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ホーム > Research  > 金関貴幸[抗原提示/プロセシング]

Research

講師

金関 貴幸 M.D. Ph.D.

(かなせき たかゆき)

学歴

1997年 札幌医科大学医学部卒業
2002年 札幌医科大学医学部大学院修了

海外・国内留学

2002-2009年 カリフォルニア州立大学バークレー校免疫学部門 (Nilabh Shastri研究室)

所属

日本がん免疫学会評議員

日本病理学会評議員

臨床ストレス応答学会評議員

主な論文

HLA-A24 ligandome analysis of colon and lung cancer cells identifies a novel cancer-testis antigen and a neoantigen that elicits specific and strong CTL responses. Kochin V, Kanaseki T, Tokita S, Miyamoto S, Shionoya Y, Kikuchi Y, Morooka D, Hirohashi Y, Tsukahara T, Watanabe K, Toji S, Kokai Y, Sato N, Torigoe T. Oncoimmunology. 2017 in press.

Loss of tapasin in human lung and colon cancer cells and escape from tumor-associated antigen-specific CTL recognition. Shionoya Y, Kanaseki T, Miyamoto S, Tokita S, Hongo A, Kikuchi Y, Kochin V, Watanabe K, Horibe R, Saijo H, Tsukahara T, Hirohashi Y, Takahashi H, Sato N, Torigoe T. Oncoimmunology. 2017 in press.

Monitoring peptide processing for MHC class I molecules in the endoplasmic reticulum. Shastri N, Nagarajan N, Lind KC, Kanaseki T. Curr Opin Immunol. 2014 Feb;26:123-7. (PubMed)

The final touches make perfect the peptide-MHC class I repertoire. Hammer GE, Kanaseki T, Shastri N. Immunity. 2007 Apr;26(4):397-406. (PubMed)

ERAAP synergizes with MHC class I molecules to make the final cut in the antigenic peptide precursors in the endoplasmic reticulum. Kanaseki T, Blanchard N, Hammer GE, Gonzalez F, Shastri N. Immunity. 2006 Nov;25(5):795-806.(PubMed)

 

金関貴幸

MHC抗原提示 / プロセシング

Figure体内を循環するCD8+T細胞(またはcytotoxic T lymphocytes, CTL)は、ウイルスに感染した標的細胞を選択的に排除し、感染防御の中心的役割を担います。このCTLによる攻撃は自己の細胞には通常起こらず、生体にとって異物である感染細胞のみが標的となります。これはCTL表面のT細胞レセプター(TCR)が、異物由来の抗原ペプチド/MHCクラス I 複合体(pMHCI)を正確に認識し、標的細胞を厳密に区別することができるためです。つまり、MHCクラス I 分子に提示された抗原ペプチド(antigenic peptide)はCTLの目標を決定する重要な目印といえます。私たちはこれまでに、抗原ペプチドが細胞内で産み出される分子メカニズム(MHC抗原提示/プロセシング)の解析を行ってきました。

細胞質で内在性に発現した抗原タンパクはプロテアソーム処理で断片(ペプチド前駆体)となり、小胞体膜のトランスポーター(TAP)を経由し小胞体内に輸送されます。ペプチド前駆体はここでMHCクラス I 分子上と複合体を形成し、最終的に細胞表面へと運ばれます。小胞体にはペプチド前駆体の長さを調節する小胞体アミノペプチダーゼ(ERAAP)が存在し、MHCクラス I 分子と協調してペプチド前駆体のトリミングを行います。MHCクラス I 分子のペプチド結合溝が鋳型となり、ペプチド前駆体がほどよい長さになるまで、また逆にペプチドを短く切りすぎないように、ERAAPの働きをガイドしています。また、MHCクラス I 分子はTAP、tapasin、ERp57、calreticulinとともに複合体(peptide loading complex, PLC)を形成します。PLCは不安定なペプチド・MHC複合体を減らし、細胞表面で安定した複合体を選択する役割を担うと考えられています。

CTL免疫応答における抗原プロセシング研究の重要性は、関連分子の遺伝子欠損マウス解析により明らかになってきました。例えば、ERAAP欠損マウスの脾細胞では既知の抗原ペプチドの提示が大きく減る一方で、野生型ではみられないユニークな抗原ペプチド群が提示され、これらを野生型マウスに免疫するとCTL応答を惹起します。つまり抗原プロセシングの変化により、当初予想された免疫逃避だけではなく、生体内で新しい免疫応答が生まれてくることが示唆されています。抗原提示の異常(antigen processing defects, APD)は疾患とどのように関係しているのでしょうか?ヒトゲノムワイド関連解析(GWAS)の結果から、例えば強直性脊椎炎やベーチェット病、クローン病など自己免疫疾患とERAAP変異の関連性が報告されていますが、正確な発症メカニズムはまだわかっておりません。また、さまざまなヒトがん細胞でtapasin発現レベルが低下し、患者予後に影響を与えることが報告されています。がん細胞の抗原プロセシングは正常細胞と異なっており、がん細胞表面の抗原ペプチドレパートリーとCTL免疫応答に影響を与えている可能性があります。

 

がん細胞のHLAリガンドーム解析とネオアンチゲン

Figure免疫チェックポイント阻害剤が複数の臨床試験で腫瘍退縮および患者生存率延長をもたらし、がん免疫治療の臨床効果を見事に実証しました。PD-1抗体(ニボルマブ)の国内適応はメラノーマ・非小細胞肺がん・腎細胞がん・ホジキンリンパ腫ですが今後も拡がる見込みです。しかしがん免疫治療の新しいステージが幕開けたその一方で、患者間の奏功率改善や腫瘍特異性の亢進(副作用軽減)、バイオマーカー開発などの課題も明らかになってきました。 私たちはがん抗原の観点から抗腫瘍CTL応答を解析し、あたらしい治療法を開発したいと考えています。

これまで多くの研究室でがん特異抗原ペプチドが同定されてきました。がん抗原は組織特異的な分化抗原、正常精巣にも発現するがん精巣抗原、また私たちが一貫して注力するがん幹細胞抗原など様々なタイプに分類され、近年ではとくにがんの遺伝子変異に由来するネオアンチゲン(neoantigen)が注目されています。 がん細胞では遺伝子変異が頻出しますが、まれにアミノ酸変異部位が抗原ペプチドとしてHLAに提示されることがあります。このようながん細胞特有の変異抗原をネオアンチゲンと呼びます。ネオアンチゲンはゲノムレベルで正常組織に存在しないため、反応するCTLは胸腺のネガティブセレクションを回避している可能性があり、高いがん細胞傷害性を示すことがあります。免疫チェックポイント阻害剤効果とがん組織の遺伝子変異量がしばしば相関することから、ネオアンチゲンとこれを認識するCTLの組み合わせが効果的な臨床効果につながると推測されています。がん細胞に提示される抗原ペプチド群の正確な把握と同定は、CTLがん免疫療法の成否を分ける極めて重要なファクターです。

私たちの研究チームはがん細胞でHLA提示されるペプチド群を回収し、網羅的に配列解読する技術を確立しました。最新のマススペクトロメトリー技術を応用したこの手法はHLAリガンドーム解析(HLA-ligandome analysis)と呼ばれます。予測ではなく、実際にがん細胞あるいは患者がん組織のHLAに提示されるペプチドの全体像を把握するため、遺伝子配列やHLA結合アルゴリズムに一切依存しないペプチド同定システムを開発しました。日本人に最も多いHLA-A24に着目しますと、任意のがん細胞あたり数百種類のHLA-A24ペプチドを一気に同定することができます。

HLAリガンドーム解析により、これまで新規がん精巣抗原SUV39H2およびネオアンチゲンAP2S1が同定されています。とくに後者はMSI大腸がん細胞から検出され、誘導したネオアンチゲン特異的CTLはきわめて高いがん細胞傷害性を示しました。免疫チェックポイント阻害剤は遺伝子変異量の多いMSI大腸がん患者に奏功することが知られており、HLAリガンドームの解析結果とがんに対するCTL臨床効果が密接にリンクしている可能性があります。私たちはこの技術をさらに発展させがん免疫治療の臨床応用に役立てていきたいと考えています。

2017年2月

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