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札医大の研究室から(16) 仲瀬裕志教授に聞く(十勝毎日新聞・札幌医科大学 包括連携協定事業)

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 潰瘍性大腸炎やクローン病といった炎症性腸疾患は、憎悪や再発を繰り返す病気で、国内に約23万人、道内だけで約1万人の患者がいる珍しくない疾患だ。
 近年、それらの発症や再発抑制に関する新たな研究結果が発表され注目を集めている。今後期待が寄せられる研究について、炎症性腸疾患研究の第一人者である、医学部消化器内科学講座の仲瀬裕志教授に聞いた。(聞き手・浅利圭一郎)

仲瀬裕志(なかせ・ひろし)
 1964年京都府生まれ。90年神戸大学医学部医学科卒業、2001年京都大学大学院医学研究科内科系専攻博士課程修了及び学位取得、米国ノースキャロライナ大学消化器病センター博士研究員。03年京都大学光学医療診療部助手、08年京都大学医学部附属病院内視鏡部講師、15年同附属病院内視鏡部部長、16年札幌医科大学消化器・免疫・リウマチ内科学講座教授を経て現職。
 

札医大の研究室から(16) 仲瀬裕志教授に聞く 2018/01/19


浅利: 潰瘍性大腸炎とクローン病ではどのような症状があるのか。
仲瀬: 潰瘍性大腸炎では粘液便や血便の症状がまずはじめに認められ、その後、下痢や腹痛の症状を伴うようになる。クローン病では下痢や腹痛が主たる症状で、また発熱も伴うことが多い。
 いずれの疾患も遺伝的素因と環境的素因の両方が発症に関与すると考えられている。特に日本では、その患者数の増加を考えると環境因子、つまり患者さんの一人一人のバックグラウンドが発症に大きく影響していると推測されている。

浅利: 潰瘍性大腸炎に対してたばこの成分が発症予防になる可能性があるのか。
仲瀬: 過去に欧米で行われた実験で、内服薬治療をする患者にたばこの主成分であるニコチンと偽薬の貼り薬のグループに分けて症状の変化を比較すると、37人のうち前者の寛解(病気の軽減や完治)例が17人、後者が9人だったという研究データがある。
 (潰瘍性大腸炎では)大腸粘膜で炎症が起きているため、ニコチンによる血流の減少が炎症を抑制する働きがあるのではないかと推測されているが、治療効果に関する詳細なメカニズムは明らかになっていない。

浅利: クローン病の場合は。
仲瀬: クローン病では大腸粘膜内で血流の減少が起きているため、血管を収縮させるニコチンは、逆に疾患を増悪させるといわれている。クローン病では「マクロファージ」という細菌を処理する細胞の機能異常が起きている。さらに、ニコチンはマクロファージの活性化を引き起こすことから、クローン病の炎症を増悪させる可能性が高いと考えられる。
 ただ、これらはいずれも研究段階の話で、例えば潰瘍性大腸炎の人に喫煙を推奨するものではない。今後の研究で、喫煙と炎症性腸炎との関連性がより明確になってくれば、ニコチンの成分を用いた治療が活用される可能性はある。

浅利: 腸内細菌は母乳を通して子供に受け継がれるのか。
仲瀬: 欧米で妊婦を対象にした研究結果から、子供が生まれる3カ月前から妊婦がプロバイオティクスを摂取すると、生まれてきた子供はアトピー性皮膚炎になりにくいという結果が出ている。
 このような結果から、母親の腸内環境を整えることが、生まれてくる子供のアレルギー疾患や免疫疾患の発症予防につながる可能性がある。また、最近の研究結果から、食物繊維をしっかり取ることで、消化器疾患のみならず、循環器疾患などの発症予防にもつながることがわかってきている。


浅利: 十勝の住民に向けて。
仲瀬: 北海道は広大で、地域によっては十分な医療が提供できていない実情がある。昨年6月から、札医大が中心となって、旭川医大、北大及び各大学の関連病院と共に、炎症性腸疾患患者さんのコフォート(患者データの集積や分析)を始めている。今後は、患者の経過や食生活などのデータベースを提供し共有することで、どこに住んでいても適切な治療が受けられるよう取り組みを進めているので、期待してほしい。
  • 経営企画課 企画広報係
  • 発行日:2018年01月19日