粂川昂平 さん(実習年度:平成27年)
まさに「診療参加型」の実習を体験
粂川昂平 さん(松前町立松前病院 総合診療科)
地域包括型診療参加臨床実習を選択した理由は?
実習先での1日のスケジュール
朝7時半よりカンファレンスや勉強会が1時間ほどあり、自分が初診を行った新入院患者さんがいる場合には症例発表を行います。その後、午前は病棟回診・カルテ記載、外来での予診や処置、午後はグループホームへの回診や訪問診療へ同行させていただきました。小児の急性胃腸炎や高齢者の腎盂腎炎、心不全、糖尿病の教育入院など、科にとらわれずに患者さんを診ることができました。救急車が来た時は、救急対応に参加し、ドクターヘリ搬送のため救急車で同行することも経験しました。
今回の実習はまさに「診療参加型実習」と呼ぶにふさわしく、静脈採血、動脈採血、トリガーポイント注射、関節内注射などの手技を指導医の指導・監督の下に多く経験できたほか、入院担当患者に関わる問い合わせが自分のPHSにかかってくるなど常に緊張感のある実習でした。当直にも週2回程度入り、ファーストコールを経験しました。まず自分が行き、問診・身体診察を行い、当直医の先生を呼びます。診断が全くわからない時も多く、自分の問診の甘さを痛感しました。その後、指導医と一緒に診察し、フィードバックを受けました。一人の患者さんを初療から退院まで診られることは、本実習の最大の利点と言えるでしょう。
若手の先生を中心とした論文抄読会もあり、なかなか教わることのできない臨床論文の読み方を丁寧に教えていただきました。また、地域住民を対象とした勉強会にも参加し、診療だけにとどまらない病院の役割を学びました。
実習を通して得たもの、学んだことについて
松前病院は全科診療、どんな人でもまず診るという病院です。後方病院まで2時間以上かかる状況で、様々な判断を行わなければいけません。医療資源が十分でないからこそ、高度な判断が求められる地域医療の難しさ、そしてやりがいを感じました。
現行の臨床実習では、学生は指導医の後ろで見学することが多く、なかなか自分で動くことができません。今回の1ヶ月間の実習を通して「まず自分が前へ出る」という習慣がつきました。多くの症例を経験できると同時に指導医から丁寧なフィードバックを受けることができる恵まれた環境で、知識のみならず度胸をつけることができました。
どの先生も'For the patient'の精神を持ち、患者さんにとってどの選択が一番良いかということを常に考えています。その先生方の背中を見ることができたことは、これから医師として生きていく上で、大変貴重な経験となりました。
後輩へのメッセージ
松前病院では学生であろうとも医療チームの一員として受け入れていただけます。実習にあたって何より大切なことは「積極的であること」です。先生の「〜してみますか?」という問いに、「学生だから」とか「やったことがないから」という理由で怯んではいけません。知識は後からいくらでも付いてきます。実習中、患者さんの輸液を自分で選ぶという状況があり、その夜必死になって勉強し、苦手だった輸液について十分な知識をつけることができました。必要に迫られた時、知識は必ず付きますので、積極的に、そして謙虚に学ぶ姿勢を持って実習に臨んでください。
そして何より、松前病院は地域医療の最前線です。そこにどんな患者さんがいるのか、スタッフの方々がどのような思いで働いているのか、自分の目で見ることが大切です。これから日本は更に高齢化が進むと言われています。高齢化率40%を超える松前町は、10年後の日本の姿でもあります。1ヵ月間の実習を通して、診療技術や医学知識の習得のみならず、地域医療にとって大切なものが何か見極めてほしいと思います。
最終更新日:2015年10月04日