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ホーム > Research  > 廣橋良彦[癌幹細胞]

Research

准教授

廣橋 良彦 M.D. Ph.D.

(ひろはし よしひこ)

学歴

1996年 和歌山県立医科大学医学部卒業
2002年 札幌医科大学医学部大学院修了

海外・国内留学

2002-2003年 オックスフォード大学(Mark Greene研究室)
2003-2004年 ペンシルベニア大学(Mark Greene研究室)

所属

日本病理学会評議員

日本癌学会評議員

日本がん免疫学会評議員

 

主な論文

Cytotoxic T lymphocytes efficiently recognize human colon cancer stem-like cells. Inoda S, Hirohashi Y, Torigoe T, Morita R, Takahashi A, Asanuma H, Nakatsugawa M, Nishizawa S, Tamura Y, Tsuruma T, Terui T, Kondo T, Ishitani K, Hasegawa T, Hirata K, Sato N. Am J Pathol.2011 Apr;178(4):1805-13.(PubMed)

SOX2 is overexpressed in stem-like cells of human lung adenocarcinoma and augments the tumorigenicity. Nakatsugawa M, Takahashi A, Hirohashi Y, Torigoe T, Inoda S, Murase M, Asanuma H, Tamura Y, Morita R, Michifuri Y, Kondo T, Hasegawa T, Takahashi H, Sato N. Lab Invest.2011 Dec;91(12):1796-804.(PubMed)

Immune response against tumor antigens expressed on human cancer stem-like cells/tumor-initiating cells. Hirohashi Y, Torigoe T, Inoda S, Takahashi A, Morita R, Nishizawa S, Tamura Y, Suzuki H, Toyota M, Sato N. Immunotherapy.2010 Mar;2(2):201-11.(PubMed)

廣橋良彦

癌幹細胞

1 がん特異的免疫療法の確立

私はこれまでの研究期間、一貫してがん免疫療法の確立に従事しました。がんを免疫でたたく。近年ではインターネットやマスコミでも多く耳にする様になった内容で、なじみも深くなってきたのではないかと思います。免疫システムはそもそも、自己(自分自身)を非自己(細菌、ウイルス、カビ等の病原体)から守るシステムとして機能しています。ですが、がんは本来自己である自分自身の細胞から発生します。本来自己であるところのがんを免疫が認識することが出来るか?長い間議論されてきた問題です。1990年代になり、がんには正常なヒト細胞にはない分子が発現していることが明らかとなりました。がんにだけ(特異的に)発現する分子は、「がん抗原分子」と名付けられ、免疫システムは、がん抗原分子を狙ってがん細胞を傷害できる事が明らかとなったのです。

免疫システムは様々な細胞から成り立ちますが、がんを傷害する主な免疫細胞は細胞傷害性T細胞(CTL)と呼ばれる細胞になります。CTLは、がん抗原分子を直接認識出来る訳ではなく、がん抗原分子がアミノ酸9個から10個程度のペプチドにまで分解された分解産物が主要組織適合分子(MHC)クラスI分子に提示されて、初めて認識することができます。つまり、CTLはペプチドと、MHC分子の複合体を認識することになります。MHC分子はがん細胞を含めほぼ全ての体細胞には発現していますので、MHC分子に抗原ペプチドが提示されているかどうかがキーポイントになります。がん細胞にはがん抗原分子由来のペプチド(抗原ペプチド)が提示されているため、CTLに認識されます。

では、がん抗原分子あるいは抗原ペプチドをどのようにがん治療に適応出来るか?免疫システムは抗原に対して特異的な反応を示すため、抗原ペプチドでがん患者生体内のがん抗原分子特異的な免疫応答を増強できれば、がん細胞に反応するCTLを誘導することが出来る。この考えのもと、抗原ペプチドを用いたがんワクチン療法が考案され、国内はもちろん、国外でもがん免疫療法のメインストリームの一つになっています。これまで私たちはがんワクチン療法の確立を目指してSurvivin, Livin, HIFPH3, Cep55, AMACR といった、複数の抗原分子の同定に成功し、抗原分子由来の抗原ペプチドは10個以上同定することが出来ました。また、Survivin由来の抗原ペプチドを用いて、がんワクチン療法の臨床試験を行なっている所です。がん免疫の基礎的な研究が、臨床の場に応用出来た貴重な例と考えています。

2 がん幹細胞の生物学

最近ではがん研究の分野において、がん幹細胞の研究が非常に早く進んでおります。ヒトは1個の受精卵から発生します。ヒトは一般的に約60兆個の細胞からなりたっており、細胞の種類は200を超えます。様々な細胞に分化して役割分担している訳ですが、これら全て1個の受精卵から分化して出来た細胞です。受精卵は細胞分裂を繰り返し、先ずは造血幹細胞等の臓器特異的な幹細胞に分化します。その後、臓器特異的な幹細胞が、様々な細胞に分化し、各臓器をつくります。

がん幹細胞は臓器幹細胞あるいは多能性幹細胞に似た性格を持つがん細胞で、(1)多分化能(2)自己複製能(3)造腫瘍能を有する細胞と定義されます。また、がん幹細胞は、化学療法や放射線療法といったがん治療法に抵抗性を示す事が知られています。高い造腫瘍能を有するがん細胞に治療が効きづらいということです。がんを治療して一見治ったように見えても、がん幹細胞が残ってしまい、最終的には再発を来す原因と考えられています。

このようながん幹細胞に私たちの研究室では、Side population (SP) 法、Aldefluor 法にて分離することに成功しています。SP法で分離したがん幹細胞を免疫不全マウスに移植してみますと、がん幹細胞ではない非がん幹細胞と比べて、100倍近く高い造腫瘍能を示しました。1個のがん幹細胞と100個の非がん幹細胞がほぼ同等の造腫瘍能を示すという事です。がんはモノクローナル(単一)な細胞群と考えられていたのに対し、がんの中には100倍も造腫瘍能の高い細胞が混じっていることになります。がん幹細胞は何故このような高い造腫瘍能を示すのか、現在様々な研究グループが解析を進めております。そのメカニズムとして、がん幹細胞が正常の幹細胞と非常に近い分子を発現することが明らかとなっています。胚性幹細胞(ES細胞)や、臓器幹細胞にも発現するSOX2やOct4といった分子群です。京都大学山中伸弥先生のグループがiPS細胞を誘導するのに必要な遺伝子として脚光を浴びた分子です。私達もSOX2が肺がんから分離したがん幹細胞に高発現しており、造腫瘍能に関わっていることを明らかとしました。また、がん幹細胞にはSOX2やOct4等といった正常の幹細胞と同じ分子のみならず、がん幹細胞に特異的に発現する分子もある事がわかってきています。今後、これらのがん幹細胞に発現する分子群がどのようにして、高い造腫瘍能や、治療抵抗性につながってくるか解明していきたいと考えています。

3 がん幹細胞を免疫療法でたたく

さて、上記で述べましたがん幹細胞は、高い造腫瘍能を示し非常に悪い細胞群ですが、さらに悪いことにがん治療に対して抵抗性を示します。言わば、がん幹細胞に対する有効な治療法を見つける事が、がんに対する有効な治療法になると考えられます。私達は、免疫療法でがん幹細胞を有効に治療できないか検討を始めており、CTLががん幹細胞を有効に傷害できることを明らかとしました。今後、免疫療法でがん幹細胞を狙う場合、がん幹細胞に発現する抗原分子を同定する事が必要となります。そこで、私たちはSP法やAldefluor法で分離したがん幹細胞に発現する分子をマイクロアレイ法を用いてスクリーニングしました。その結果、上記SOX2等のがん幹細胞に発現する分子群を同定しています。SOX2はがん幹細胞の造腫瘍能にも関わる重要な分子ではありますが、正常幹細胞にも発現する分子であり、免疫療法の標的分子としてはベストではありません。SOX2に対する免疫を活性化すると、がん幹細胞のみならず正常幹細胞も傷害されてしまう可能性があるからです。そこで、現在は正常な組織に発現せず、がん幹細胞にのみ発現する分子群の同定を行なっており、候補分子を幾つか同定したばかりです。今後がん幹細胞に特異的に発現する抗原分子を用いて、がん幹細胞を狙う免疫療法、いわば「がん幹細胞免疫療法」の確立を目指して研究を進めている最中です。これまでの副作用の強い治療が効かないがん幹細胞を、免疫療法という副作用が少なく体に優しい治療法で有効に治療出来るようにするのが私の大きなメインテーマであり、夢でもあります。私達の研究に御興味を持たれた方、共にがん幹細胞を免疫でやっつけてみませんか?

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