> Research > 久保輝文[上皮とアレルギー]
特任助教
久保 輝文 M.D. Ph.D.
(くぼ てるふみ)
学歴・職歴
2001年 北海道北見北斗高等学校卒業
2008年 札幌医科大学医学部卒業
2010年 初期臨床研修修了(北見赤十字病院)
2013年 札幌医科大学大学院修了、医学博士(佐藤 昇志教授)
2015年 札幌医科大学附属病院 病理診断科
2016年より現職
海外・国内留学
2013-2015年 Swiss Institute of Allergy and Asthma Research (SIAF)
学会
日本病理学会
日本臨床免疫学会
日本免疫学会
日本癌学会
日本臨床細胞学会
European Academy of Allergy and Clinical Immunology
The International Academy of Pathology Japanese Division
上皮細胞は生体と外界との境界に位置しており、あらゆる侵襲に対する生体防御の最前線にあります。上皮が形成する物理的バリアの破綻によって、外来抗原の粘膜下へのアクセスを促進され、抗原への感作、また上皮細胞の活性化の原因となるとされます。また、上皮細胞は様々な種類の自然免疫受容体を発現しており、ウイルスや細菌を含む外来抗原あるいは障害を受けた細胞から放出される自己抗原を感知して活性化し、サイトカインおよびケモカインを産生することで免疫細胞の活性化や遊走を司っています。つまり、上皮細胞は物理的バリアのみならず免疫学的バリアとして自然免疫および獲得免疫の発動を制御しています。近年では物理的バリアの破綻と免疫学的バリアの機能異常はアトピー性皮膚炎や気管支喘息、アレルギー性鼻炎などのアレルギー性疾患の病態の形成あるいは慢性化に寄与していると考えられています。
癌抑制遺伝子として知られるp53のホモログp63/p73は上皮細胞の幹細胞性および分化を制御するとともに、様々な細胞ストレスに対して細胞の生存あるいはアポトーシスを決定づける因子として知られています。私たちのこれまでの検討から、p63/p73は様々な免疫関連シグナルに応答して自身の発現レベルが調節され、物理的バリアおよび免疫学的バリア機能の両方を調節しうることが明らかとなりました。したがって、私たちはp63/p73は様々な生体への侵襲に反応して上皮細胞の機能を調節するマスターレギュレーターであると位置づけています。さらにp63/p73が制御する上皮バリア、免疫応答ダイナミクスはアレルギー疾患の他にも創傷治癒やがん微小環境の形成に深く関わっていると仮説を立て、主に正常細胞を用いて研究を進めています。私たちの研究で得られる成果によって、感染症、がんや自己免疫疾患など上皮細胞のバリアあるいは免疫異常が関わるその他の臨床病態に対する理解の発展に貢献したいと考えています。