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當瀬細胞生理学講座教授の新コラム「真健康論」第13回

當瀬細胞生理学講座教授の毎日新聞連載コラム「真健康論」第13回「おいしい食事の大切さ」(12月4日毎日新聞掲載)

真健康論:第13回「おいしい食事の大切さ]=當瀬規嗣(札幌医科大学医学部細胞生理学講座教授)

 毎日の食事をきちんと取ることは、健康で暮らしていくための必要最低限の条件です。食事をきちんと取るためには、食事がおいしくなければなりません。おいしい食事とは、もちろん味が良いことです。

 味を識別するしくみを味覚といい、食物の成分に反応して、それが「食べるべきもの」であるか、「食べるのは避けるべきもの」なのかを判別します。舌の表面やのどの奥には、食べ物の成分に反応して味を識別する味蕾(みらい)と呼ばれる器官が並んでいます。これによって識別される味は甘み、塩味、うまみ、酸味、苦みの5種類と考えられます。

 このうち、甘みは3大栄養素である糖分、アミノ酸、脂肪から感じ取られる感覚です。また、うまみは主にアミノ酸から感じ取られるものです。塩味はこれまた体に必要なナトリウム(いわゆる塩分)やカリウムなどの電解質から感じ取られる感覚です。この三つの味は、体に必要なものを判別するためのものなのです。ですから人はこの三つの味を好みます。

 一方、酸味は食べ物が酸性となって感じます。酸っぱいものは、腐敗を意味するので、本来は警告の味です。苦みはお焦げや薬草などの味で、本来は「毒物」を示唆する味でした。なので、人は酸味と苦みを避ける傾向があります。

 論より証拠、赤ちゃんに酸っぱいものや苦いものを与えると、顔をしかめ拒絶します。ところが、大人になると酸味や苦みに慣れてきて、むしろそれを好むようになります。苦いコーヒーを飲んで「うまい」とつぶやくのです。

 甘い食べ物だからといって必ずしもおいしいとは限らないことは十分ご承知でしょう。これらのことは、味覚が五つの味の組み合わせだけで形作られるものではなく、その人の経験や感情などが強く影響するということを示しています。

 つまり「おいしさ」は、五つの味の判定を総合して、さらに記憶や経験、その時の体調などが影響した結果、感じ取られるものなのです。おいしさを感じられると、栄養素が来たと体が判定して消化吸収も盛んになります。単に三度の食事をするだけでなく、食事をおいしく食べられるということが、健康の基本です。(とうせ・のりつぐ=札幌医科大教授)=次回は18日掲載

毎日新聞 2011年12月4日 東京朝刊(毎日新聞社許諾)
  • 経営企画課広報
  • 発行日:2011年12月07日