case3:災害支援における作業療法

 日本で災害が起こったときのリハビリテーション専門職による支援活動は、JRAT(大規模災害リハビリテーション支援関連団体協議会)が統括し作業療法士もその中で支援活動を展開します。災害時のリハビリテーションの中で作業療法士に求められる役割として、被災前まで受けていたリハビリテーションを被災後も継続できるように現地のリハビリテーション関係者と協働すること、自宅では自立していたのに避難所や仮設住宅ではできないことが増えるという方も多いため、その人の動きや生活環境を見極めてその場所できそうな工夫や活動を提案し、必要に応じて訓練そのものを提供すること、さらに避難所や孤立した住居などを訪問する中でリハビリテーションが必要と考えらえるような被災者を見つけた場合に、その地域で利用可能なリハビリテーションのサービスにつなげることも大事です。

 

まずは腰を据えて、しっかりと話を聴くことから始めていきます。(写真は避難所の様子)

 上記のような活動の他に作業療法士が関わる災害後の支援として、災害時に被災した精神科病院の患者さんへの対応や被災者の精神疾患の発症予防を支援する“心のケア”活動があります。災害後に被災地で生活する方の中には、大切な人やものを失った悲しさや孤独感、それらを助けることや守ることができなかった罪悪感に苛まれている方も多くいます。また、自宅で生活していて電気・水道・ガスなどのインフラや交通手段が断絶された状態が続いたり、避難所での慣れない生活による心身への負担が積み重なったりすると、不満や疲労感がたまっていきます。さらに、情報も断続的にしか入らず「こういった状況がいつまで続くのだろうか?」という不安が積み重なると、心身の健康や生活にも支障が生じてきます。

 

 “心のケア”活動のために災害支援に赴くと、まずは職種の違いに関わらず自宅や避難所への訪問を重ねてその場でお話をうかがい、考えや思いを受け止めることから始めていきます。その中で、災害前から利用していた精神科医療・福祉サービスが途絶えてしまった場合や、新たに必要と判断された場合には、チームで連携して可能な限りそれらを直接提供します。また、訪問活動を通してそうした方々の情報を集約して整理し、地域の支援者と協力して利用可能な医療・福祉サービスにつなげていきます。その他にも、障がい者・高齢者施設や公的機関に赴いてストレス性障がいやうつ病、不眠などの危険性をチェックする面接なども行います。さらに、作業療法士としては身体の状態をチェックしながら心身ともにリラックスできるようなストレッチや呼吸法のプログラムを作成し実施します。そういった機会を通して、日々の生活で困っていることやできるようになりたいことを把握し、一緒に工夫を考えていきます。

 

チームの中で、そして他の支援チームや地元の支援者との連携や情報交換も欠かせません。(写真は保健所での一コマ)

 もちろん災害は起こらないことが1番ですが、自然災害の多い日本では起こった時にどうするか、なにができるかを考えておくことが大事です。その中で、心と身体の健康状態をみながら生活について考えていく作業療法士の視点は、様々な災害支援の現場で役立つと考えられています。日本作業療法士協会は大規模災害時における基本指針を策定し、災害時の支援活動を行っています。最近は作業療法士による災害時の支援活動が多く報告されるようになりました。

 日本は災害大国です。今後はこうした災害支援の場で活躍できる作業療法士が求められています。