case2:脳卒中患者さんに対する理学療法の最前線

 脳卒中は、高血圧や糖尿病といった生活習慣病が原因で動脈硬化が進み、脳の血管が詰まったり、破れたりする病気です。脳卒中は日本人が寝たきりとなる原因の第一位であり、理学療法の主要な対象疾患のひとつです。

 脳卒中になると、手足に力が入りにくくなったり、感覚が鈍くなることで、物を掴むことや、歩くことに困難を生じることがあります。理学療法では、このような様々な心身の障がいを改善することを目的として、運動療法物理療法を行い、社会復帰を目指します。

 近年、医療工学や脳科学が目覚しく進歩し、脳卒中の理学療法分野に次々と応用されています。その結果、従来の理学療法では難渋した重度な障がいに対する新たなトレーニング方法が開発されたり、理学療法をより効果的に行うための機器が臨床現場で活用されるようになっています。例えば、拡張現実システムを取り入れた四肢の運動トレーニング(写真1)は、四肢を動かすことが難しい方に対して、映像を見せてあたかも自分自身の四肢が動いているように錯覚させることで、脳の活動を促し、自発的な四肢の運動を誘導します。また、歩行に障害のある方に対する体重免荷トレッドミル歩行トレーニング(写真2)は、体重を支え歩行を繰り返すことで、自発的な歩行の獲得が期待されます。

 このように、理学療法士は科学技術の進歩に目を向けながら、新しい機器やトレーニング方法を積極的に取り入れ、あるいは理学療法士自身が研究機関と共同で開発し、脳卒中による様々な障がいの改善を促進できるような理学療法の提供を目指しています。