みなさん、こんにちは。
札幌医科大学医学部麻酔科学講座の三代目主任教授をしている山蔭道明と申します。私の教授就任15周年に合わせ、ホームページをリニューアルしましたので、あらためて挨拶させていただきます。
東京大学にはじめて外科から独立した麻酔科学講座が出来たのが1952年、日本麻酔科学会の前進となる日本麻酔学会が設立したのが1954年でした。当講座の初代教授の高橋長雄先生がフルブライト留学から帰国し、札幌医科大学の教授になられたのが1957年、彼が35歳の時でした。このことからも当講座が歴史のある講座であることをご理解いただけると思います。そのため、全国から麻酔科学を目指す多くの医師が集まり、全国の教授として赴任していきました。また、北海道内における主要な関連病院に麻酔科医として、あるいは集中治療医や救急医療を担うものとして多くの先輩たちが赴任していきました。二代目となる並木昭義先生が教授に赴任したのは1987年、彼が43歳の時でした。並木イズムと呼ばれ、22年間馬車馬のように先頭を走ってきた彼の姿は、我々の模範であり、彼の時代にも多くの教授を輩出し、また北海道内の急性期医療に尽力してきました。
私は2009年に三代目教授を拝命し、2024年で満15年を迎えます。この間にも多くの麻酔専攻医を迎え、専門医の育成、地域診療支援、そして教育・研究を指導してきました。そのため、北海道内の地域診療支援に多くの教室員が従事し、またその間、同門からは3名が、教室員からは旧帝国大学を含む3大学に教授として赴任していきました。
当講座の特徴は臨床・教育・研究のバランス感覚かと思います。2003年から始まった国立大学の独法化、2004年から始まった初期臨床研修では、全国的に大学講座の力が弱まり、また収支を重要視するあまり、研究基盤が弱体化しています。その中にあっても、リサーチマインドを忘れず、常に患者に寄り添える研究を臨床に活かしてきたと自負しております。
患者さんにおかれましては、当講座に所属する教室員はもちろん、ご自身が手術を受けられる際は、是非麻酔科専門医のいる病院で手術を受けられることをお勧めします。手術前から手術後まできちんとフォローさせていただきます。また、最近では緩和医療あるいは無痛分娩に携わる麻酔科医を増えてきました。厚労省HPでは、「分娩の見える化」を目指して、無痛分娩や帝王切開における麻酔科専門医の情報も公開しております。是非ご覧ください。
学生・初期研修医のみなさん、私は北海道室蘭市の生まれですが、高校卒業までのほとんどの時期を茨城県神栖市(Jリーグ アントラーズの町)で育ちました。“第2の心臓移植を私が”という思いで札幌医大に進学しましたが、大学4年生の麻酔科の授業で、“自分の将来の仕事はこれだ!”と思い、それ以降、臨床・教育・研究に夢中になり、現在、この職に就いています。一人でも多くの学生や初期研修医に麻酔科医を志してほしいと思い、授業・実習・臨床・教育・研究に手を抜いたことはありません。一緒に仲間になってともに周術期医療、そこから派生するサブスペシャルティで活躍してみませんか?
教育関連病院ならびに当講座関係者のみなさん、色々な形でのご支援・ご指導、大変感謝申し上げます。今後は当大学でもクラウドファンディングを導入します。是非、このような方法を活用したご支援もご検討いただければと思います。
最後に、2026年は日本麻酔科学会学術集会を横浜で開催します。初代、二代に引き続き、本学会を主催できることは大変名誉なことであり、成功させようと今から準備しています。こちらも引き続き応援いただけますよう、お願いいたします。
札幌医科大学医学部 麻酔科学講座
主任教授 山蔭 道明
麻酔科の診療の大きな柱は手術麻酔、ペインクリニック、救急・集中治療です。
手術麻酔は全身麻酔や局所麻酔により患者さんを『痛み』や『ストレス』から守ります。
われわれは手術中のみならず、手術前、そして手術後の管理の計画を立て、手術からの早期回復につなげるために質の高い麻酔管理を日々提供しています。
麻酔管理症例数は大学附属病院、そして全道に広がる教室関連病院を併せると年間60,000例(大学附属病院では約6,193例)を越えており、その数は増加の一途を辿っています。
中でも全体の約20%を占める緊急手術に対応しているのは特筆すべき点といえます。
また、多くの患者さんの麻酔や全身管理を経験し、優秀でかつ思いやりのある麻酔科専門医の育成にも力を注いでいます。
大学附属病院のペインクリニック外来の患者数は年間延べ10,290例を数えます。
さまざまな急性期の痛みに加え、コントロールが非常に困難な慢性疼痛疾患に対しての神経ブロックや投薬による治療も積極的に行われています。
また、関連病院を含めて救急・集中治療にも深く関わっており、各診療科と連携してさまざまな重症疾患や多発外傷に対して昼夜を問わず診療を行っています。
2010年度からは、旭川地区ならびに釧路地区のドクターヘリ事業にも当科教室員が積極的に関与しています。
さらに近年では麻薬を含めた鎮痛薬の使用法に精通し、神経ブロックのテクニックを用いて疼痛管理を行う麻酔科の特性を活かし、がん患者の痛みを緩和するための緩和医療への取り組みが積極的に行われており、麻酔科の新たな診療の柱として注目されています。
他にも術後疼痛管理サービス、和痛分娩など活躍の範囲は広がってきています。
研究は、臨床診療や教育と並んで、大学附属病院としては欠くことの出来ない歯車のようなものです。
臨床・教育・研究のすべてがうまくかみ合うことによって、最良の医療が提供できます。
当講座の研究は、大学スタッフがPrincipal Investigatorとなり、その指導のもと、大学院生がそれぞれの研究テーマに取り組んでいます。
現在、15名の大学院生が幾つかのチームに分かれ、大きな研究成果をあげるべく日々精力的に研究しています。
当講座では基礎研究だけでなく、さまざまな臨床研究が行われ、その成果は多くの国内外の学会や雑誌に報告されています。
また、よりよい薬を早く患者さまに提供するため、臨床治験(薬が発売される前の臨床での研究)も積極的に関与しています、患者さまのご理解とご協力により、大学附属病院では全国でも屈指の治験数を誇り、多くの麻酔薬が日本でも使用可能となっています。
当講座は教室員の留学も積極的に応援します。現在1名が国内(東京)、1名が海外(米国)に留学しています。
対象は教室員はもちろん、学生、臨床研修医、救急救命士、看護師、他の医療関係者と多岐にわたります。
学生に対してはただの「見学」にとどまらない「参加」に重点をおいた臨床実習を行っており、高い評価を得ています。初期研修医は常時2~3人がそれぞれ数か月単位で在籍しており、手術室での麻酔業務を通して気道確保、呼吸・循環管理などを研修しています。
もちろん入局した後期研修医に対する教育も充実しています。
2010年度は18名が入局しました。充実した研修をしてもらうために大学病院だけでなく、魅力ある関連施設に積極的に派遣しています。
彼らはそこでの症例を通して貴重な経験をしています。さらに毎週土曜日の午前中には上級医による系統講義や実技セミナーを行っており、知識や技術面でのフォローアップも行っています。
彼らは日々研鑽を重ねており、その成長ぶりには目を見張るものがあります。
また、患者さまのご理解と協力を得て、救急救命士に対する気管挿管実習も行っており、救急医療の向上にも貢献しています。
そして現在、急速に標準化されている心肺蘇生法(Advanced Cardiovascular Life Support; ACLS)や挿管困難対応法(Difficult Airway Management; DAM)、さらに人工呼吸管理の啓蒙活動も積極的に行われています。
多くの教室員が日本救急医学会のACLS認定指導医として全道各地で精力的に活躍しています。