放射線治療
放射線治療とは、放射線をがん細胞に照射することでがん細胞の遺伝子に損傷を与えることで治療を行うものです。放射線治療は手術療法や化学療法と並んでがん治療の三本柱とされています。
他の治療法との違いとして、化学療法が全身に作用する治療であるのに対し、放射線治療は原則として手術と同様にがんのあるところだけに集中して作用する局所治療です。また、放射線治療は手術治療と比較して組織を切除しないため、多くの場合で身体への負担が少ない治療です。これらの治療法をがんの種類や状態に応じて使い分けや併用します。放射線治療はがん患者様に最善の医療を提供することを目的として、その治療法の一つとして行います。
放射線治療はほぼ全ての種類の癌に対して何らかの目的で行われる可能性があります。「何らかの目的」とはつまり、放射線治療はがんの根治を目的としたものだけではなく、手術後のがんの再発を抑える目的や手術前にがんを縮小させる目的、がんによる痛みなどの症状を抑える目的など、色々な目的で行われるということです。そのため、放射線治療は他の科とも協力しながら様々な疾患や状態の患者様に対して必要と判断された場合に行われます。
放射線をがん細胞に照射する方法として、機械で発生させた放射線を体外から照射する「外部照射」と体内に放射線を発する物質を置くことで照射する「内部照射」の2つがあり患者様の疾患などに応じて使い分けております。札幌医科大学放射線医学講座ではリニアック(直線加速器)を用いた外部照射、また内部照射として前立腺癌に対するヨウ素125シード線源を用いた小線源療法や子宮頸癌などに対するイリジウム192密封小線源を用いた腔内照射などを行っております。
また、外部照射では放射線治療による有害事象を軽減することが可能な「IMRT(強度変調放射線治療)」や、一度に高線量を照射することで高い治療効果を挙げる「定位照射」を必要に応じて積極的に行っております。さらに、これらの治療は「IGRT(画像誘導放射線治療)」という方法により精度を高めて行われており、より確実かつ安全な治療を目指しております。
近年の機械や情報技術の著しい発展に伴い放射線治療の技術もまた飛躍的な進歩を遂げております。一方で放射線治療の専門性も高まっており、その実施には深く広い知識や経験が必要不可欠です。そのため、当科では複数人の放射線治療専門医を中心に各患者様にどのような形で放射線治療を行うかを科内で検討を重ねながら治療を行っております。
また、それと同時にさらなる放射線治療の発展とその継続を目指し放射線治療専門医の育成にも力を入れております。当科で研鑽を積んだ医師が北海道内の多くの地域で良質な放射線治療を提供しております。