闘を心よりお祈りいたします。

平成23年4月8日
札幌医科大学 学長 島本 和明
 

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