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プレスリリース・メディア

島本和明学長対談記事掲載

平成23年5月15日の朝日新聞朝刊(全国版)に、鈴木カップリングが寄与した高血圧治療薬の現在について、島本和明学長と鈴木章名誉教授との対談記事が掲載されました

   5月18日朝日新聞記事画像

5月15日朝日新聞朝刊(全国版) 朝日新聞社許諾済

<5月15日朝日新聞掲載記事抜粋>

  2010年のノーベル化学賞を受賞した鈴木章・北海道大学名誉教授の「鈴木カップリング」(ホウ素を利用し炭素同士を効率よくつなげる画期的な合成法)を応用した高血圧治療薬が、日本でも広く用いられている。
  この薬の効果や現在の高血圧治療について、鈴木名誉教授と札幌医科大学の島本和明学長・理事長が語り合った。(コーディネーター 朝日新聞編集委員・浅井文和)

  多用途に利用される画期的な研究業績

—まず、ノーベル賞を受賞した「鈴木カップリング」とはどういうものか、教えていただけますか。
鈴木 炭素を含む化合物を有機化合物といいますが、その分子の骨格は炭素同士の結合でできています。しかし炭素と炭素を結びつけて狙った通りの有機物をつくる反応は、簡単なことではありません。1970年代頃から、異なる有機化合物の炭素同士をつなぐ「クロスカップリング」という技術が用いられるようになりましたが、初めはマグネシウムなどの有機金属化合物を用いていたので、反応性が高すぎ扱いにくいという難点がありました。そこで僕たちは、安定したホウ素化合物を使ったクロスカップリングができないかと考えたわけです。安定しているということは言い換えれば反応性が悪いということですが、僕たちはここに塩基を加えると反応性が上がることを発見し、それが鈴木カップリングの基になっています。

——鈴木先生の業績により、狙った物質を効率的かつ安価で安全に生産できるようになりました。その成果物のひとつが、島本先生も用いている降圧剤ですね。
島本 そうです。ARB(アンジオテンシンⅡ受容体ブロッカー)といい、日本で最も多く利用されている高血圧治療薬のひとつです。

——ARBはどのような点で優れているのですか。
島本 
第一に、1日1回の服用で済むこと。第二に降圧の効果が高く、副作用が非常に少ないこと。そして第三に、臓器保護の働きがあることです。高血圧は脳、心臓、腎臓などに重篤な障害を引き起こす原因になるため注意が必要ですが、ARBにはそうした臓器を守る働きがあります。さらに最近は、糖尿病の発症を抑える効果もあることがわかってきました。

——血圧管理の目安を教えてください。
島本 上が160㍉Hg、下が100㍉Hg以上の人は脳卒中や心筋梗塞になるリスクが高まるのですぐに医師の診察を受けてください。上が140、下が90以上の比較的軽症の人も、こまめに血圧を測り早めに医師にみてもらうことが大切です。

鈴木 僕も普段は毎日血圧を測っています。昨年ノーベル賞の発表があった後は忙しくて眠れない日が続き、たまたまホームドクターを受診した際に測ったら、上が190になっていて驚きました。ただそのときも、特に自覚症状はなかったですね。

島本 睡眠不足は血圧を上げる大きな要因になりますので、ぜひ気をつけてください。また、ストレスを避け、減塩に努めることも大切です。高血圧はそれ自体に目立った自覚症状がないため、先生のようにきちんと対処しておられる方ばかりではありませんが、そのまま放置していると後で重篤な疾患につながることがあります。
5月17日の「高血圧の日」前後には全国で啓発イベントも行われますので、ぜひこの機会にみなさんに考えてみてほしいと思います。

鈴木 実は僕もARBを飲んでいます(笑)。これは基本的にずっと飲み続けるものですか。島本 薬を飲むことで血圧が安定している場合は、続けていただくことが大切です。ただし状態が改善すれば、医師と相談のうえ量を減らせることはあります。ARBは「血管のビタミン」ともいわれ、血管をしなやかにする効果がありますから、ぜひそのまま続けていただければと思います。

——鈴木カップリングは医薬品のほか、農作物の生産に用いる殺菌剤や、液晶、有機ELなどの素材としても使われています。これほど広い分野で人々の健康や生活を支えていることをどう受け止めておられますか。
鈴木 非常にうれしいですね。僕だけでなく、研究者というのはみんな人のために役立ちたいと思って仕事をしていますが、そういう成果を得る機会はなかなかめぐってくるものではありません。僕は研究者として非常にラッキーだと思います。

——今、日本は大きな災害から復興しなければいけない局面にあります。こうした中で、医療や科学が今後どう役立っていくと思われますか。
島本 私たちの大学でも、要請に応じて原則全ての支援活動に協力していますが、今後は被災者のメンタル面も含めたケアをどう継続していくか。そのための態勢づくりが大きな課題になると思います。

鈴木 これまで経験したことのない災害で私たちは多くのものを失いましたが、日本のように資源のない国にはサイエンスとテクノロジーの進歩が重要で、そこに活路を見出すことが日本の唯一の道だと思います。もう一度前を向いて自分たちにできることを一歩一歩進めていけば、日本は必ず困難に打ち勝てると僕は信じています。

※朝日新聞社許諾済
  • 経営企画課広報
  • 発行日:2011年05月18日